第56話~第59話
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第56話 特技・遊撃
フィスト「私が行く……ここをお願い」
キャッツ「行くって、どうやって行くのよ!塔の中の端から端なのよ!」
フィスト「だから都合いいのよ。こう見えてもね、建物の中では戦い慣れてるの。近衛兵だからね」
ジャンヌ「みんな、大丈夫よ!フィストに任せて」
フィスト「ありがと、ジャンヌ。サリー、浮遊石の結晶あるんだよね?あれで私の体、軽くできるよね?」
サリー「う、うん、でも術者から離れたら効果なくなるから、浮かせるのも無理だし、10秒くらいしか続かない……ほかの影を避けながら10秒であそこに行くなんて」
フィスト「浮かせるのは無理でも、サリーから離れて10秒は体が軽くなるのね?十分よ。武器は持たない方が良さそうね」
マリア「ジャンヌちゃん、ほんとに大丈夫なの?」
ジャンヌ「大丈夫、素手で戦えるのはフィストくらいよ」
フィスト「じゃ、サリー!お願い!」
サリー「う、うん…………リテ・ラトバリタ・ウルス……アリアロス・バル・ネトリール……」
フィスト「おぉ、かるっ!」
フィストはそう言うと、真横に駆け出します。
なんとフィストは塔の壁を走っていったのです。
塔の壁、曲面を蹴り続けています。
マリン「と、塔の反対側が都合がいいってそういうこと?!」
みんなの驚きを置き去りにするスピードで、フィストは反対側まで走りきりました。
奥の影の前に降り立つと、フィストの声が響きます。
「哈ァッッッ!!!」
パァァァァンッッッ!!
フィストの正拳突きが、影を霧散させました。
キャッツ「すっご……」
ジャンヌ「強いでしょー?フィストって。さ、あとはバラバラに動くやつらを片付けるだけね、みんなでもうひと息、頑張りましょ」
遠くでフィストが叫びます。
フィスト「こっちも助けてよねー!」
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第57話 力の試練・突破
空を飛ぶ鳥の影を、リーフの放った矢が消し去りました。
これですべての影が、消えてなくなりました。
フィストもみんなのところに戻って来れました。
マリン「つ、つかれた……」
キャッツ「お、終わったの……よね?」
マリア「みんなおつかれさまー!」
サリー「みんな、待ってて。今回復の術を」
ジャンヌ「待って、サリー」
サリー「?」
ジャンヌ「術、無限に使えるわけじゃないんでしょ?」
サリー「う、うん……」
ジャンヌ「……これから何があるかわかんないんだから、温存してて。今はとにかく、ひと息つけるわけだから、休んで体力を回復させましょ。ごめんね、みんな」
キャッツ「いや、私たちはいいけど……」
マリン「うん……」
フィスト「自分が一番疲れてるくせに……サリー、ひとりぶんなら、全員分より負担はないでしょ?ジャンヌに回復の術、かけてあげて」
ブラド「だったら、フィストとふたりぶんやん」
リーフ「うん!そうだね!」
サリー「わかった!じゃ、じっとしててね」
マリア「ほかのみんなは、怪我してない?今のうちに手当てしとこ」
ローズ「あ!私もやる!」
『力の試練……よくぞ乗り越えた』
キャッツ「忘れてた、いたね」
マリン「塔を守る者だっけ? ねー!まだ試練はつづくんでしょ?それはいいんだけど、しばらく休ませてくれない?」
『休ませるつもりはないが、次の試練が始まるまで時間がかかる。それまでは好きにしていろ……』
マリア「時間がかかるって、何か準備するの?」
『お前たちの次の試練の場所への移動だ……』
そのとき、地響きが聞こえました。
地面が揺れています。
ジャンヌ「!?なに?地震?」
フィスト「見て!塔の壁が……下がってる??」
ブラド「違う……床が、せり上がってるのよ」
ローズ「そっか、この塔、こうやってのぼるんだね」
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第58話
第2回反省会
せりあがる塔の床の上で、座ったり立っていたり、9人が話しています。
サリー「……………………よし。ジャンヌちゃん、フィストちゃん、回復、終わったよ」
ジャンヌ「ありがとね、サリー」
フィスト「すごい……傷だけじゃなくて、体力も回復してる……疲れがどっかいっちゃった……」
マリア「リーフ、指は大丈夫?かなり弓矢使ったでしょ」
リーフ「う、うん、でも大丈夫。少し休ませれば、平気」
ブラド「4人とも、ほんとありがとう。ごめんね、1番危ない役をさせて」
キャッツ「なに言ってんのよ!ブラドが使い魔で敵を撹乱してくれたでしょ?あれすごい助かったのよ!」
マリン「うん、ほんと。隙を作ってくれるだけでほんと助かったわ。使い魔くんたちにお礼言っといて」
ブラド「ありがと!そうするわ」
ジャンヌ「でも、私とフィストは軍人だから、戦闘は慣れてるけど、キャッツとマリン、かなりしんどかったでしょ?」
マリン「ううん、大丈夫よ、私は、やったことないわけじゃないし」
キャッツ「そうなのー?私は疲れた……ひとりで旅してるときは、基本的に逃げたり隠れたり、『敵はやり過ごす』のが鉄則だったからさー」
ローズ「そっか、遺跡とかの調査は、敵に勝つことが目的じゃないもんね」
キャッツ「そう、いちいち相手するだけ、時間と体力のムダだからねー。『こいつら全員倒せ』なんていうのはほんと勘弁してほしい(笑)だからローズとリーフにはめっちゃ感謝」
ローズ「わたし!?」
リーフ「わたし!?」
ジャンヌ「ほんとにそうね、助かったわ」
フィスト「ローズが指示役の存在に気付いて、リーフがそれを特定して……ほんと、あれがなかったら全滅してたかも」
リーフ「そ、そうかな」
ローズ「リーフは、うん、すごかったけど、私は別に……見つけたわけじゃないし……なんか、ほんとに私………………………………………………」
マリン「?」
キャッツ「どしたの?」
ローズ「……………………」
マリア「このメンバーにふさわしいのかな?ってこと?」
ローズ「……………………うん」
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第59話 仲間の資格
ローズ「……………………」
マリア「このメンバーにふさわしいのか、か……わかるわ、気持ち」
マリン「マリア!?何言ってんのよ!」
マリア「だって、私も、今のところ、ご飯でしか役に立ってないのよ?(笑)」
ブラド「だから!それはこれからの旅で不可欠なんだってば!ここまだ旅立ちの塔だよ?旅立ってもないのよ?」
ジャンヌ「ブラドの言うとおりね。戦うことが得意な人だけじゃ、旅は続けられないんだよ?」
リーフ「マリアちゃんのご飯でお腹いっぱいになってたから、みんなしっかり戦えたんじゃないの?」
キャッツ「そう!それよ!リーフ!」
マリア「…………そう……かな?……うん、ありがと」
ローズ「でも私は……戦い以外でも役に立つとこ、ないんだよね(笑)」
フィスト「やめてよー!役に立つとか立たないとかじゃないじゃん!」
声が響きます。
『それくらいにしておくんだな……そろそろ次の試練が始まる……』
マリン「うっさいわね!あとにしなさい!!」
『あ、あとに???』
ローズ「マ、マリンちゃん……」
マリン「大事な話してんのよ!」
『……試練よりもお前たちの話の方が大切だとでも?』
マリン「私たちの気持ち以上に大切なものなんてないわ!」
ブラド「マリン……」
マリン「私たち、これから世界をひとつにするのよ?その私たちの気持ちがひとつになってなきゃ、世界をひとつにするなんて、できるわけないじゃん!」
マリア「…………そうね」
ジャンヌが宙に向かって問いかけます。
ジャンヌ「ねえ、試練、あとにできる?」
『…………お前たちには試練を後回しにする権利も、必要もない』
マリン「ふざっけんじゃないわよぉぉー!!」
ずっと続いていた床の動きが止まりました。
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