第159話 海の未来

第159話 海の未来

**********

ジャンヌ:騎士団長

フィスト:近衛兵長

サリー:魔法使い

マリン:海の冒険者

ブラド:吸血鬼の姫

ローズ:貴族令嬢

キャッツ:トレジャーハンター

マリア:シスター

リーフ:エルフ

**********



ジャンヌ「教えてくれないかしら?なぜそこまで反対するのか……あなたたちが知ってて、私たちが知らないままでは、なんの進展も得られないわ。そうでしょ?」


アナスタシア「…………」


ジャンヌは沈黙を守るアナスタシアに不満を抱くわけでもなく、淡々と視線を彼女から虚空に向けました。


ジャンヌ「海神さま、彼女はどういう理由で反対しているんですか?」


海神『陸からの客人よ、彼女の沈黙を許してね。彼女も戸惑っているのです……自分が見た未来と、あなた方を重ね合わせて、ね』


キャッツ「未来を、見た?」


海神『ええ、人魚族の一部の血統には、未来予知の力があるのです……このコバルトオーブに触れることで、その力が発揮されるのです』


アナスタシア「海神さま!そのようなことを、この者たちに!」


マリン「なによぉ?」


海神『やめなさいアナスタシア。先ほどの彼女の言葉に間違いはありません。私たちだけが知っていて、彼女たちが知らないままでは、良い方向に物事が進むはずもありません。そうでしょう?』


アナスタシアは視線を地に落とし、ふてくされるように黙りました。

海神の声が響きます。


海神『……アナスタシアは、人魚の一部の血統が持つという、未来予知の力を受け継ぐ、最後のひとりなのです』


サリー「すごい……未来予知なんて、お師匠さまにだってできないのに……」


ブラド「吸血鬼の一族が使う魔術にだって、そんなのないわ……ほんとすごいのね」


アナスタシア「……私がすごいわけじゃない……コバルトオーブとの共鳴現象だもん」


マリア「占い師の水晶玉みたいなものかしら……それより遥かに強くて、正確な力かしらね」


ローズ「え?ちょっと待って!じゃあ海神さまがコバルトオーブを私たちに託してくれるってことは、もう未来予知できなくなるの?」


フィスト「ほんとだよ!いいんですか?それ」


海神『……ええ、私たちはこの海の未来をあなた方に託すのです。未来が見える力はもう、必要ありません』


アナスタシア「海神さま……」


力ない声が神殿に響きます。

抗議の声ではありません。

すがるような、今にも泣き出しそうな、哀しい響きでした。


アナスタシア「今、彼女たちに未来を託すことは……未来を手放すことになりませんか……?」


リーフ「アナスタシアさん?あなたが見た、未来って?」


人魚の少女はリーフの方を見て、すぐに視線を虚空に向けました。


アナスタシア「……海神さま……どうしますか?」


海神『見てもらいましょう……できますね?』


アナスタシア「……はい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る