第24話サイラス沖の海戦




あれから1ヶ月が経過。

空母ララに、ララが艦長と火砲手を兼ねる事となった。

【超火砲】を撃ち出す為には、思っていた以上に無系のマナが必要だった。

計測結果でララだけが撃てる砲手であると判明。

彼女は空母にとって必要で最強の【超火砲】を捨てる訳にはいけなかった。


そして我が領土でも戦闘経験も多く、指揮も出来る人材がララがもっとも適任と判断して艦長に任命。

その彼女が10日間の猛訓練をさせていた成果を確かめる日がやって来た。


貿易関係者の情報で、帝国が大量に食料を購入し、臨時兵の募集が急に止まり。

そして極め付けは、我が領所属の商人が商談している隣の席で、敵国の指揮官が酒を飲んでポロリと話した情報だった。

3日後に又、帝国がサイラス貿易港へ強襲する情報を安易に手に入れた。


前回の戦いを踏まえて、帝国側も色々とやっていたようで。

なんでも【火砲】を真上に撃てるように改良されて、改良された数は50隻。

戦う日程が決まったせいでそれ以上の改良が間に合わなかった。

そして船の総数は200隻で来るらしい。


しかし、あの時のヘリは船を近くで見る為に低空で飛んでいた筈で、高く飛んで行けば対応出来るのだろうか?

何故ならば、ここでも試しに真上に撃ち出すこともやって見たが、相当のマナエネルギーが必要だった。

それに増して動く飛行物体を目視で確認して、重い【火砲】をすばやく向きを動かすのは相当きついと思われる。

飛行物体は船より速く飛んでいるのだから、船と同じように考えてはいけない。



「サイラス貿易港へ向けて出航」


操舵室で電気モーターの始動スイッチが入れられると、空母ララが動きだした。

機関室には、確認や整備する人員は5名のみ。

操舵室も5名のみで運航されている。

人員の見直しで艦の運航と攻撃担当員で100人。

ドローンパイロット20人と整備兼誘導員8人。

従来の乗員数1000人を比べても、凄い削減数であることに間違いない。



今回の作戦は帝国が沖合いに停泊した時に、海軍と歩調を合わせて強襲をかける。

空母ララは長い射程から【超火砲】で攻撃を仕掛ける。

近づく帝国を横合いから海軍が更に強襲する作戦。

艦載機のドローンは魚雷を積んで、帝国の【火砲】の射程外から魚雷を発射する予定だ。

帝国側には捜索レーダーが無いので、隠れていれば空母の存在もばれることはないだろう。


俺とララとユナが食堂で食事をして、明日の決戦に向けての最後の打ち合わせをしていた。

そこへ兵達が食堂に入って来て、食べながら話しに夢中。


「このカレーて旨いな」


「そうだろ、俺なんか土産にカレールーを10箱も買ったよ」


「作り方を知っているのか?」


「キッチンで作る作業を見せて貰らったんだ」


「それはいいことを聞いた。俺も土産に買うぜ」




ついに商業大臣ケランから帝国が230隻が来たと知らせが電信で届いた。

国王の命令でようやく空母ララは、サイラス貿易港に向けて動き出した。

オーランド王国からは拿捕だほした2隻と小型船3隻の海軍が参戦予定。


しかし着いた時には、拿捕した1隻が沈みかけており、多くの乗組員が海上の浮き輪やボートで逃げている。

どうやら正面で撃ち合ったようで、正面だと2門しか撃てない。

大型船2門×2隻=4門・小型船1門×3隻=3門・合計7門での攻撃でしかない。

サイラス貿易港でも10門でやっと防いでいるのに、広い所で7門で防ぐことなど出来る筈もない。

船を横にむけての撃ち合いならば、14門で撃ち勝てたかも知れないが、今は惨敗。


「俺らと何故一緒に戦わない」


操舵室で地図を置いた机に、コブシを叩き付けた。


「領主さまの活躍をねたみ、焦った行動だと思います」


「妬みをこの戦いに持ち込んでどうする」


「領主さま、それが人間と言う者なのです」


「分かった。ララは2門の撃つ準備をしてくれ」


ララは砲手を勤める為に操舵室を離れてゆくと、副艦がその任に付いた。

2門しか扱えないが、射程距離を活かしてララは撃ち始めた。

デジタル望遠鏡を使い、【超火砲】が正確に船に命中。

次も命中して、更に命中し続けている。


「ドローン隊、準備は良いか?」


「いつでもOKです」


「【超火砲】の邪魔にならない南西方面から魚雷攻撃をしてくれ。発艦を許可する」


「ドローン隊、発艦します」


静かにドローン隊は1機が飛び立つと、艦上の係り員が次のドローン機に合図を送り飛び立ってゆく。

俺は小型ドローンから送られる動画を、モニターに映しながら操作して空高く飛ばす。

行き先はドローン隊が向かった南西方面。


低空モードのドローンから魚雷が落とされ、海面に魚雷の影が敵船に向かって真直ぐに進んでゆく。

進んでいる先を拡大して見ていると、船の側面中央に見事に命中して水柱が高く舞っている。

そして突然船が2つに折れて海中に沈むまでに10秒も掛からなかった。


あ、隣の船は船尾が沈み船首が真上に上がって一気に沈んだ。


敵方も何故船が水柱が舞って船が沈むのか不思議だった筈だ。

魚雷の存在を知らなければ、恐ろしい魔法攻撃を受けていると思っているだろう。


先程までの優勢な戦いが、一気に逆転して戦勝気分が敗戦気分に。

見方同士で船首をぶつけ合う船も続出。


2面方向からの攻撃の為に逃げることもかなわなかった。

それでも統率が取れていれば、まだ助かる術は有ったが混乱して船の向きがばらけてしまってはダメだった。


そして今日、帝国の船は5隻を拿捕して残りは海に消えた。



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