第25話貿易協定




作戦本部での会合中に様々な意見が出た中で俺が述べた意見が大方通ってしまった。

集まった領主も表だって反対することも無く会合も進み、俺の知らなかった派閥をこっそりと教わった。

この国は、軍部と宰相とバレイ領主の3つの派閥があり、俺はバレイ領主に加えられていた。

軍部が最大派閥だったが、今回の件でバレイ領主へ乗り換える者が続出した為に、バレイ領主が最大派閥に成っていた。

今回の会合は海軍の失敗で軍司令官すら会合にも参加させて貰えなかった。



その為、今は国王と宰相と俺で話し合っていた。


「今回の賠償請求を帝国にすべきです」


「そう簡単に飲むのか?」


「飲むように正確な情報を与えるのです。今回も来たのも向こう側の軍が嘘を並べて報告したに違いありません」


「軍がそのようなことをするのか?」


「国王さま、申し訳ございませんが我が軍も同じです。我らを待たずに何故攻めたのでしょうか?」


「そうだった。何故作戦通りにしなかったのだ宰相」


「多分プライドがさせたと思います」


「プライドだと、この国の一大事にそのプライドで負けでもすれば、ワシや国民はどうなるのか考えたことはないのか?ワシは決して許さんぞ」


「国王さま、話しを戻しても宜しいでしょうか?」


「あ、すまぬ。続けるように」


「今回拿捕した乗り手の平民兵に、今回撮っておいた動画を見せて言い含めます。そして帝国に返してその者を交渉相手の1人に指名します」


「そんなに都合のよい人間が見つかるのか?」


「それは宰相の得意分野ですので恩恵ですぐにでも見つけるでしょう」


「宰相、そうなのか?」


「仰せの通りです」


「分かった、宰相に任せるぞ」


「はは、かしこまりました」


「国王さま、賠償はリクート国を望めばよろしいかと存じます」


「リクート国か、あの国には姉が嫁いだ、今はどうしているだろう」


「帝国も落として間もない為に、今がチャンスでございます。王族も存命していると情報も入っています」


「宰相はどう思う?」


「それで良いと思います」



後は宰相に任せて、リクート国へ平民兵全員を送られるだろう。

帝国に帰った平民兵はどうせ噂として帝国中にその噂は拡散されると、俺は予想している。

そして宰相にもしも上手くいかない場合は報告して貰うように頼んだ。

上手く解決する方法を俺がすると言っておいたので、上手くいかない場合は必ず報告してくれるだろう。



トニー領都からミラー湾岸都市の間を人材を投入して、線路がようやく開通出来たのが昨日のことだった。

大勢の人達を乗せて電車が走ってゆく。電車以外にも貨物列車も頻繁に走りミラー湾岸都市から海外へ品々が運ばれ売られている。

今もドッグで造船中で、その船が新たな航路を開いてくれるだろう。

そして新たなドッグか建設中で、このドッグで駆逐艦を造船する予定。


我が領土で鉱山開発が進み、高炉も作られ高品質な金属が続々と作られている。

異世界の高炉は、ここの高炉のはるか上の存在で携わる人すべてを驚かしている。



そして20日後に宰相より電信で、帝国の賠償が物別れに終わりそうだと言われる。

兼ねてから計画を練っていた俺は、実行する時期と判断。


「通信兵!空軍に伝えていた【帝都への道】作戦のGOサインを送れ」


「かしこまりました閣下」


今の時間だと訓練前なので、すぐに準備が整い帝都に向けて飛び立つだろう。

既に100機のドローン機が完成。

その中の30機が、今回の作戦に使われる。


15機が帝国が使っただろうと推測される航路を、横一列に編隊飛行して高性能カメラで動画を撮ってゆく。

これを使って、海図を作成する予定。

この世界では、正確な海図が存在していなく、基本的には海岸を沿って陸地の目標で船を運航している。


我が領土はそんな運行を行なわず、魔道具の【道しるべ】を使用して別の大陸と貿易を行なっている。

ミラー湾岸都市の【道しるべの印】を中心に【道しるべ】は緯度・経度を表示してくれる。


これにより今は正確な海図を作成して貿易国を新たに開拓している。

外国の会話は魔道具の【会話君】が通訳をしてくれるので楽に交渉ができる。



残りの15機も、帝国が進行してきた陸地を、同じように編隊飛行して地図作成の資料にする。

我が国が知らない国は、重点的に都市や道を調べて来てくれるだろう。


「閣下、今の報告では帝国が見えたそうです」


「モニターに出してくれ」


巨大モニターに高い壁に囲まれた帝都が見えてきた、すぐ近くに整備された湾内には商業船10隻程が接岸している。

そして帝都の中心に堅牢な城が美しくそびえ建っている。


帝都を中心にカメラの映像が映し出され、城をズームするとベランダで着飾った女性がこっち指差して叫んでいる。

しばらくすると衛兵が数人がこっちを見上げている。

このタイミングで、紙が大量に空にまかれひらひらと舞っている。


あの紙には、【賠償しなければ、その報いが早急に襲うだろう】と書かれている。

具体的に書かれてないので、色々と言い訳も出来るようにしている。



10日後に、宰相の下にリクート国を賠償代価として渡すと返事かあったそうだ。

俺は宰相に色々と本に書かれていたことを助言しておいた。

2国間での協議の場で叶えられない内容の条件を突きつけて脅し、それより低い妥協案を相手に出させるように仕向ける方法。


そのおかげで国が有利な貿易協定が結ばれた。


味を占めた宰相は、リクート国の隣の国も賠償代価に加えることに成功。



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