PART6 俺が・・・・第三位?

 ショッカーの戦闘員のナリをした司会者が、あまり性能の良くないマイクで、

”ただ今より、ベスト・レイヤーを発表いたします!”と、勿体ぶった声で宣言をした。

 俺は会場の隅っこで、飲み物の入ったプラスチックのコップ(アルコールじゃないぜ。これでも我慢してるんだ)を持ち、リン嬢とその一行から目を離さずにいる。

 まあ、俺なんか択ばれるはずなんかないだろう・・・・そう思ってタカを括っていたのが間違いの元だった。

 ドラムロールと共に、順番にベストテンが発表されていく。

 呼ばれた人間は半ば照れながら、半ば残念そうにステージの上に登壇する。

 そしてとうとうベスト4の発表と相成った。

 第四位になったのは、スーパーヒロインに扮していた”リン嬢”だったのである。

 しかし彼女はお世辞にも嬉しそうではなかった。

 余程自分に自信があったんだろう。

 まあ、それも仕方があるまい。

 人気投票ってのは時の運だからな。

 だが、他人事ひとごとみたいに俺が笑っていると、次に呼ばれたのは、

”エントリーナンバー、1560番!フィリップ・マーロウさん!”

 周囲の視線が俺に集まる。

 何が起こったか分からず、俺は手に持ったプラスチックカップを、カーペットの上に落としてしまった。

 拍手が起こって、ショッカーの戦闘員氏が、

”マーロウ、急いで登壇を!事件ですよ”と、茶化す。

 仕方ない。

 俺は周囲から促されながら、ステージに押し上げられた。

(なんてこった・・・・)

 俺は腹の中で呟いた。

 隣にいた四位のリンは、明らかに不満そうな表情で俺を視ている。

 戦闘員氏が俺のところに、ピエロのとんがり帽子を逆にしたような、透明な硬質プラスチックで出来たトロフィーを手渡した。

 俺は取り敢えず頭をぞんざいに下げ、そいつを受取る。

 また場内から拍手とどよめき。

 表彰なんかされたのは、空挺でレンジャー訓練を終えて、バッジを首から下げて貰った時以来だ。

 二位はある有名な魔女っ娘アニメの主人公に扮した女性で、ラテン系と見た。

 一位に輝いたのは、これも日本はおろか世界中で大人気のロボットアニメのヒロインで、こちらは顔立ちとプロポーションから、スラブ系という印象を受けた。

 シャッター音がして、カメラを構えた連中(当たり前だが、こちらも何かしらの紛争をしている)が前に出て、シャッター音を響かせ、フラッシュを焚く。

 一位と二位の子は、慣れているせいか、カメラの砲列に向かって、極めポーズをとって、微笑んでいる。

 だが俺は、何を言われても、口をへの字に曲げて立っているだけだ。

 憚りながら男ってもんは、そう無暗に人前で笑ったりはしないものだ。

 そんな道化師か幇間たいこもちみたいな真似は真っ平ごめんだ。

 そんな事より、俺はカメラの砲列のすぐ後ろにいる、あの四人のゾンビ達の存在の方に集中していたのだ。

  連中の右手が一斉に動く。

  ある者は腋の下。

  ある者は腰。

  何を取り出そうとしているか、すぐに

見当は付いた。

 

 

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