第6話ラックバードを射る




ギルドの窓口に麻袋を置く。

この麻袋から結構臭ったので、池に浸けたり出したりして洗って来たので今は臭わない。

サニーは手袋をして、顔に布を巻いて必死に数えている。


「123体倒したのね。合格よ」


指輪を取り出し、何やら丁寧に刻印をしている。


「今度からBランクの依頼には、その指輪にインクを塗って書類に押すのよ。それがあなたの印になるわ」


「分かった」


「これが今回のあなたの報酬よ」


金貨2枚が渡された。


俺は金貨1枚だけ受取った。


「それでくず魔石の買取依頼を頼みたい」


「分かったわ。この金額だと30日後ぐらいに来てくれる」


目の前で書かれた依頼契約書を手渡され受取った。



我が家に帰ったら、フェンスに絡まったツタにジョウロで水やりをしてゆく。

森から持って来たツタをフェンス沿いに植えた。

その際、異世界の腐葉土と科学肥料を混ぜて、ツタの栄養として与えた。

それが1日で成長著しく、金網のフェンスをおおい尽くした。

2メートルまでツタが茂っているので、中の家も外から見えない様に茂っている。

ここまで成長すると何故か愛着もわいてきた。

いまでは土壌が乾いたか、手で触り確認している。

ツタの世話は終わったので、次に取り掛かる。



屋根にハシゴを掛けて上ってゆく。

太陽の日の出から沈むまで、こっち側の屋根が日光を浴びる事は確認済み。

異世界通販から太陽光パネルを取り出し、位置を決めて固定して行く。


異世界の情報を知れば、電気の必要性を大いに感じた。

始めは、子供でも分かる電気で勉強。

今では第2種電気工事士の勉強をしている。

充分理解したので、太陽光パネルに取り掛かっている。

間違いで感電死もあるので注意が必要。

最短ルートで電気ケーブルを家内にいれて、バッテリーに繋いで完了。


予備の【インバーター発電機】57500円も購入済み。

コイツは壊れにくく、ハイパワーで簡単操作で超低騒音の優れもの。


これでやっと電気を使用出来る環境になった。


夜になるとLEDの照明が明るく部屋を照らしている。

ランプやろうそくの明かりと違って、部屋全体を照らしている。

1時間以上眺めたが、そろそろ寝よう。

その為、LEDの照明スイッチをプチッと切りして消す。

外には赤外線センサーが張り巡らされて、魔物が来れば音が鳴り分かるように成っている。

なので安心して眠れる・・・




マウンテンバイクで悪路をひた走る。

そして辿り着いたのは、ラックバードが生息するオニヤンの森。

ラックバードは警戒心が強く、普通の狩り人では仕留める事もできない。

今回は1羽でいい依頼で報酬も金貨5枚。

何でも貴族の花嫁が羽毛1枚を付けて結婚すると、幸福になる昔話を今でも信じている。


俺は迷彩テントの中からコンパンドボウを左手に持ったまま待っている。

右手には双眼鏡で見える範囲で見続ける。


ラックバードの個体数も少なく、見る事も珍しいと言われている。

外は日が暮れだし、どうやら一夜を過ごす羽目になった。



朝、目覚めて外を見るとラックバードが飛んでいた。

急ぎコンパンドボウを構えて、矢をつがえて狙いを定めてタイミング良く射る。

胴に当たり、落下してくる。

マウンテンバイクで駆け走り、落下地点に到着。

首を半分切り、血抜きをする。


周りに何か緊張が走る。

ラックバードを腰に括りつけて、ガサと音がした瞬間にマウンテンバイクで走り出す。

マウンテンバイクに備えた矢は6本だけで必死に走る。


追い駆けているのはレッドベアーで、口から火球を吹き出した。

ハンドル少し右にしてかわす。

横を通り過ぎる火球。左ほほに熱風を感じる。


充分に距離を取った。振向いてコンパンドボウで射る。

肩に命中するが、レッドベアーの毛は固いので有名。

それでも左肩から血が流れている。

若干スピードが落ちた。

もう1度、狙いを定めて射る。

右目に刺さり、咆哮ほうこうが聞こえる。

もがきながら立ち上がり、両手で矢を取ろうとするが更に傷を広げることになる。

もう1度、矢をつがえて狙いを定めて渾身の一矢を射る。

咆哮する口の中に命中。後ろ向きに倒れるレッドベアー。


マウンテンバイクで近づくと、矢は頭を突き抜いていた。

レッドベアーの胆のうは極レア。

腹をナイフで切り開き、中心部を少し切りながら探す。


「あ!魔石だ。するとこれが胆のうか?」


特別なケースを取り出し、開いて準備をする。

慎重に胆のうを切り取って、ケースの衝撃吸収材の中に入れる。

それを異世界通販のボックスに戻す。


これは何でも裏技と言うヤツで、ゲームの世界では当り前らしい。

ラックバードも同じように収納。


魔石は1個20万円もした。


ハラハラした鬱憤うっぷんを晴らす様に「バーラーの町へ帰るぞーー」と叫んだ。



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