第14話 シュフェルへの頼み

ノバレンが2人の兵士と共に牢屋の中に入ってダンの全身縛り上げると、そのまま連れて行った。


ノバレンとすれ違いざま、小さく折り畳んだ紙を手に握らせる。


私はノバレンがその紙を確認してるのを見ると、そのまま地下牢を出て、ある人物の元へ向かった。


「入るぞ、シュフェル。」


「ベル!?」


返事も待たず部屋に入るとシュフェルは走って出迎えてくれた。


「急にどうしたの!?」


「頼みがある。」


「なになに!?」


「その前にまず、礼を言わないとな。」


私はシュフェルに頭を下げた。


「お前のおかげで助かった。ありがとう。」


シュフェルは異常なほど鼻と耳がいい。

だから料理の時、私の食事に毒が入っていたのを匂いで気付き私の膝に座ったり話しかけたりして食事を邪魔してくれていた。


「頭上げてよ!!皇帝が頭下げるとかダメだよ!!」


「命を助けられたんだ。頭くらい下げさせてくれ。」


私はより深く頭を下げた。


「もーわかった!!分かったから頭上げてー!」


シュフェルはオロオロしながら、私の頭を無理やりあげようとする。


こういう所が可愛いんだよなぁ。


「まぁ、おふざけはここまでにして、シュフェル、真面目な話だ。」


「さっき言ってた頼みの事?」


「そうだ。犯人のことはお前もわかってるだろうが…ダンだった。しかし、どうやら脅されているようでな、会話も聞かれているらしい。」


「…やっぱりね。どうせ兄弟を人質に取られてるとかでしょ?」


「知っていたのか?」


「いや、僕達って部屋が隣でしょ?前回ベルが毒を盛られて倒れた日の前日に、兄弟の名前呼んで泣いてるの聞こえたから。最初はただ恋しくて泣いてるだけかと思ってたけど、ベルが倒れた後明らかに様子がおかしかったし、だからダンが、誰かに脅されて毒を盛ったんじゃないかなって。証拠が無かったから誰にも言ってなかったけど。」


隣の部屋の声も聞こえるって、それは凄すぎる。


「なるほどな。では言わずともわかるとは思うが、ダンの兄弟を助け出してきて欲しい。バレないようにな。」


「ちなみに場所は?」


「コール・ディアンベルが扱う奴隷商店のどこかだ。」


「コール・ディアンベル!?それってまずいことにはならないよね!?」


想像通りの反応。

コールが居る国は帝国の傘下には入ってないが同盟を結び手を出さないと約束した仲だった。


しかし、帝国の影撃隊(えいげきたい)、影で動く部隊、(分かりやすくいえば忍者?)の隊長であるシュフェルが向こうのお偉いさんの問題に自ら首を突っ込めば、先に手を出したと言われかねない。


だとしても、単独行動を得意とするシュフェルにしか頼めなかった。


普段はバカっぽく振舞っているが、身体能力も、頭の良さも、人一倍良い。


「最悪、戦争かもな。けど、もしかしたら最近行方不明者が多発している件と関わりがあるかもしれないからな。頼む。」


「ベルがそれでいいならいいけど、失敗しても僕を攻めないでよ?」


「失敗するのか?」


「まさか、ササッと済ませてやる!で、帰ってきたら僕とも2人で旅行だからね!」


聞かれてたのか。


「ははっ!仕方ない!これはお前にしか頼めないし、その分の褒美は必要だな!どこに行きたいか考えておけよ。」


「やったー!じゃあ早速、今から行ってもいい?」


「今からか?場所はわかるのか?」


「大丈夫。鼻と耳があるからね!じゃあ、行ってきます!ベル!」


そう言うとシュフェルは短いナイフを2つだけ服の内ポケに差し込み窓から出ていってしまった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る