PART7 我は名探偵

 リボルバーが2丁。

 オートマチックが2丁。

 はっきりと確認出来た。

 俺はとっさに貰ったトロフィーを床に投げ出し、懐に手を突っ込んで、M1917を抜き、まず一発、天井に向けて発射した。

 .45ACP弾は天井に当たり、室内に重く鋭い音をまき散らす。

 一瞬ひるんだが、ゾンビ共はカメラの列を押しのけ、舞台に上がろうとする。

 俺は隣にいたリン嬢に”床に伏せろ!”と叫ぶ。

 だが彼女は何が起こったか全く理解出来ていないようだ。

 俺は構うことなく彼女を押し倒す。

 4匹のゾンビはひるむことなく拳銃を抜き、一斉に俺に銃口を向け、ステージに足を掛けた右端の一人が初弾を発射した。

 .38スペシャルと思われる弾丸は、俺の頬をかすめ、斜め後方の大型スピーカーに当たったようだ。

 周囲に巻き起こる怒号と叫び声。

 俺は姿勢を立て直しながら、続けて四連射、

 ためらうことなく4匹を撃った。

 自慢話は嫌いだが、銃の腕前だけはちょっとしたもんだと思ってる。

 4匹の内、2匹は肩を、そして残りは二の腕と腰に当たった。

 再び叫び声に包まれる。

 俺は立ち上がり、拳銃をぶら下げたまま、認可証ライセンスとバッジを引っ張り出し、それを頭の高さまで持ち上げて、ありったけの声で宣言した。

『静かに!俺は本物の探偵だ!誰か早く警察に連絡を!』

 こうなるとマーロウだか、エリオット・ネスだか分からないな。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 10分と経たぬうちに警察おまわりの一団が到着し、騒然としていたホールの中は、やっと落ち着いた感じだった。

 何時もの如く、刑事しふくに囲まれ、連中から嫌味と恫喝に近い、訊問というやつを受けていた。

 俺は俺で、やはり型通りに”これは依頼しごとだ。情報源の秘匿の問題もあるから、依頼人の名前や、詳しい内容については喋れない”で押し通す。

 警官たちは俺を睨みつけ、再度何か叫ぼうとしたが、押し倒されたカメラマンや、すぐ傍で視ていた連中が、全員”向こうが最初に撃った”と証言したので、奴らもそれ以上は何も言えず、

”・・・・兎に角、所轄に報告書だけは出しとけよ!”と吐き捨て、後は鑑識と一緒に、他の連中の聞き込みに回り始めた。

俺が撃った4人は、青い顔をして呻きながら、担架に乗せられて運ばれていったが、

命に別状はないだろうと、救急隊員が教えてくれた。

(後から分かったことだが、やはり外国人不良グループの一団だった)

 俺は腰をかがめ、床に落ちていた、プラスチックの円錐体、第三位のトロフィーを拾い上げ、ステージを降りた。

『ちょっと、待って!』 

 後ろから声がかかる。

 コスチュームのまま、リンがこっちを向き、同じように舞台を降り、俺に近づきながら、まっすぐこっちを見て訊ねた。

『あなた、一体何者なの?』

 俺は半分壊れかけたトロフィーを彼女の手に渡すと、

『さっき名乗った通りだ。じゃ』

 それだけ答えると、中折れを被り直し、会場を後にした。

 

 

 

 


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