くっくばっど
一歩
第1話 「ぺろんち」
「さあ、バ◎レシピの時間だ!」
日曜朝の台所に立つ。
いや、もう昼だ。平日の疲れを解消する為にひたすらにひたすらに寝て、起きて、今だ。
腹減った。
「何を作るのか! そんなの俺だって知らん!」
流しの上に置きっ放しのC◎C◎C◎R◎まな板の隣に、とりあえず冷蔵庫にあったものを全部出して並べる。あれ、バ◎レシピじゃなかったの?
「とりあえず! 大蒜を叩く!」
それっぽい。それっぽいぞ。んでもって浮いた皮を剥いて尻を落とす。芽は面倒なので取らない。食べられるし。そこまで味や焦げが気になった事もないし。なんなら何か月も放置して芽を伸ばしてからそれをメインで食べるまであるし。
「中華鍋! オリーブオイルをイン! 点火!」
中華鍋は全てを解決する。高校時代からの親友がそう言ってた。
ロバート・A・ハインラインの『ルナ・ゲートの彼方』でも、登場人物がサバイバルに行く時には中華鍋を担いでた。最も、すぐに捨てるんだけども。なんでだ。っつうかそれじゃここで例に引くの駄目じゃん。
オリーブオイルは、ほら、何処かの芸能人が大好きだから。とりあえずオリーブオイル。あと味変で胡麻油。
「次は唐辛子だろう常考!」
丸ごとで。既に切って封してあるのは、風味や辛味がトんでしまっている気がする。頭切って、ザラザラと種を出して、輪切りで。んで出てきた種も大蒜と一緒に中華鍋へ。
種まで入れると辛過ぎるとも思うが、捨てる気にもならない。
辛過ぎるといえば、乾燥唐辛子でなく、採れたての生を冷凍しといて使うと、更に辛味がイイ感じになる気がする。一緒に甘味や旨味が欲しいのだが、産地や品種に依るのか、なかなか「コレだ!」というのに会わない。昔食べた事のあるあの味を探しているのだが。こっちの舌が鈍っているので、それで出会ってるのに気づけてない可能性も高い。で、乾燥でなく生か冷凍だと、その甘味旨味が一寸増える気がする。緑の方が未成熟だから辛味より甘味が強いとかあるのかな? でも試したけど緑も結構辛いんだよな、むしろ赤より辛い時もある。
「更に! 余ってた野菜! 玉葱と人参!」
熱の通った人参って甘いよね。玉葱はどうやってもまあ旨いし。小さく刻んでイン。じっくりめで。
「んー? 次は? なんだ? なんだろう? とりあえずパスタ茹でる?」
2リットル鍋を空のまま火にかける。すかさずオリーブオイル。そして塩と胡椒をパラリパラリ。弾けてきた所で水を足して沸かす。パスタの茹で汁としてこれが優秀らしい。油のおかげで麺がダマにならず、塩で下味もつき、香ばしさっぽい何かも纏う。
「パスタやめて煮物か汁物にするか? だったら味醂と料理用清酒だな! あと味噌もか? いっそカレー? カレーは何をしてもカレーになっちゃうしなあ。
まあ今回はやめとくか。でも一椀のスープぐらいはあっていいかな?
よし! 乾燥ワカメと卵カモン!」
パスタの茹で汁を幾らか取り分け、乾燥ワカメの大椀へ。数分待って卵を割り入れ、ぐるぐる溶かし、更に茹で汁を足す。何か物足りないならコンソメとか鶏がらスープの素とかを足す。
「時間だ! 少し早めの固めで麺をザルに上げる! 中華鍋で絡める!」
好みによるでしょうけど、『ミスター味っ子』を読んで以来、私にはアルデンテという言葉への憧れがあるのです。
「鰹節をレンジでチン! そして指でこすって粉々に! ぶっかけ!」
蕎麦も美味しいよね。
「ここで味の素! いちにいさん!」
発酵調味料、なのだそうだ。化学調味料、と言われてた時はてっきり薬品を化学合成してるのだと勘違いしていた。そこの所、同じ発酵食品の味噌や醤油は大好きだろう海◎雄山はどう思っているのだろうか。塩でも天日塩はいいけどイオン交換膜のは認めないとか、そのレベルなのだろうか? そのレベルじゃない嫌厭を感じるが。
「隠し味はバターと麺つゆ!」
ちょびっとね。
日本人ならとりあえず醤油、で味がまとまる気がする。物足りなければ出汁の素も。で、醤油+出汁の素=麺つゆ、な気がする。料理は科学、俺はそう信じている。いやだからバ◎レシピじゃなかったの?
「皿に盛る! 胡椒を、思っている3倍かける!」
ゴリゴリと。白黒赤の違いはよく判らない、のでミックスして使ってるのだけど、粉より挽きたての方が香りが立つのは確かだと思う。だから好みのミルを探してるのだが、まだ見つけてない。使わなくなった空き瓶ミル群が場所を取ってしゃあない。今は片手でもいけるという電動ミルを試してるが、電池とモーターで重心高いし低速だし。こう、擬音でいうと、ゴゴゴリゴリリッッ、とか、ザッザッザッ、とかが理想なんだけど。ブィーンブィーンズズズズ、なんだよね。
「彩りが一寸足りないかな? パセリ? いや、長葱を刻んでトッピング!」
葱が安いらしいですね。安くなくても好きだから割とストックしてるけど。
「葱と来たら胡麻も! 白胡麻を指で捻りながら!」
指でゴマ粒が破壊できるのか? と思っていたが、やってみたら意外とできる。一皮なら摩擦で剥けるというか割れるというか。確かに風味が立つ。
以上、このへんはパスタだけでなく椀にも適時入れたり入れなかったり。
「できた! これはなんだ!
……あれ? ペペロンチーノ、だ?
……まいっか。食す! いただきます!」
もぐもぐ。
美味い。肉は無いが油脂のせいか鰹節のおかげかボリュームは十分。
葱は細かく刻んで振るより、大きめに刻んで暫く焼き混ぜた方がよかったかな?
汁はきちんと火を入れて卵を固めて、あと酸っぱい系にしとけば本体とより沿ったかもしれない。
最近喉が弱ってるので、ガフガフと食ってたら胡椒が響いてむせた。でも食う。
「ごちそうさま! ふう、お腹一杯になった。寝る。」
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