第4話 三日目ともふもふ

 三日目。

 私が起きると、それを確認したかのようにデカ犬が立ち上がります。

 そのまま、森の中へ駆けていきました。多分、朝食を調達しに行ったのでしょう。

 待っている間に、川の水で顔を洗います。うん、さっぱりします。

 その後、落ちている枝を集めているとデカ犬が帰ってきました。ウサギ三匹と鳥一羽。

 私の前に置きました。得意げな顔です。うん、偉い偉い。撫でてあげると満足気です。

 ちなみに、今日まで異常がなかったので、ウサギは食しても大丈夫だと思うことにします。デカ犬も喜んで食べますしね。

 下処理をして私の分だけ火にかけると、デカ犬が羨ましそうに見てきます。試しに焼いていた肉を分けてあげると、喜んで食べました。分かりました。あなたの分も焼いてあげましょう。

 それにしても、鳥はどうやって仕留めたのでしょうか。

 食べ終わるとデカ犬は再びどこかへ行ってしまいました。落ち着きのない子ですね。

 いい加減、デカ犬じゃなくて、名前を付けましょう。いつまでもデカ犬じゃ可哀そうですから。白い毛並みに、透き通った緑色の額の宝石、……ま、歩きながら考えましょう。

 次にデカ犬が帰ってきたとき、何やらピンク色の石ころのようなものを持って帰ってきました。これはもしや。

 すぐに川の水で表面を洗ってから、少し舐めてみます。

 しょっぱい! これは岩塩ですね。それに、デカ犬が咥えていたので小さな石ころに見えましたが、私の両手よりもでかい塊です。でかしたデカ犬!

 わしゃわしゃ撫でてやります。デカ犬は嬉しそうにしています。

 ちょうど良いです。ちょっと早いですが、昼食にしましょう。

 木の枝を拾い集め始めると、デカ犬は森へ駆けていきました。

 集めた枝に火をつけて、火が安定する間に岩塩を削って大きめの葉っぱに用意しておきます。

 デカ犬もすぐにウサギを狩って帰ってきました。よく見ると、ちゃんと血抜きされているみたいです。私の作業を見て覚えたのでしょうか。

 さくっと、下処理を終えて、今回は初めからデカ犬の分も火にかけます。焼きあがったら、さっそく先ほど手に入ったお塩をつけていただきます。

「うまい!」

 やっぱり、調味料って大事ですね。お塩だけというシンプルな味付けですが、これだけで文明的な感じもします。おいしいです。

 デカ犬も器用に塩をつけて食べていました。賢くて器用な犬ですね。できれば、ずっと一緒にいてほしいです。

 満腹になり、少しうとうとしてしまいますが、目的はサバイバル生活ではなく、人里です。

 眠気に抗い、立ち上がります。すると、デカ犬が私をくわえました。む、今更私をしょくす気ですか油断しましたやめてください私はきっとおいしくないですさっきのうさぎのほうがよどああああああぁぁぁぁ。

 ぽい、と軽くほうられ、デカ犬の背中に着地しました。食べるつもりではなかったのですね、よかったです。私はちゃんと信じていましたよ。本当ですよ?

 それにしてもこのモフモフは心地よいですね。寝てしまいそうです。でも進まなければ。

「わふわふ」

 と、デカ犬が言ってきます。いや、私は犬の言葉なぞ分かりません。分かりませんが、何となく、乗っていて、と言っているような気がします。完全に私の都合の良い考えですが。良いでしょう、そこまで言うのならお言葉に甘えましょう。正直、疲れていたのです。

 テクテクと歩いていくデカ犬の背中の上は心地の良いリズムです。

 ああ、やばいですね。森の木々からの木漏れ日とデカ犬のもふもふ、適度な満腹感と心地の良いリズム。そのすべてが私の睡魔を増幅させます。もう抗えません。やはり、身体年齢に精神年齢が引っ張られているようですね。では、皆様おやすみなさい。

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