第9話 出来る夫
賑やかな食事が終わり私は1人の夫の元へ行った。
皆はそれを見るとワイワイと騒ぎながら食堂を出て行った。
本当に気が利く。
「悪いなスルガ、毎回頼んでしまって。」
「大丈夫。俺に出来るのはこれくらいだから。」
そう言ったスルガはフイっと顔を背けた。私は思わずスルガの頭を撫でる。
「帰って来たら2人でゆっくり出掛けよう。泊まりもいいな。どこか旅行にでも行くか?」
私がそう言うと、スルガは一瞬動きが止まったが直ぐに笑って立ち上がり、逆に私の頭を撫で始めた。
「そうだね。みんな拗ねちゃうかもしれないけど、俺が1番ベルと離れてる時間多いし、たまには二人の時間貰ってもいいよね。」
「もちろんだ。皆も分かってくれるさ。」
「うん。ベル。」
「ん?」
名前を呼ばれ返事をした時、スルガに力強く抱きしめられた。
「良かった。ベルが生きてて。俺にはベルだけだから。」
スルガはそう言うとさらに強く抱き締めた。
少し痛かったけど、スルガの手が少し震えていることに気づいた私は、そっとスルガの背中に手を回し笑った。
「ははっ。スルガを泣かせるのは私だけの特権だな!」
「泣いてない。」
「じゃあ顔を見せろ。」
「嫌だ。」
「はははっ!可愛いヤツめ!」
私はスルガの頭をワシャワシャと乱暴に撫でまくった。
ベルリアの記憶が流れてくる。
ベルリアが倒れたのはスルガが偵察に向かってすぐだった。
国のためには、成果無しで帰る訳にも行かず、直ぐに駆けつけられなかった。スルガはそのことをずっと気にしていた。それを私は、目が覚めたあの日から気づいていた。
だから、本当は偵察に行くのも渋るかと思っていた。
けれどスルガは自分の役割の重要さをしっかり分かっていた。
本当に出来る夫が居るものだ。
本当は離れたくないはずなのに、それでもベルリアの為、帝国のためと静かに城を出る。数ヶ月会えないこともあるのに。ここまで出来る夫が居るものか。
私はスルガを全力で抱きしめた。
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