第35話エルフとの出会い




次の日にオークション会場でメダルを見せて、出品の下見をしておくのが常連の行ない。

異世界のオークションのハウツー本は、色々と勉強になることが書かれていた。


「この花のエキスを飲むと肌がきめ細かくなりますって書いてるけど本当かな?」


「嘘は書かれてない筈よ、嘘なら次回からオークションに出れ無くなるのだから・・・」


「この出品の下の印って何?」


「あんた説明書読まなかったの、これは俺様が狙っているから手を出すなって警告しているのよ」


「みてみて拳銃の下に印が一杯あるよ。人気急上昇だね」


皆がワイワイとやっている最中に俺は、オークション会場に入った目の前の看板に釘付けになっていた。


『【世界樹の果実】か【生命の果実】を求めている』

何故このような看板が書かれているのだろう。

それは明確だ。エルフが求めているのだ。


彼女らに食べさせようか?迷っていた。

古代文明でもこの果実について不明な部分が多かった。

食べると魔力量が増えて万病にも効く果実。


食べた人間がどうなるかが確りとした知識が存在していない。

ここは1つだけエルフに渡して様子みでもするべきか?


ここを運営している職員が衛兵を引き連れて、見回りをしているので声を掛けた。


「あの看板の果実ですが求めているのは、本当ですか?」


「え!あなたはあれが読めるのですか?・・・」


これはヤバイ。そうか普通に読めるので気付かなかった。

この文字は多分、エルフ文字なのだろう。

普通の人が見れば、飾りの模様だと見ていた。


「少しばかり時間を頂けないでしょうか?」


「分かりました。連れを呼びます。皆!こっちへ来てくれ」


「なになに、この人は誰」


「あんたゴロツキでは無さそうね」


「オークションの関係者だよ、胸の名札にもそう書かれているよ」


「それで、わたしの旦那様に何かご用ですか?」


「ラーズ卿に会って下さい。今から案内します」


ぞろぞろと付いて行き、衛兵の1人が走って連絡しに行っている。

通された部屋は広く、奥のドアが開きラーズ卿が入ってきた。


「君は昨日の出品者だね、するとあの文字が読めたと言うのは君か?」


「はい、わたしには特別な恩恵があります」


「もしかしてだが、果実を持っているのか?」


「持っていると答えたなら、どうします」


「勿論、エルフに会うことになるだろう。嘘の場合は酷い事になるから覚悟するように」


「そうですか、持っていますよ」


「本当に持っているのか?」


「今、言いましたよ」


「今見ることは出来ないか?」


俺は何もない空間から、ケースを取り出すとテーブルの上に置き、ケースを開いた。

赤い果実が1つだけだが、マナがふわりともれ出している。


「なんと神々しい物なのだ。聞いた通りの物だ」


ケースを閉めて、すぐに収納。

ラーズ卿はごくりと生唾を飲み、考え込んでいる。


「その果実を貰い受ける為の条件を言ってくれ」


「エルフの住む所へ行きエルフと直接話しを聞きたい。それと若返りの薬を4つが欲しい」


「分かった。今から知らせに行き明日の朝にはエルフも来るだろう。それでいいか?」


「それでいい」


俺らは別れを告げて、明日の朝に又くることになった。

大型キャンピングカー内で、彼女らの話しはもっぱら若返りの薬だけで。


「はやく飲みたいわ。どんな味がするのかしら」


「薬は苦い程効くって言うわよ」


「苦いの嫌だよ。砂糖を入れて混ぜてもいい」


「アッキー、何バカこと言っているの、そのまま我慢して飲みなさい」




厳重な門を潜り、美しい花を咲かせる木の林を長らく歩いて進む。

俺達が知っている森や林と違う雰囲気がしている。

ラーズ卿に連れられて、小高い丘へやってきたが中央に円形状の台座があった。

直径5メートル程の台座で高さ30センチ程あった。


しばらく待っていた。

台座の上が光りだし、消えると白い肌の美しい人形が2体も立っていた。


「誰が果実を持っている」


鳥がさえずるようなか細い声が聞こえてきた。


「わたしが持っている」


「我々の言葉が話せるのか?」


俺はこくりと頷いた。


「話しの内容を受入れよう。その前に見せて貰いたい」


俺は何もない空間から、ケースを取り出すとケースを開けて見せた。


「ミラー様、間違いありません」


ミラーと呼ばれた女性は、涙を流して手で口をふさいでいる。


男が手を伸ばすので、ケースを閉めてすばやく収納。


男は口惜しい顔で手をゆっくりと戻した。


「この台座の来るように、エルフの里へ連れてゆこう」


「皆、台座に乗れと言っている」


皆は、口を開けて見ていた。さっぱり言葉が分からなかったみたいだ。

【会話君】が機能しない言葉だった。

やっと正気戻ったようで、ようやく動き出した。


「これに乗るの」


「わしも一瞬で消えてしまうのか?」


「トロス、心配するな俺達が付いている」


「そうか、そうだな」


「6人も連れて行くのか?」


「そうだよ、これが条件だ」


「ミラー様、よろしでしょうか」


女は目を閉じた。

光り輝くと7色の光りが交互に照らされて消えた。

そこはあの丘ではなかった。



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