13 橙と傷④
優奈さんの問題がきれいに解決したわけではない。
支えてくれたという事実が雪帆の足を止めさせた。
人に言えない秘密なんて誰しも持っていることだ。
それですまないことだったけれど、きちんと話し合って雪帆は答えを出した。
目の前で課題をこなす綾斗を見て、自分で出した答えが正しかったと思う雪帆。
「ねえ綾斗、ここどうすればいいの」
「……ん?」
「ここの問題」
「……わかんね、答え見て」
「そんなの持ってないよ」
「お前いつも持ってんじゃん」
いつも。
綾斗が言ういつもってどのことを言っているのかわからない。だって、雪帆は答えを持ってすらいない。手元にないのにどうやって見ろというのか。
「……いつの話?」
「あ、ごめん。違う」
違うってなに。
ねえ、今誰と話してた?
「ごめん雪帆」
ごめんって。
「なんで、ごめんなの」
「……」
なにか言ってくれればいいのに、綾斗は口を開かなかった。
なんだか疲れた。
そんな思いが雪帆の中にずっとあった。気づかないうちに雪帆は気を張っていて、綾斗のまわりで空回りばかりしていた。
学校に来ることが少なくなっていった綾斗。
そうすると自然に、雪帆は一人で帰ることが多くなる。理由を聞いてもなにも言わずにごまかす綾斗。このままじゃ雪帆はどうにかなってしまいそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます