第13話
会議室。
白衣の人物たちが、円状に席につき話し合っている。
だから言ったじゃないかと、誰かが声を荒げた。
被験者を外に出すべきではなかった。中に留めておくべきだったのだ。
失敗だったなと、別の誰かも続ける。
一週間以上まともなデータが取れていない。これ以上空白の期間が続けば、実験だけでなく計画に支障がでる。
もっといい対応はなかったのかと非難を込めて発言され、今度は誰かが反論する。
被験者の精神状態はあの時限界に近かった。あれ以上施設内に閉じ込めていたら、それこそまともなデータはとれなかっただろう。実際、あの日までのデータも揺らぎが大きい。そんなことよりも、被験者の外出が警告されたのにもかかわらず、被験体管理を怠っていた第一セクションの体制を見直すべきだ。
我々の管轄ではなかっただろうと、また誰かが声を荒げて場は騒然とする。
どのセクション、研究室にしても事態は最悪だった。唯一の被験者である泉悠己からデータが取れなくなれば彼らの計画は破綻する。すでに彼に取り付けたタグから送られてくるデータは変動が激しく、もはや使い物にならない。
議論は行き詰まり、その度に沈黙が訪れる。誰もが打開策を探していた。苛立ちを隠さない雑な手つきで資料をめくる音と、誰かが足を忙しなく揺する音だけが全員の鼓膜を揺らす。
静寂を破ったのは、しわがれた声だ。
それならもう会わせよう。
一気に視線を集めた誰かは、楽しげに笑いながら続ける。
計画は続行する。ただし、被験者と被験体を引き合わせよう。あれは結局善良な人間だから、曲なりにも命を無下に扱うことはできないだろう。不都合があれば私が説明するよ、と。
驚愕の後、緩やかに同意が波紋のように広がった。
嫌な役を押し付けられた誰かは渋い顔をしていたが、それでも最後にはこの案に同意した。
スープをなめて、それすら吐き出したユウキが体力の限界を迎え眠っているうちに、彼を乗せた計画は次の段階へと滞ることなく進んでいた。
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