第18話 コールというバカ
「あれは私が医者になるため、勉学に勤しんでいた時の事です。」
ラミアートは紅茶を3人分用意して大きなソファに私とノバレンを座らせると何故かその隣に座った。
いやほんとになぜ?
ソファに大人3人って、広いから窮屈ではないけども。
「あのバカ…失礼。コール・ディアンベル、クズ野郎と出会いました。」
あの上品さが消えたこのギャップ、悪くは無い。
「無能な彼は愚かにも医者を目ざしていました。愚かにも。あ、大事なことなので2回言っておきます。しかし、当然低レベルで馬鹿な頭は到底授業について行けず、それでも金だけはあった愚か者は裏で根回しして医師の資格を取得しました。ですが、実際に活躍できるのは腕が確かな者だけです。内蔵の仕組みもろくに知らないアイツは表では活躍できませんでした。」
「表では?」
「そうです。だから、裏の方に行ったんですよ。臓器売買のための人体解剖。」
私たちは息が止まった。
ろくに医師としての働きが出来ない奴が、解剖?
しかも臓器売買用の人体解剖…
「当時の友人から聞いた話だったので、関わらなほうが良いと思い無視してましたけど、ダンに関わりがあると言うなら話は別です。」
「そうだな。これは確実に女子供の行方不明事件に関係していそうだな。ノバレン、港の輸送船の確認を強化するよう伝えろ。」
まさか、主人公の身内が、しかも国の皇子であるコールが犯罪まがいなことやってるなんて知らなかった。
本ではそこら辺は何も書かれておらず、後に分かるのは、ミリアには兄が2人居て1人はベルの旦那。
もう1人は…原作が始まった時、既に死んでいた。
つまり、原作が始まる前にベルが殺したってことか。
ここからミリアの中でベルが悪役になるのか…
じゃあもしかして、コールを殺さなければ、恨みは薄くなる?
じゃあもう1人の兄であり、ベルの旦那でもあるシェルジオ・ディアンベルと離婚して帰ってもらえば…ミリアの恨みは完全に無くなって、悪役じゃなくなる?
ってこと?
『ダメだ。国同士の協定を結ぶ時に来た、いわゆる人質だ。国に返せば戦争がおきる。その前に、シェルジオは役目を果たせなかったと殺されるだろう。』
そうか…
『それについては後で考えろ。今は、行方不明者とダンのことを頼む。その、コールというバカはお前の判断に任せよう。』
「え!?」
私は思わず大声を出してしまった。
その声にびっくりしたノバレンとラミアートは心配そうにこっちをみた。
「さっさと伝えてこい!」
テンパった私はノバレンに理不尽に怒鳴ってしまった。
ごめん。ノバレン。
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