第38話漂流者




今回の婚前旅行も終わり、大型ヘリで我が領土に向かって飛び続けている。

領土には、新たな住人の入所が増えて、住む家が不足していると報告も受けている。

建築大臣リントからの電信が何度も来ていると連絡も受けていた。


「何かが浮かんでますね・・・あれは漂流者です」


「ほんとだ。ララ、右側よ」


「了解」


「ララ高度を徐々に下げて」


「了解」


金具で確りと固定された事を確認。

アッキーはハーネスを着込んで確りと固定。

そして安全フックを取り付けて合図を送る。


アッキーが吊るされた状態で、ヘリのサイドドアがスライドして大きく開く。

そしてアッキーは手動で操作して、スルスルと降下。

そしてハーネスで固定したのだろう。


スルスルと上昇してきた。


「まだ1人居るわ」


びしょ濡れの女の子を引き入れて、ハーネスの固定を解除。

再度、下に向かって降下。


そしてもう1人の男の子も救助。

シランはバスタオルで拭きながら、息をしているか確認していた。


「こっちは生きている」


「こっちも生きているぞ」


「濡れた服を脱がした方がいいだろう。新しいバスタオルだ」


脱がして途中で手が止まる。


「この子らは、成人かもしれない」


女の子は膨らむところは、しっかりと膨らんでいた。

男の子もしっかりした物を持っていた。


ユーラ大陸で購入したポーションを、ユナが器用に飲ませ2人はようやく気がついた。


「ユーナ、大丈夫だったか?」


「わたしは大丈夫よ、あなた」


2人はバスタオルに包まって、抱き合っている。

そしてようやく周りに人が見ていることに気付いた。


「あなた方は、誰ですか?」


「それは、こっちが聞きたい。君らは海に漂流していたんだ」


「そうよ、わたしが助けたのよ」


「あ!・・・助けてくれてありがとうございます」


「何故、海に漂流していたの心配しないで話してごらん」


「わたしらはノームと言う種族です。農業労働者として国を船で移動中に海賊に襲われたのです」


「すると君らは、海に逃げたのか?」


「はい、大勢の仲間が捕まっているでしょう」


「それは、何時いつだね」


「そんなに長く寝た記憶はありません」


「ララ、捜索してくれ」


「了解」


皆は双眼鏡で周りの海を見続けた。

しばらく飛行し続けていた。


「レーダーに反応。ここから10キロ先です」


すぐに大型ヘリは向かい、ノームの男に双眼鏡を覗かせて船を確認させた。


「あの船に間違いありません。あの帆のマークを覚えてます」


大型ヘリが帆船に近づくと、アッキーは睡眠弾を甲板に3発も撃ち込んだ。

そして開いていたドアの中にも正確に3発も撃ち込んだ。


甲板に居た海賊達は、ふらふらと倒れだした。

防毒マスクを被り、アッキーがスルスルと降下して乗り込んだ。

手を振って降りて来いと合図をしている。


「どうする君らは、ここから降りるのは恐いが仲間を確認する必要がある」


「行きます。行かせて下さい」


「わたしも行きます」


「シランとユナで2人を連れて行ってくれ。ララとトロスは領土へ帰ってくれ」


「わたしとトロスだけが居残りですか?」


「仕方ないだろう。あの帆船には大型ヘリは下りられないだろ」


「分かりました。トロスと2人で帰ります」


「わしも船に乗り込むぞ」


「恐くないのか?」


「恐いが、海賊相手に数が少ないからな、手助けは必要だ」


「トロス、ありがとう」


ララだけが淋しそうな顔をしている。



海賊達は拘束バンドで締め上げて、そのまま転がしておく。

船内に浸入して眠りこけている海賊を見つけては拘束しておく。

中には眠ってない奴が居たので、腹に蹴りを入れて拘束。

船底で見つけたノームは動物の扱いみたいに足に鎖で繋がれていた。

今は眠りこけているが、狭い棚に物を入れるように寝かされている。

ここは洗ったことが無いのだろう。悪臭が漂っていた。


寝ているノームを1人1人、鎖から解放して甲板へ運び込む。

新鮮な空気を吸えば、早く回復するだろう。

あの2人もせっせと働いていた。


残ったメンバーで帆をどうにか下ろした。

異世界の【帆船の操縦方法】の本が参考になった。

海賊の拘束をといて、操作させる手もあるが絶対に反撃するだろう。

何故なら、捕まった海賊は死刑が当り前であった。


俺は海に小型ボートを出して、丈夫なワイヤーで帆船をえい航してゆく。

久し振りに操縦することになったが、エンジンは順調に動いている。

行き先は我が領土。



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