13 橙と傷④

 優奈さんの問題がきれいに解決したわけではない。


 支えてくれたという事実が雪帆の足を止めさせた。


 人に言えない秘密なんて誰しも持っていることだ。


 それですまないことだったけれど、きちんと話し合って雪帆は答えを出した。


 目の前で課題をこなす綾斗を見て、自分で出した答えが正しかったと思う雪帆。


「ねえ綾斗、ここどうすればいいの」


「……ん?」


「ここの問題」


「……わかんね、答え見て」


「そんなの持ってないよ」


「お前いつも持ってんじゃん」


 いつも。


 綾斗が言ういつもってどのことを言っているのかわからない。だって、雪帆は答えを持ってすらいない。手元にないのにどうやって見ろというのか。


「……いつの話?」


「あ、ごめん。違う」


 違うってなに。


 ねえ、今誰と話してた?


「ごめん雪帆」


 ごめんって。


「なんで、ごめんなの」


「……」


 なにか言ってくれればいいのに、綾斗は口を開かなかった。


 なんだか疲れた。


 そんな思いが雪帆の中にずっとあった。気づかないうちに雪帆は気を張っていて、綾斗のまわりで空回りばかりしていた。


 学校に来ることが少なくなっていった綾斗。


 そうすると自然に、雪帆は一人で帰ることが多くなる。理由を聞いてもなにも言わずにごまかす綾斗。このままじゃ雪帆はどうにかなってしまいそうだった。

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