第22話 ウェバーの友人

そういえば、ミリアを取り巻く男達の中にサザン出身の奴が1人いた気が…確か…


「陛下?」


「済まない。少し考え事をしていた。」


私は今、ウェバーの客と話をするべく、部屋に招きお茶を飲んでいた。


「大事な話をしていたのに何故!?」


ウェバーは少し興奮気味に私の肩を掴んでブンブンと激しく揺さぶった。


「こら!ウェバー!陛下になんてことを!」


慌てて客人が止めに入った。


「気にしないでくれ、サルター卿。ウェバーの奇行はいつもの事だ。」


ベルの記憶で見たウェバーは本当にいつもこんな感じ。でもベルはそんなウェバーが好きだった。


「そうだぞ我が友。ベルはそんな私の事を好いてくれているのだからな!」


そして、本人にもそれは分かっていた。


サルターはハハッと苦笑いしてお茶を1口飲んだ。


「サルター卿、今日はそなたに頼み事がある。」


「何でしょうか?」


「これだよ我が友。」


私が話そうとした時、横からウェバーがダンから取り出したあの盗聴器を出した。


「こちらは?」


「とある事情があってね。この盗聴器見たことあるか?」


「…いえ。これは、外国製の物ですか?仕組みが特殊ですね。」


「だろう!」


あ、これは二人の世界に入ってしまうパターンだ。


そう悟った私は、二人の会話を静かに聞くことにした。


「どこでこれを?」


「それは言えん。分かってくれ。」


「…なるほど。てことは、正規ルートではありませんね。で、頼みと言うのはもしや。」


「そうだ!外国との商売を得意とする我が友、いや、我が親友にこれの出処を突き止めて欲しい!」


意気揚々とドヤ顔で決めポーズまでして言うウェバー。

ほんと元気だなこの男。


「ですが…。」


サルターは私をチラチラと見て何やら言いにくそうにしていた。


「どんな手を使っても、そなたを罪に問うことはせぬ。報酬も用意する。だから、頼めるか?」


私がそう言った瞬間、サルターは目を輝かせて、


「もちろんです!」


とウェバーよりも大きな声で返事をしてくれた。


「では、あとはウェバーに任せる。サルター卿、ありがとう、私はこれで失礼する。期待しているぞ。」


私はそう言って、カップに入っていた残りのお茶を飲み干すと、部屋を出た。


時計を見ると、ハレルドとシェルジオが出てから3時間も経っていた。


私は用意されていた愛馬に乗り手綱を握り走らせた。


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