第2話 森の中、一日目

 一日目。

 歩き始めて30分後くらいに、複数の人骨を見つけました。正直、15年間の旅で見慣れているので、今更びびることもありません。遭難してしまったか、強力な魔物に出会ってしまったか。

 私は合掌して、軽くその人骨を調べます。折れている骨が多いから、強力な魔物に出会っちゃったのでしょう。実力に見合わない冒険をするのは、ただの自殺行為といえます。同情はしません。

 人数を数えてみると、12人。この数で敵わない魔物がいるのか……。

 そんな魔物に出会ったらやばいですね。あ、ナイフ見つけました。錆も欠けもない。セラミックですね。剣もあります。これは錆びてボロボロ、鉄製ですね。んー、でも、この剣が一番マシです。

 鞘ごと貰って剣は背中に、ナイフは腰にぶら下げた。これはありがたく使わせてもらいます。

 うん。やっぱり、剣を持つだけで安心感が湧いてきます。今の体で、その強力な魔物と戦えるとは微塵も思えないですが。

 さて、先に進みましょう。お腹空きました。人里にたどり着くまでの辛抱です。

 再び、ずりずりと荷物を引き摺りながら歩き始める。

 歩いている間、暇だったので色々試してみました。

 まず、前の世界の魔法です。初級魔法から特級魔法、神話級魔法と一通り試したのですが、どれも使えません。まぁ、初級以外は魔力が足りないだろうから、どうせ不発に終わるのですが。

 次に、神聖魔法、精霊魔法と試してみます。

 神聖魔法は対アンデットに特化した魔法で、魔法系統はさっき試した魔法と大差ないです。

 案の定、使用不可。

 精霊魔法は、結論から言うと使えました。

 精霊魔法とは空間を漂っている精霊に力を貸してもらい、奇跡を起こす魔法です。精霊に力を貸してもらう対価として、魔力を受け渡す。精霊が起こす奇跡ですが、自身の魔力が消費されるので魔法とされていました。

 この世界に来た時から精霊の存在を微小ながら感じられたので、使えるかもしれないとは思っていました。

 ただ、感じられる精霊が微小なので小さな炎を出したりするのが精いっぱい。今現在の私自身の魔力量もそんなにないはずなので、それも関係していると思います。

 その確認も終わったので後はひたすら周囲の観察。あそこにデカい足跡があるだとか、木に引っ掻き傷があるだとか、主に野生動物に出くわさないように注意を払い、進みます。

 8歳の体じゃ、太刀打ちできないでしょう。さっきのドラゴンさんのような初心者向けの魔物なら何とかなるみたいですけども。あー、でも、魔法も弱い精霊魔法とチュートリアルさんに教えてもらった初心者向けの氷雪魔法だけですからねぇ。できるなら、もう魔物に会いたくない。

 そして日がだいぶ傾いてきて、森も深いこともあってすぐに薄暗くなってきました。

 私は、このままではまずいと思って近くの背の高そうな大樹をよじ登る。

 大樹の頂上から辺りを見回しました。

「げ」

 見渡す限り木、木、木、木、木。森がずっと続いています。少なくとも、後2・3時間歩いた程度ではこの森を超えられないだろう、ということは明らかです。

 こういう時はむしろ冷静になることにしています。

 冷静に今の木の枝分かれしているところに体を丸めて収まることにしました。

 今日は安全のためにもう動きません。あ、大樹さん、ふところに失礼します。こんばんは泊めさせてもらいますね。おやすみなさい。すや、すや。

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