第34話最終審査




これがオークション出品の列なのか、紐を持って男や女が幾重にも長い列を作っている。

予備審査で時間もさほど掛けない、出品の品を見せて説明するだけ。

5人の審査員で3人がOKをだすと、次の審査に移るらしい。


それを考えても半日はかかりそうだ。

トロスが最後尾の紐を持って、手招きをしている。


「え!誰か1人が持って順番待ちすればいいのか?」


「トロスが持っているから、あなたが1番目の当番ね」


「え!それならトイレに行かないともれしまうぞ。緊張するといつも起きるので困ったもんだ」


「仕方ないわね。行ってらっしゃい」


文句を言いながらアッキーが交代して、き立てながら走るトロス。

トロスがドスドスと走る後ろ姿が、紅茶を出している店に消えたので。

アッキーはヘッドホンを耳に当てて気に入った曲を、タブレットから流しはじめる。

長時間立つのも辛いだろうと、折りたたみ式椅子を出して座るようにすすめる。


「この椅子、折りたためるんだ。それに軽いね」


そう言って座ると、又も曲に集中して聞いている。


【折りたたみ式椅子】2295円。

素材   アルミパイプ

重さ   280g

耐荷重  100kg


既にアッキーの後ろにも列が出来始めていて、俺らは邪魔な存在になってしまう。

少し離れて見ていても仕方ない。アッキーに紅茶店で待って居ると言って離れた。


4人でテラスに座り、紅茶を頼んだ。

運ばれた紅茶を飲むと、渋い紅茶で飲めた物ではない。

店主を呼び、言ってやった。


「この紅茶は渋くて飲めた物でないぞ」


「何を言い掛かりを言うんだ。昔からこうやって飲んでいるぞ」


「ならば美味しい紅茶を入れてもいいか?」


「やれる物ならやってみろ」


俺は計量スプーンでここの茶葉を2グラムを計り、お湯の入ったポットの湯を捨てて茶葉を入れた。

沸騰したお湯400ミリリットルをポットに注いだ。

腕時計で3分を計る。ティーカップのお湯を捨てて、ポットの紅茶を注いだ。


店主にティーカップを渡して、皆のティーカップにも残りを注ぐ。


「あ、甘く感じる。これが同じ茶葉で入れた物なの」


「信じられん、紅茶は渋い物だと思っていたのに・・・すまなかった。もう1度教えて欲しい」


「分かった。みっちりと教えて進ぜよう」


それから猛特訓して、美味い紅茶を出せるようになった。

3分の砂時計をマスターした証に与えた。


その後、この店は多いに流行り、支店を各国に作ることになる。



しばらくしてシランが紅茶店に入って大きな声で話した。


「第1審査は通ったわ。2時間後に中間審査だと言っているわ」


「拳銃はここでも始めての商品の筈だから、絶対に最終審査にも受かるわ」



まだまだ特訓を続ける紅茶店で、時間が来たので別れを告げる。


「師匠!絶対にこの味を守っていきます」


「修行には終わりがないからな、頑張れよ」



そう言って、中間審査に挑んだ。

用意していた甲冑を置くと、アッキーが100メートル先から全弾撃ち込んで全弾命中。

5人居る審査員が全員がOKをだした。

明日が最終審査で、オークション出品の予備審査も今日で終わりだった。




朝早くから出向き、37人の代表が次々と審査で不合格を出している。

ラーラ国の重鎮の1人とラーズ卿の2人が審査員でどうも厳しい。

最終の俺とアッキーが登場して、俺が新たな甲冑を置く。

アッキーが100メートル先から全弾撃ち込んで全弾命中。

俺が甲冑を持って審査員の前まで持ってゆく。


ラーラ国の重鎮は、


「素晴らしい攻撃力だ。あの甲冑が穴だらけで本当にいい品だ」


「わたしは認められませんな」


「何故なんだ。わしには分からん」


「お忘れですか?【火砲】の存在をあれに比べれば小さな威力です。くだらん魔道具だ」


「少し待って下さい。これは魔道具でなく武器です。魔法は一切使いません。なので魔法疲れがありませんよ」


「貸してみろ。出ないでぞ」


「ここに新たな弾丸を入れると撃てます。どうぞこの引き金を引いて下さい。衝撃があるので気を付けて下さい」


「わしが撃とう。わしは魔力が極端に少ないから打って付けだろう」


あたらし甲冑を30メートル先に置いて、固唾を呑んで見ていた。

最初の1・2発は外したが後は命中し続けた。


「凄い衝撃だな、慣れないせいか弾が上にそれてしまった」


「わたしにも撃たせて下さい」


外すことなく全弾を命中させた。


「これが参加メダルだ。大事にするように」


アッキーは俺に抱きつき喜んでいる。



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