第64話~第69話

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第64話 知の試練 突破



ローズ「……正解?」


キャッツ「そうよ!やるじゃん!もっと喜べ!」


マリン「ローズがいないと進めなかったね」


リーフ「ほんとに……すごいんだね、知識って」


ジャンヌ「……そうか、さっき声が言ってたのって、こういうことか」


フィスト「ん?なに?」


ジャンヌ「ほら、マリンが『私たちの気持ちがひとつになってないんだから、試練を後にしろ』ってブチギレてたら、声が『後にする権利も、必要もない』って言ったじゃん」


マリア「うん、言ってたね」


マリン「言ってた?」


ブラド「マリンが一番キレてたやん」


ジャンヌ「試練を受ければ私たちの気持ちがひとつになる、つまり、ローズがいなきゃ進めないってことがわかるから、後回しにする必要なんかないって、言ってたんだよ、声は」


マリン「え、めっちゃ良い奴じゃん」


『……次が最後の試練だ』


キャッツ「ありがとね、いいとこあんじゃん」


『……最後の試練が始まるまで、再び塔をのぼってもらう。始まるまで』


ブラド「優しいおっちゃんやん」


『最後の試練が始まるまで待っていろ』


最後は少し早口でまくしたてました。

再び、床が音を立てて、上に動きだしました。


サリー「すごいね、ローズちゃん」


ローズ「いや、でも、リーフとブラドが教えてくれなかったら、駒の向きまではわかんなかったよ」


ブラド「じゃあやっぱりみんな要るってことやん」


ローズ「う、うん……そ、そうだね!」


リーフ「ねぇ、ジャンヌちゃん、次が最後の試練って言ってたよね?」


ジャンヌ「ん?うん、そうだね」


リーフ「どんな試練なんだろ……」


ジャンヌ「どうだろ……でも、どんな試練でも大丈夫だと思うよ」


リーフ「う、うん!そうだね!」


マリア「それにしても、この塔、あとどれくらいのぼるのかなぁ?」


マリン「!?ちょっと!あれ」


みんながマリンの方を見ます。

マリンは、上の方を見ていました。




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第65話 最後の試練の前に



マリン「!?ちょっと!あれ」


みんながマリンを見たとき、マリンは上の方を見ていました。

8人がマリンの視線を追うように、上を見ました。


いつの間にか塔の天井が見えるところまで近づいていました。

そして今、その天井が、真っぷたつに割れて、わかれていきました。


ジャンヌ「天井が……開いてるの?……」


キャッツ「雲よりも高い塔の、てっぺんまで来ちゃったってことね」


マリア「外に出るってことよね」


リーフ「どんな試練なんだろう……」


ローズ「誰が一番早く降りられるか、とかかなぁ?(笑)」


フィスト「あたしらで競ってどうすんのよ」


サリー「今までよりも、もっと厳しい試練なんだよね……」


ブラド「そうとも限らへんよ、なんとかなるって!知らんけど(笑)」


最初は小さくしか見えていなかった空が、だんだん近づき、大きく見えてきました。


そして9人が乗っていた床は最後までのぼりきり、塔の天井になったのです。

塔の頂上では、周りに何もなく、風が吹いています。


ジャンヌ「みんな、気を付けてね!風けっこう強いよ」


リーフ「高いとこ、こわい……」


キャッツ「リーフは森育ちだもんねー」


マリア「みんなで手をつないで、固まりましょう」


フィスト「それがよさそうね」


9人は天井の中央に集まり、円形に手を繋ぎました。

すると、声が響きます。


『最後の試練を始める前に、お前たちの旅について教えよう』


9人の周りに突然、7つの台座が、フッと現れました。


サリー「……旅について?」


『お前たちは、ふたたび世界の空に虹を架けるために、この塔から旅立つ……虹をよみがえらせるためには、世界に散らばる7つのオーブを、今周りに現れた台座に置かなければならない』


声にこたえるように、7つの台座が、ぼんやりと光りはじめました。

7つの台座、それぞれ違った色の光を放っています。


赤、オレンジ、黄、緑、青、藍、紫


マリン「きれい……不思議な色……」


ジャンヌ「この、キューブの色だよね」




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第66話 9人の使命



ジャンヌ「この、キューブの色だよね」


ジャンヌの声に、8人は自分の首から下げられたキューブを見ました。


フィスト「うん、ほんとだね」


サリー「虹の色だよね……お師匠様が言ってた」


マリン「ってことはさ、今から世界中を旅して、7つのオーブを集めて、もう1回ここに戻ってこなきゃいけないってことだよね?」


マリア「長い旅になりそうねぇ」


リーフ「ねえ、ローズちゃん、オーブって、なに?私、森育ちで……」


ローズ「え?う、うーん、なんて言えばいいのかな?」


ジャンヌ「森育ちじゃなくても説明難しいよねー」


サリー「なんていうのかな?宝珠?ふしぎな力を持った玉みたいなので」


リーフ「ふーん……ありがと。それを7つ集めるのね」


キャッツ「ドラゴンボールみたい(笑)」


フィスト「やめて(笑)」


『……魔法使いの少女よ』


サリー「!は、はい!」


マリア「そんな緊張しなくていいの」


ブラド「実は優しいおじさんやで」


『……魔法が使えるのはお前だな。お前にひとつ魔法を授ける。この場所への帰還魔法だ』


空に、ぼんやりとした白い光の玉が出てきました。

光の玉はゆっくりと降りてきて、サリーの目の前で、フワフワと浮かんでいます。


ローズ「これが、魔法?」


サリー「……帰還魔法って……空間を飛び越えるんですか?みんなを連れて?……そんなの、使ったことないです」


『そう気負うな……7つのオーブがそろったら、魔法は勝手に発動する。そのときにこの場所を強く思い浮かべなさい。この場所と魔力を結び付けるのがお前の仕事だ……』


リーフ「確かに……サリーちゃんにしかできないね」


サリー「わ、わかりました」


宙に浮かんでいた光は、サリーの声に満足したかのように、サリーのキューブの中に、ヒュンッと入っていきました。


ジャンヌ「なんにしてもさ、ここまで戻る手間が省けるのは助かるね」


『……この9人を率いているのはお前か』


ジャンヌ「率いてない率いてない」


ローズ「えー!率いてるよー!」


フィスト「うん、率いてるね」


ジャンヌ「率いてないってば!」


キャッツ「率いてよぉ~!(笑)」




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第67話 旅立ちの終わり



ジャンヌ「あのさ、率いてるかどうかは置いといて、私に何の用なの?」


『お前が魔法の地図を持っているな?』


ジャンヌはそう言われて、懐から地図を取り出しました。

国王から託された、不思議な、魔法の地図です。


ジャンヌ「これね?キューブをかざすと、次の目的地がわかるっていう、魔法の地図でしょ?」


『そうだ。その地図も、キューブの中に収めることができる』


声が言い終わると同時に、ジャンヌが手に持っていた地図が、ヒュンッとジャンヌのキューブの中に入ってしまいました。


ジャンヌ「え!?これ、取り出せるの?」


『もちろんだ。取り出したいと願えば、それで出てくる』


ジャンヌ「ほんと?ん~……あ、ほんとだ、出てきた」


ローズ「じゃあ、あとの7人のキューブに、オーブをひとつずつ入れられるってこと?」


フィスト「あー!ほんとだ!数合うわ」


『それでは最後の試練を始める……魔法の地図にキューブをかざせ』


ジャンヌが地図にキューブをかざすと、不思議な色の光が、地図の一点を指しました。

旅立ちの塔から、海を越えた先の陸地の一点です。

そこには、山が描かれています。

緑豊かな山ではありません。

山頂からふもとにかけて、赤い筋が描かれています。


ブラド「これって……」


マリン「……火山よね」


キャッツ「えー!暑いのー!?」


マリア「熱いのよ」


『旅立ちの塔、最後の試練は、そこに行くことだ』


リーフ「え?それだけ?」


ローズ「意外と簡単?(笑)」


フィスト「バカ言わないの。この塔のてっぺんからどうやって行くのよ」


サリー「確かに……塔を降りるのはいいとしても、海も越えるんだよね」


ジャンヌ「マリン、この塔から海を渡るのって、どんなもん?」


マリン「この海はそこまで広くないけど、かなり激しく荒れる海域だから、船で渡るなら遠回りしなくちゃいけないよ」


『力の試練、知の試練を乗り越えたお前たちが挑む最後の試練は、勇気の試練』


サリー「……勇気」


ブラド「うそでしょ?」




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第68話 勇気の試練



サリー「……勇気」


ブラド「うそでしょ?」


9人が塔の外周に近づきます。

眼下に雲が見えますが。


マリア「飛び降りろってこと?」


フィスト「いや、飛び降りろというか、飛んで海を渡れってことじゃないの?」


リーフ「そうだよね、試練は、『次の目的地に着くこと』って言ってたし」


キャッツ「ていうかこれどんだけ高いのよ」


マリン「雲なんて上から見ることがほとんどないからさ、雲よりもどのくらい上にいるのかもわかんないよね」


サリー「えっと、浮遊石の結晶を使ったら、ゆっくり降りれるから、ケガはしないと思うけど……」


ブラド「おー!そうやん!」


ジャンヌ「たしかそれって、術者と離れたら効果が弱くなるのよね?じゃあ、サリーとくっついてればいいわけ?」


サリー「うん……直接でも間接でもいいから、9人がそれぞれ手をつないでいれば、みんなで浮けるよ」


ローズ「すごい!楽しそう(笑)」


リーフ「9人で手をつないで空飛ぶんだね♪」


サリー「あ、でも……9人だとやっぱり、飛ぶというより、ゆっくり落ちることになると思う」


フィスト「ってことは、飛距離を伸ばさないといけないってことね」


マリア「あ、テント、使う?」


ジャンヌ「なにそれ?」


マリア「私が城下町で買ったの。テントは骨組みと布だから、組み合わせれば……」


キャッツ「あー!ハングライダーみたいになるね!」


マリン「それならかなりの距離を進めそうだね。あとは風をどうとらえるか、だけね」


ブラド「マリンよろしく」


ローズ「そっかぁ、船乗りだから」


マリン「いや、まあわかってたけどさ」


ジャンヌ「じゃ、さっそくやっちゃおうか。テントを分解してハングライダーを作ろう」


リーフ「む、むずかしそう……」


フィスト「ローズ、作り方、本で読んで覚えてるでしょ?」


ローズ「えっと、うん……じゃあまず」


フィスト「ほんとに覚えてるんだ……」


サリー「あ、あの……ちょっといい?」


みんながサリーに注目します。




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第69話 今日はここまで



ハングライダーを作ることになった9人ですが、サリーが声を上げました。


サリー「あ、あの……ちょっといい?」


みんながサリーに注目します。


フィスト「?どうしたの?」


サリー「えっと、今日はもう、これくらいにしない?」


全員が目を見合わせます。

ジャンヌが懐から時計を出して見ました。


ジャンヌ「午後4時か、たしかに、1日動きっぱなしだったしね」


キャッツ「サリーはたくさん術を使ったから、疲れてるよね?」


リーフ「そっか……力の試練では防御力アップの術と、フィストちゃんに浮遊術かけてたし、その後はフィストちゃんとジャンヌちゃんに回復の術も使ってた……」


マリア「実は塔までの道でも、サリーはブラドのために、日射し避けの術も使ってたもんね?」


ブラド「そうなん?!」


サリー「う、うん」


ローズ「すごい……そんなに頑張ってたんだ……」


ジャンヌ「そうだね、休もう。サリー、話してくれてありがとう」


キャッツ「気づかなくてごめんね」


サリー「ううん!ありがとう……」


ジャンヌ「マリン、ここから次の目的地の火山まで、空を飛んでいったとしたら、どれくらい?」


マリン「……4時間はかかると思うよ」


フィスト「サリーは今度は4時間も術をかけっぱなしになるのか……」


サリー「大丈夫だよ。1日ぐっすり寝て休めば、大丈夫!」


マリア「じゃあ今日のところはテントをハングライダーに改造するのはやめて、テントとして使おっか」


リーフ「でも、風が強くて……怖い」


ジャンヌ「そうねー、テントごと飛ばされちゃおしまいよね」


キャッツ「ねー!なんか小屋的なの出してよー!」


キャッツが虚空に向かって声を上げると、9人のそばの床の一部がゴゴゴゴと音を立ててせり上がり、小屋の形になりました。


ブラド「え、めっちゃええ人やん」


ローズ「すごーい、ちゃんとドアもある!」


ガチャ


マリン「ほんとだ!えー、やだー、中はあんまり可愛くなーい」


マリア「そういうセンスはない人なのねー」


サリー「んー、でも変に張り切っていろいろ付けても、それがダサかったら……」


『……………………』


9人はその日は塔の頂上で一夜を明かしました。


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