二章
第1話 ツバキと戯れ
女神様のご
さて、村にたどり着いてから少々経ち、安定した生活を送れるようになりました。
そういえば、村の名前はスタン村と言うらしいです。
八歳という年齢、精神年齢の
しかし、安心して生活ができるほどの収入はありません。
私は、冒険者カードを眺めて、
この能力では高ランクの依頼を受けさせてもらえません。
どうにか、能力値をあげて昇級試験を受けさせてもらいたいものです。
が、何故でしょう? 前の世界での成長具合よりも、こちらの世界での成長具合がかなり遅く感じます。
…………ま、恐らく、前の世界ではそんなことを気にする余裕がなかったので、その所為でしょう。要するに気のせいですね。
さて、気を取り直して、今日も頑張って稼ぎますよ!!
私が朝の支度をしていると、ツバキが私を呼びます。
ツバキは最初、出会ったときはビビりましたが、今では私の大切な家族です。
しかし、身体が大きいので、家の中に入れず、お外で暮らして貰っています。
自分で穴を
私が家の扉を開けると、そこにはモフモフの白い壁……ではなく、ツバキはお行儀よく座って待っていました。
はいはい、ごはんですね。もう少しで私の分が出来ますから、少し待ってくださいね。
自分のご飯を用意して、お外にある机の上に置きます。
その後、ツバキのご飯を用意して、椅子に腰かけます。
「いただきます」「わふわふ」
今日の朝ご飯はウサギ肉のサンドです。
一緒に
私が美味しく頂いている
「ツバキ、好き嫌いは駄目ですよー。そんな事では大きくなれません」
…………言ってから思いましたが、これ以上大きくなられても困りますね。十二分に大きいです。
でも、好き嫌いは良くありません。栄養バランスが
まったく、何が嫌いなのですか? ふむふむ、この赤いものは……何かの茎ですか。
農家の方に貰ったお野菜ですね。名前も何もわかりません。
少し頂きますね。
あむ。もぐもぐ。ん……、独特な味わいですね。とあるフルーツのような香りと、酸味があります。
思い出しました。農家の方曰く、このお野菜は、葉には毒があるが、茎は栄養価も高く、良いお野菜だと聞いています。
ただ、酸味が強いですね。この酸味が苦手なのでしょうか。
料理法も聞いておけばよかったですね。今度聞いておきましょう。
「あ。でも、今回は食べてくださいね。なるべく、好き嫌いはなくすようにお願いします」
私がそう言うと、ツバキは少ししょんぼりします。可愛いです。
ですが、甘やかしてはいけませんね。ツバキの為に、ここは心を鬼にします。がおー。
よしよし。少し嫌そうですが、素直に食べていますね。偉いです。
食べきりましたね。良い子良い子してあげます。
よーしよしよしよし! 頑張りましたね! 良い子です!
支度を終え、村へ行きます。
村へ行く前に、ふと思い出したことがあり、近くの木の元へ行きます。
ナイフでつけた傷があることを確認し、その木に背を合わせて、またナイフを頭の上に合わせて傷を付けます。
そう、身長を測っているのです。測っているのですが……
先月とあまり変わっていませんね。ちょっと残念です。
ま、そのうち忘れたころにぐんぐん伸びるでしょう。
村の近くに着いたら、ツバキと向き合いました。
「では、ツバキ。小さくなってください」
私がツバキの体に手を触れ、「シェリンク」と唱え、魔法を使います。
詠唱省略が便利ですね。一度使用したことがあれば、魔法名だけで魔法が発動します。
ツバキの上下に現れた魔法陣が光り輝くと、ツバキの身体は見る見るうちに縮んでいき、普通の大型犬くらいの大きさになりました。
魔法陣が二枚なので、第二階級魔法ですね。
魔法陣の数によって、その魔法の階級が決まっているそうです。
この魔法の収縮率ではこの大きさが限界でした。
ツバキが大きすぎるのか、この魔法が下位の魔法だからなのか、はたまた両方か。
でも、この大きさになれば、別段、村に侵入するのには困らないので、問題ないです。
一つ気を付けなければならないのは、この魔法は、使用中常に私の魔力を消費し続けるので、魔力残量が怪しくなったら、村を急いで出なければならないことですね。
村の中でいきなり元のサイズに戻ったら、大パニック間違いなしです。
まあ、下位の魔法と言うことで、消費魔力もそんなに多くないのでしょう。今の魔力の消費の勢いを考えるに、そういう状況に陥ることは無さそうです。
それはそうと、農家の方に会いに行きます。
あのお野菜のほかにも、色々なお野菜の調理の仕方を聞いておきたいです。
「あらぁ、カミリヤちゃんどうしたの、こんなところで」
「あ、おばさん。ちょうど良かったです。実は聞きたいことがあるのですけど」
農家のおばさんはちょうど畑で作業をしている最中で、私を見つけて声をかけて下さいました。ありがたいです。
早速、例のお野菜について尋ねます。
「あっ、ごめんなさいねぇ。そう言えば、言ってなかったわねぇ。この辺りではみんな当たり前に食べているものだから、すっかりカミリヤちゃんが他所から来たっていうのを失念していたのよぉ」
「ふむ。それだけ、私もこの村に
「おばちゃんもそう言ってもらえると助かるわぁ。そうそう、あれの食べ方は――」
例のお野菜はラバブーと言う名で、生食はもちろん、酸味を抜きたければ、加熱すればよいそうで、よく、お砂糖などと一緒に煮詰めて、どろどろにしたジャムと言うものにして、パンに付けて食べているそうです。
ジャムと言うものは保存が効くらしいので、暇な時に作れて便利だそうです。
サラダなどで食べる場合は軽く
その他にもいろいろなお野菜の食べ方を教わり、お礼を言って帰ろうと思った頃、少し高台になっている場所に人影が見えました。
こちらを
「おばさん、あの方は御知り合いですか?」
「んー……? さてねえ。見知らない顔だね。この村のもんではないわ。旅人かね」
そう言われて、納得です。
旅人なら、他の土地とは違う文化があれば、気になるのかもしれませんね。
この地域特有のお野菜、ラバブーが気になるのでしょう。
その旅人の方はくるりと反転し、村の中の方へ向かっていきました。
さて、私も、他の用事を済ませねばなりません。
おばさんにお礼を言って、この場を去りました。
しかし、何でしょう、この感覚。
まだ、背中の、むずむず、そわそわ、が
ツバキをなんとなしに見ると、少し心配そうに私を見ています。
すみません。体調が
ツバキの背を
代わりに、ツバキが少し落ち着かなそうですね。
普段は私よりも大きいので、背を撫でられると言うことに慣れていないのでしょう。
ふっふっふー♪ ツバキの背を撫でられるのは今の内だけです。
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