第5話 ま、まさか!?
「陛下が倒れてから二月経っています。」
いそいそと私をお風呂に入れてくれているメイドが状況を説明してくれていた。
ベルリアは毒を盛られそのまま倒れた。で私が身体を頂戴しちゃったわけだけど、その期間がなんと2ヶ月!
ていうか本にはこんなこと書かれてなかったと思うけど、まぁ、裏設定ってとこかな。
「私はそんなに眠っていたんだな。通りで、身体が重いわけだ。」
私は立ち上がり身体を拭いてもらうとローブを着て浴室を出た。
そういえばベルリアって体引き締まってるよなぁ。
凄い。
剣の腕もすごいし、頭もいい。容姿端麗。ベルリアに出来ないことはほぼない。という設定。
まさに才色兼備だ。
私はもう一度鏡の前に立ち自分の全身を見る。
髪は腰より、少し下くらいかな。
ほんと、大人の女性って感じでカッコイイ。背も高いし。
つい見惚れているとドアのノック音が聞こえた。
「入れ。」
ベルリアっぽくしておかないといけないってことはないと思うけど、記憶があるせいか口調もベルリアっぽくなってしまう。
下手に方言喋って変に探られても困るからいいけど。
ドアが開いて現れたのは、ザ王子様でした。
確か名前は
「ノバレンか、どうした?」
「ベル、病み上がりすぐで申し訳ないけど、今すぐ処理して欲しい問題がいくつかあるんだ。僕だけでは解決出来る問題ではなくてね。」
そういえば、ベルリアの次に偉いのってノバレンか。
もしベルリアに何かあった時、全ての権利はノバレンに渡ったはずだ。
2ヶ月の間ベルリアの代わりに色々と頑張ってくれていたのであろう。
私は差し出された書類を受け取って椅子に座った。
サッと目を通してノバレンに指示を出す。
「行方不明が女性ばかり…か。まぁこれは闇商売が関わっていることは間違いないな。スルガを偵察に向けろ。」
「はい。」
ニコニコと笑いながら近寄ってくるノバレン。
「何だ?」
「ベル、君が倒れている間僕頑張ったんだけど?」
「そうか、ありがとう。助かったよ。」
「それだけ?」
ノバレンは私の前に立つと指を2回トントンと自分の口に当てた。
「おい!」
「早くー。みんな待ってるんだから。」
待って待って!
ま、まさか…こ、ここ、ここれは!
よ、世に言う、
き、きききき、キキキ…
キスですか!?
むむむ、無理ですわよ!!
「しょ、書類読まないと。」
「今読んでたでしょ。」
「め、メイドがまだ近くに…」
「さっき出ていったよ。」
「うっ…」
アカンで!!これアカンやつやで!!
私、ファーストキスもまだなのに!?
え、私、人の体使ってファーストキス卒業するの!?
ん?あれ?これはファーストキスのうちに入るの?
てかまずキスって…どうするの?
唇を合わせるだけ?だよね?
あれこれ悩んでいると体が勝手に動いてノバレンとキスをしていた。
『ノバレンが待ってるだろ。可哀想に。』
あなたですかー!?脳内にベルリアの声が響いてくる。
「ありがとうベル。食堂でみんな待ってるからね。」
ノバレンは直ぐに離れて、それはもう満面の笑みで部屋を出て行った。
「ベルリア!!今私の体勝手に動いた!!」
『私が動かした。』
「え、遠隔操作!?」
『元は私の体なんだ、動かすことくらいできる。』
「じゃあ私居なくてもいいじゃん!!」
『無理だ。』
「何でよ!」
『それについては夜に話そう。それより、私の可愛い旦那たちが待ってるんだ。早く行け。』
「夜って、今話してよ!ベルリア?おーい!ベルリア!?」
べルリアの声は聞こえなくなった。
私はソファの上にいつの間にか出されていた服を着る。
ヒラヒラ可愛いドレス…ではなく、カッコイイパンツタイプだった。
脚長いし身長も高いからパンツの方が似合うけど、自分の元の体のことを思い出すととても悲しくなった。
私は髪を後ろで高い位置に結んで部屋を出た。
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