第60話~第63話

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第60話 知の試練



床の動きが止まると、再び声が響きます。


『……世界について何も知らない者が、世界を見ても、何も理解できまい』


床の中央に、音もなく、急に、フッと台座が現れました。


リーフ「な、なに?」


『お前たちがこの世界をどれほど知っているか、試させてもらう。「知の試練」を始める』


それきり、声は聞こえなくなりました。


キャッツ「な、なんなの?」


サリー「急に、出てきたね、あれ」


9人が恐る恐る、床の中央に現れた台座に近づきます。


マリン「チッ……ムカッつくわねぇ!」


リーフ「マ、マリンちゃん、いまはとにかく、試練をクリアしよ」


マリン「わかってるわよ!いい?ローズ!あんただってちゃんとさっきの試練で仕事してたのよ!そのへんの話、まだ終わってないからね!」


ローズ「うん……」


キャッツ「いや、別に説教されるわけじゃないのよ?」


サリー「そ、そうだよ、マリンちゃんも、もっと優しく……」


ブラド「大丈夫、全部うまくいくって。知らんけど(笑)」


ジャンヌ「知の試練かぁ……私出番あるかな?」


フィスト「ないかもね(笑)」


9人全員で、台座を取り囲みます。

台座には1枚のボードと、4つの駒が置かれていました。


1枚のボードは4つのエリアに色分けされていて、漢字の「田」のようでした。


左上:青

右上:緑

左下:黒

右下:茶


それぞれのエリアの中央に、八角形の穴が1つずつ空いています。

4つの穴が空いた4色のボードです。

そして4つの駒は下部は、ボードの穴と同じ、八角形になっていて、穴にぴったりと合うようです。

そして、駒の上部はそれぞれ違った形をしていました。


マリア「これ……天使?」


4つの駒のうち、1つは背中に羽根が生えた人の形でした。




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第61話 知の試練 その2


マリアが駒の1つを手に取り、言いました。


マリア「これ……天使?」


フィスト「うん、そうよね」


サリー「じゃあ、ほかの3つは?」


サリーの声に、全員が、3つの駒に目を向けます。

キャッツがその内の1つを手に取ります。


キャッツ「んー、わかんないね、天使の駒とは違って、微妙に形が違うだけじゃん」


キャッツの言うように、残りの3つの駒は天使の駒のように、はっきりと何かをかたどっているわけではありませんでした。

ただ、なんとなく人のような形をしていることと、顔のようなものが彫られている位置はわかります。


3つの内の1つは、残る2つに比べて、やや小さく、太い形です。

顔らしき場所には、ひげが彫られています。


また別の1つは、残る2つに比べて、やや細長い形です。

顔らしき場所には、耳が彫られています。


そして、最後の1つは、2つの駒のちょうど中間の大きさ、形です。

顔らしき場所には、牙が彫られています。


ジャンヌ「天使の駒がひとつと、あとの3つは、なんだかよくわからない駒ね」


ブラド「まぁとにかく、正しい組み合わせで、駒を穴にはめろってことよね?」


リーフ「こういうの、キャッツちゃん、得意なんじゃないの?」


キャッツ「そうね……古代遺跡なんかには、この手の謎解きはあるけど……」


マリン「見たことはないわけね?」


キャッツ「うん」


フィスト「ま、見たことあるやつが試練になるわけないもんね」


マリア「みんなで考えましょ」


サリー「こっちのボード、この4色も、ヒントだよね?」


ジャンヌ「天使がひとつ、あとはボードの色と駒の形から推測しろってことか」


フィスト「ローズぅ、あんたも考えんのよ」


ローズ「え、うん……」


リーフ「これが天使だから、こっちの、牙がついてるのって、もしかして、悪魔?」


ブラド「おぉー!なんかそれっぽい!」


ローズ「えっと、いい?」


8人がローズの方を見ました。


ローズ「…………それ、ほんとに天使?」




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第62話 知の試練 その3



ローズ「…………それ、ほんとに天使?」


ブラド「天使やん」


ローズ「いや、やんじゃなくて、違うと思う」


マリア「どうして、そう思うの?」


ローズ「えっと、うまく説明できないんだけど……」


ジャンヌ「大丈夫だよ、ゆっくり、整理しながらで、さ」


ローズ「う、うん、ありがと」


フィスト「え?ほんとになんなの?はやく教えて」


ジャンヌ「うっさいわね!ゆっくりでいいって言ってんでしょ!」


サリー「ち、ちょっとみんなぁ」


マリン「なんか、ローズにはそう思う根拠があるんだよね?」


ローズ「……うん、だって、この試練は『知の試練』で、世界をどれだけ知ってるかを試すって言ってたから」


ブラド「そんなん言うてた?」


フィスト「うん。聞いときなよ」


リーフ「言ってたけど、つまり、どういうこと?」


ローズ「うん、この世界に、天使っていないじゃん?」


キャッツ「こらこら、聖職者の前でそういうこと言わないの」


ローズ「え?……あ!ごめん!」


マリア「いいのよ、そういうのは(笑)……さ、続けて」


ローズ「う、うん……えっと、この世界にいる羽を持つ、人に近い種族って、鳥人族がいるの」


マリン「あー!知ってる」


ローズ「だから、この4つの駒が、この世界の種族を表してるとしたら、羽を持つのは鳥人族、牙に特徴があるのは、悪魔じゃなくて、吸血鬼の一族」


ブラド「わたし!?」


ローズ「うん、で、耳は」


リーフ「あ!エルフ!」


ローズ「そう、で、髭はドワーフ。こう考えたら、つじつま合うの」


サリー「た、たしかに……この世界に住む人型の種族は、その4つです……」


フィスト「それじゃあ、それぞれの駒は……」


ローズ「多分、鳥人族のテリトリーは空だから青。エルフが森の緑、ドワーフは洞窟に住んでることが多いから茶色、吸血鬼は夜の黒、かな」


ジャンヌがローズの言う通りの組み合わせに、駒を穴にはめました。




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第63話 特技・思索



ジャンヌがローズの言った通りの組み合わせに、駒を穴にはめました。


キャッツ「…………なんも、起きないね」


フィスト「ちがうのかな?」


サリー「で、でも、すごくつじつま合ってた!」


マリア「うん、そうよね、ほんとに、すごいと思ったもん」


ローズ「でも、何も起きない……正解じゃない……これじゃ世界を知ってる証明として不十分ってこと?」


ジャンヌ「ブラドとリーフは、どう?自分の種族なわけだけど」


ブラド「いやー(笑)さっぱり」


リーフ「う、うん、ごめん……わかんない」


マリン「謝ることないよ。エルフと吸血鬼って関わり無さそうだもん(笑)」


ローズ「…………?」


ブラド「まーぶっちゃけ、その通りよ。住んでる場所が全然違うし」


リーフ「種族同士でつながりあるのは、エルフとだったら、鳥人族かな?」


ブラド「あーうちはドワーフだねー。山深いところに城を建てるには、仲良くしとかなきゃだから」


ローズ「わかった!」


マリン「!?」


キャッツ「ほんと?」


ローズ「うん、駒の向き……顔が彫ってるのは、どっちを向いてるかわかるようにしてたんだ……」


ジャンヌ「?……えっと、どうしたらいい?」


ローズ「あ、ごめん、えと……鳥人族の駒とエルフの駒を向かい合わせて……そして、吸血鬼の駒とドワーフの駒を向かい合わせてみて」


フィスト「そっか、八角形の穴の形にはこういう意味もあったんだね」


マリア「仲の良い組み合わせ同士で向かい合うわけね」


ジャンヌが言われた通りに、駒をはめなおしました。

すると、駒もボードも、台座ごとフッと消えました。


ジャンヌ「!?正解?」


マリン「……なんじゃないの?」


声が響きます。


『知の試練……よく乗り越えた』


サリー「すごい!」


フィスト「ローズやるじゃん!」


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