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くるくると僕のまわりを回りながら、すずちゃんさんが聞いてくる。


「ね! ね! イチギョーって名前なの!? ね! ね! イチギョー」


確かに読める。

読めるんだけど、何故か今まで触れられてこなかった領域だったからか、面食らってしまっている。

決して怒ってはいない。そもそも怒ることじゃない。

面白おかしなあだ名付けは転校生あるあるだ。

寧ろ、新参者を受け入れてくれようと懸命なことがありがたくもある。

そう思えるようになったのは、ごくごく最近なんだけどね。


地域柄、というか、人間柄、なんだろうなぁ。ははは。


「転校生! 本物の転校生! わたし初めて見ました!」


ぽむ、と合わせた両手。

白崎しらさきさんのゆる巻き毛がふわりと揺れる。


「イチギョー君か」


向瀬むこせさん、何故にサムズアップ。


「ち、違……」


えー、そのー


「だろー! すげーだろ! たとえ二行でもイチギョーなんだぜー!」


ああ、もうダメだ。

赤い……光太こうた先輩が混ざってしまったらもう。

完全に4人で盛り上がってしまっている。


「改行の二文字は辞書にねーんだぜ!」


「なにそれー! ちょーボナパルトー!!」


ナポレオン・ボナパルト

旧名、ナポレオーネ・ディ・ブオナパルテ。

超ボナパルト

めちゃくちゃにボナパルトなさま


光太先輩と涼ちゃんさんの一際大きな笑い声が部室に響いた。

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