第20話 元気な夫

夢を見た。


花畑で私と男の子2人が走り回っている夢。


背はまだ小さくて、走っても走っても中々前に進まない。


それでも私たち3人は走っていた。

笑いながら楽しそうに。


その中で一番遅い私。

一番後ろにいる私。

一番遠い私。


それでも楽しかった。

だって、あの二人が止まって待ってくれてるから。


「陛下。お目覚めですか?」


目を開けると見覚えのあるメイドが優しく話しかけてくれた。


「おはよう、クレア。」


「おはようございます。昨日は取り乱してしまってすみません。」


「良い、むしろ長い間世話をかけて悪かった。」


私が体を起こし頭を下げるとクレアは駆け寄ってきた。


「とんでもございません!頭を上げてくださいませ!」


クレアは私の手を握ってまた涙を浮かべていた。


「泣くな。ただでさえ目が腫れているのに。せっかくの綺麗な顔が台無しだぞ。」


私も手を握り涙を指でサッと拭うとクレアは余計泣き出した。


いよいよどうしようか困っていた時、扉が開き元気な声が響いた。


「やぁベル!昨日ぶり!調子はどう?手合わせできる!?」


「ウェバー。相変わらず元気だな。」


「もちろん!」


このうるさいくらい元気な男は旦那のウェバー。

剣の才能がピカイチでよくベルと手合わせをしていた。


泣いていたクレアはいそいそと私の服を準備し始めた。


「みんなはもう食堂に?」


「うん!ダンとスルガとシュフェル以外はね!」


「わかった。」


私はクレアから服を一色受け取るとウェバーに視線を向けた。


「…」


「…」


「…あ、私は先に行ってるよ。はやく来てね。」


星が飛んでる幻覚が見える…


やっと私の意思を汲み取ってくれたウェバーは、元気よく部屋を出ていった。


「相変わらずウェバー様はお元気ですね。」


「うるさいの間違いだろう。」


私は笑いながらクレアにそう返すとクレアも一緒に笑った。




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