第36話いにしえの世界樹




円形状の台座は同じ物であったが、周りの景色が完全に違っていた。

遠くから見たあの森か?世界樹と違う雰囲気の大きな木が天高く茂っている。

そしてようやく分かった気がする。

この大きな木も世界樹だと、ただし終焉しゅうえんが近い。

あの世界樹の生き生きとした生命が感じられない。

生命ある物はいつか死を迎え入れる日がある。


世界樹の知識を総動員して調べたが、5万年も続いているらしい。

この世界樹も死が近くても後100年か1000年も生きているかも知れない。

そんな考えにふけっていると、大勢のエルフに囲まれてしまう。


「ミラー様、何故この者を連れて来られたのですか?」


「そうです世界樹が衰えているのに、この者は汚れた存在です」


「みなさん、この者は世界樹の果実を持っています。エルフの伝説の子です」


エルフからどよめきが発生して、歓喜に泣きだす者もあらわれている。

恋人同士は抱き合い、老いた世界樹に祈りをささげる者もあらわれた。


「みなさん、女王にあわせます」


その言葉が合図にエルフが2つに別れ、世界樹への道が開かれた。


なんだかミラーと言う女性は、ここでは身分が高い女性のようだ。

歩きだす女性のあとに付いて進んでゆくと、又も台座があった。


ミラーが振向き、全員が乗り込んだことを確認すると、目を閉じた。

光り輝くと7色の光りが交互に照らされて消えた。


淡い光に囲まれた所に、一瞬にあらわれてしまい。

マナの存在を感じてしまう。



一段高い所に豪華に輝く王座があり、1人のか細い女性が座っていた。


「その者がそうなのか?」


「そうです女王さま、いにしえに伝わる者です」


「果実を・・・」


何か運命的な力なのか、何もためらいなく俺は動いていた。

俺は何もない空間から、ケースを取り出すとケースを開けて前に出していた。


ミラーはケースを受取ると、女王の前にうやうやしく差し出した。

女王は果実を掴み取ると、ゆっくりと一口かじると光り輝き。

部屋中が7色に光りだして、数分後に徐々に元の淡い光りに囲まれた部屋に戻った。


しかし、女王は王座には居なかった。

俺は辺りを必死に探したが居ない。


ミラーはうつむいたまま王座にゆっくりと座るのだった。


「再生の儀式が終了しました」


何処からか幼さが残る女性があらわれて、ミラーの前でひざまずくと頭を下げた。


「サーラ、覚悟はよいな」


「はい、女王さま」


ミラーがサーラの頭に左手をかざして、淡く光った。


「サーラ、例の物を持ってきなさい」


「はい、かしこまりました」


サーラが鏡の中に入ってゆき、しばらくして出てきた。

手に持ったかごの中に小瓶が4つ入っている。


サーラが俺らに差し出したので、俺が目でシランに合図する。

シランはその籠を受取って、にこりと笑い「ありがとう」と言ったが言葉は通じない。


「あなたの望みを1つ叶えました。もう1つはあなたとわたしだけの秘密です。皆さん、さがってくれますか?」


「皆、その女性と下に行ってくれないか?女王と2人だけの話しがある」


「皆、行きましょう」


心配そうに見てくるが、うなずいて行く様に合図する。

皆が集まると消えていて、2人だけになった。


「この事は他言しないで下さい。考えてもダメです。ただ受入れて下さい」


頭の中が一瞬真っ白になり、俺が知りたかった知識を受取った。

その瞬間に俺は、世界樹の下で皆に囲まれていた。


「しっかりして下さい」


「そうですよ、口を開けたままだとバカに見えますよ」


「わしも不思議な体験をしてしまったぞ。お主と居ると退屈しないのワハハハ」


どうやら正気に戻った俺は、世界樹を見上げた。

そこには茂った葉からマナが少しだがあふれていた。

世界樹の再生か?俺との運命はどうなるのだろう。



サーラに促されて、あの台座に戻るとサーラは目を閉じた。

再度、光り輝くと7色の光りが交互に照らされて消えた。


そして、あの丘の台座に戻っていた。


「ようやく戻って来れたな」


「あそこの空気より、こっちの空気がわしに新鮮でいいぞ」


「わたしは向こうの空気が美味かったわ」


ラーズ卿が駆け寄り、心配そうに見ていた。



サーラは、重荷を下ろしたよに微笑み目を閉じて消えた。


ラーズ卿の話しでは、ラーズ卿もエルフの里に行ったことが無いらしい。

エルフの小さな鏡が有って、紙に書いて放り込むことで文通をしているらしい。

勿論、ここの文字での文通らしい。


大型キャンピングカーに戻るまで、彼女らに質問攻めにあったが、言葉少なく答えてにごした。

ああ、何となく疲れた気がする。



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