第1959話 理不尽
「ライガ、おにぎりでいいから、適当に朝飯頼むわ。今日は雨のせいで外に出られないから、バザールが作ってくれた運動場で、体を動かそうと思ってるから付き合ってくれ」
俺のお願いを聞いて、俺の好物である明太子、シーチキン、おかか、佃煮昆布を出してくれた。一緒に汁物で、豚汁のレトルトパックも出してくれた。
会った頃のライガは、トゲトゲしたのに家族のためにと、自分を殺して母と妹のために働きたいって言ってたっけ。あの頃をしてっている俺としては、感慨深いものがあるな。こういった気配りもナチュラルにできるようになっているし、成長を感じるな。
朝食からおにぎり4つ……地球にいた頃も、食べようと思えば食べられる数だが、無理に食べようとは思わなかった量を、今は平然と食べている。
地球にいたことに比べて、はるかに体を動かすようになっているので、日本で言う平均の成人男性の1日の消費カロリーは2500キロカロリーほどだと言われているが、俺はその倍は最低でも食事している。そうしないと、体内のエネルギーが枯渇して、筋肉の分解を始めてしまうのだ。
俺も多い方ではあるがライガは、文字通りに桁が違うのだ。今でこそ筋トレなど体を作るようなトレーニングは減っているので、消費カロリーも栄養も少なくなっているが、それでも俺の10倍……50000キロカロリーを摂取している。
気が付けば、モグモグと何か食べているのが当たり前の光景だ。驚くことに、筋トレなどをしている時の摂取カロリーは、軽く100000キロカロリーを超えていたそうだ。そこまでしないと、筋肉をつけることすらできなかったのだとか。
訓練中はお風呂屋寝ているとき以外は、常に食事を食べながらく体を動かしていたそうだ。よくテレビでみられる、大食いメニューのカロリーは、多くて10000キロカロリーほどだと考えると、ライガの摂取量がいかに規格外なのか分かる物だ。
それに比べて同じ呪いのシュリは、食事やオヤツ以外に食べているところあまり見ない。これには理由があり、シルキーが監修して作ったカロリーバーの栄養が同じ量で、俺の知っているカロリー〇イトの十数倍はあるのだ。それを見えない所で食べていると聞いたことがある。
食い意地が張っていることをはしたないとは思っていないが、呪いとはいえ俺の前でバクバク食べる姿はあまり見せたくないのだとか。乙女心なのかな?
話がそれたな。俺がおにぎり4つと豚汁を食べ終わる前に、ライガはすでにおにぎりを20個以上食べていた。汁物で流し込むように食べているのは……まぁ良しとしよう。俺たちしかいないからな。
ライガは朝食でおにぎりを40個は食べたと思われる。ここに来てから、朝食をここまで多く食べたライガは初めてだな。体を動かすことを念頭に、食事の量を調整したのかな。
朝食でいきなり、大食いチャレンジメニューと同じカロリーを摂取したか。その時間、20分足らず。早すぎじゃねえか?
バザールから朝までの情報をすり合わせしている時にも、カロリーバーを召喚してモグモグと食べていた。飲み物は吸収率のいいスポーツドリンクをチョイスしていたな。
普通の人間がこんな食生活していたら、1年も経たないうちに死にそうだ……なんて、的外れなことを考えていた。
ライガを伴い運動場へ来ると、かまぼこ型の飾り気のない空間がある。見るのは2度目だが、本当に何もないな。必要もないのだけど、ここまでがらんとしていると、不気味に思えてくる。
「ライガ、武器だと部位欠損すると困るから、素手で訓練をするぞ」
「自分の得意分野でいいのですか? 素手による戦績なら、シュウ様より自分の方が上なのですが……」
「気にしていることは分からないでもないが、所詮模擬試合だし、出せる範囲での本気で負けることは仕方が無いだろ。それに、ライガに負けるといっても、他の分野で俺が勝っている部分もあるのだから、お互い様じゃないか?」
「むしろ、ライガ殿はシュウ様より強くあるべきでござる。シュウ様は主君、ライガ殿はそれを守るための盾であり、敵を滅ぼす矛でもあるのだから、強いにこしたことは無いのでござる。それと、某は回復魔法を使えるでござるから、千切れなければ治せるでござるよ」
立場をみると、ライガが強くあることは良い事だ。もっと強くなってくれると、俺の負担が減るからよろしくな。
「正論なのだが、それよりもお前が回復魔法を使えること自体、不思議で仕方がないんだけどな」
「固定概念を捨てるでござる。この世界の回復魔法はアンデッドすら治すでござるから、気にするだけ無駄でござる。後、某はすべての属性魔法を使えるでござるよ。アンデッドの苦手な光属性も使えるでござる」
「それは絶対におかしいだろ……」
「そうでもないでござる。光魔法を使えるでござるが、使えば自滅するでござるよ。ホーリーライトなんかを使えば、余波で骨の表面が焼けるでござる」
今更、どうでもいい情報を知ってしまった。
「それに、光魔法はともかく、水魔法で回復しようとすると、アンデッドはダメージを負うでござるよ。回復魔法の回復と、それ以外の回復は違うみたいでござるからね」
さらに知らなかった情報をぶっちゃけられた。
頭から余計な情報を排除して、準備運動を始める。こんな時は、考えずに体を動かす方がいいに決まっている。
無手でライガと向かい合う。本気ではないが、様子見と言うほど甘い気配ではないな。手を抜くつもりは無いと……さすがだな。レイリーの教育がしっかりと行き届いている証拠だ。
レイリーの中では暴走する俺を気絶させて、後方へ引き摺ってでも連れ帰る、という優先順位があるようで、説得できなかった場合は、まずレイリーとか近衛の人間……妻たちを退けないといけなくなるのだ。
不意を突いて突出すれば、帰ってきた時に大変な目に合うのだ。
そんなことを思い出しながら、ライガとの初手を考える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます