第37話オークション




いよいよオークション開催の日がやってきた。


このオークションは普通の祭典や催しと違い、露店が並ぶこともなく。

オークション会場外は静かで、会場に入れない付き人や警護の人がオークションを終わるのを待っている。


会場の外と内は厳重に衛兵らによって守られ。

空にはワイバーンに乗る竜騎兵が飛び回っている。

俺も初めて見る生き物に驚いたが、この大陸ではこれが普通の光景らしい。


会場内は各国の要人や大商人と、忍のみで王族がやってきている。

何故参加している人の素性が分かるのかは、隣の席でラーズ卿が説明してくれるからだ。

あの日以来、すっかり態度が変わったラーズ卿。


「あの人は、サライヤス国の王女です。名は確かサラーサ王女でしっかり者と噂されてます」


「そんな所にわたし達が居てもいいのかしら」


「心配無用です。私が隣に座っている限り、誰も文句は言わせません」


ラーズ卿は、開催日の前日にやってきて。

この大陸の通貨で10万ポルトを気前よく、世界樹の果実の代金として払って帰っていった。

異世界の通貨に置き換えると、10憶円になる。


「それではオークションを開催します」


一部の人間から拍手が起きていた。


「それではラクールの名画【夜明けの貴婦人】から始めます。5千ポルト!誰かいませんか?」


「はい、6番が入りました」


「はい、21番が入り6千ポルトになりました」


何やら番号の札を上げて、1千ポルトが増えるらし。

今度は札を上げ下げしている。


「はい、6番が8千ポルト」


「はい、21番が1万ポルトに上げました」


「誰かいませんか、誰もいませんね・・・カンカンカン21番、落札」


6番札を持った老人が悔しそうな顔をしている。

まだ始まったばかりで、会場内は様子見状態だと思う。


次々と出品され、次々と落札が行なわれていた。

今までの最高落札金額は8万ポルト。3人の競り合いは凄かった。


次は最後から2番目の出品。


「それでは古代文明の遺跡より発掘されたこの大箱、5千ポルト!誰かいませんか?」


「誰かいませんか?」


会場が静まり、最後の出品予定の拳銃に会場内全員が意識を向けていた。

俺は102番の札を上げた。


「カンカンカン102番、落札」


呆気なく落札してしまった。

10万ポルトを入札しようと思って居たのに、順番が悪かったせいだ。


「それでは、最後の出品です」


会場中央に職員による準備がなされた。

甲冑が置かれ、その後ろには太い丸太が5本も立て掛けられて固定される。

そして体格のいい兵が、甲冑から2メートルも離れた所に立っている。


「それでは知らせておいた試し撃ちを行います。ハリー撃っていいぞ」


体格のいいハリーが拳銃を両手で構えた。


M29

種類   回転式拳銃

製造国  アメリカ合衆国

設計   スミス&ウェッソン社

製造   スミス&ウェッソン社

口径   10.9 mm

使用弾薬  44マグナム弾

装弾数  6発

全長   306mm

重量   1396g


凄い音と甲冑を貫通して太い丸太にも衝撃が伝わった。

一瞬のことだったので、会場はしばらく静寂に包まれた。

そして会場中がどよめき、丸太の向きが変えられていき、4本の丸太が貫通して最後の5本目でようやく止まった。


それを見た客が20人程が駆け上がり、甲冑から丸太を入念に見ていた。

そうなると、残った客も集まり見たり触ったりする。

職員も無下に止める事が出来ずに、1時間が経過してしまった。


44マグナム弾も100発があったが、それだけは触らせないよう兵が止めに入った。


「それでは皆さん、最後の出品のオークションを再開します」


「1万ポルトから始めます。誰かいませんか?」


「はい、10番が2万ポルト」


「はい、100番が3万ポルト」


「はい、1番が4万ポルト」


「はい、56番が6万ポルト」


「はい、10番が10万ポルト」


「はい、3番が20万ポルト」


会場から、うなる声が聞こえてきた。


「誰かいませんか、誰もいませんね・・・カンカンカン3番、落札」


それを合図に拍手が沸き起こった。

隣のラーズ卿も驚きが隠せないで居る。


「オークションが始まって以来の最高落札金額です。素晴らしい」


隣の彼女らも、口を開けたまま見ていた。

トロスだけが豪快に笑っていた。


あとで聞いて知ったのだが、落札価格の1割がこの国の収益になるらしい。

たぶんラーズ卿もそこから、手数料を多く貰うのだろう。

この国からとエルフの里で、果実の件でどれだけの利益をだすのだろう。



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