第1270話 使えない奴ら

『な、なによ? 突然どうしたのよ! それとそのどす黒い何かを放つのを止めてってば! 本当に存在が削られるんだから勘弁してよ! あぁっ! ちょっと、その子たちをこの部屋から連れ出して!』


 そんな事はどうでもいい! 俺の妻たちが目の前から突然いなくなった。四大精霊が可能性の1つとして挙げたのが、召喚されたんじゃないかって事だ。俺みたいにこの世界から違う世界に呼び出された可能性はあるのか?


『はぁ? そんなのあるわけないじゃない。召喚は基本的に一方通行なのよ。神が管理している世界へ送り込む事だけしかできないの。私たちが管理している世界から……紛らわしいわね。1の世界から2の世界への召喚は出来ないのよ』


 今俺が居る世界から違う世界に召喚される事はあり得ないって事か?


『そういう認識で間違ってないわね。もっと言うと、私たちの力でもそれはできないわ。創造神様なら出来るかもしれないけど、あのおじいちゃんはそんなことしないわね』


 だけど、実際に目の前から消えたんだ、それはどうしてだ?


『というか、まじでどす黒い何かを送るのをやめてよ。一緒にいた神がバタバタ倒れて大変なんだからさ』


 よくわからんが、俺がキレている時にチビ神に送っている何かが神界で影響を及ぼしているみたいだ。今まで適当に流してたけど、どういうことだ?


『どういう事って、私にもよく分からないけど、あなたの放出する何かが、私たち神の存在を削るのよ。結構辛いからやめてほしいのよね』


 周りが倒れるほど影響があるのに、お前はよく平気だな。


『これでも長く神をやっているからね、産まれて1000年位しか経っていないような神たちには、このどす黒い何かは正直辛いよ。下手したら存在を削り取られて消滅するかもね』


 ずっと続けてたらチビ神も消滅する?


『文字通りずっと続けていられるなら、2ヶ月くらい送り続けられたら消滅するかもね』


 それは無理だなってそうじゃない! 実際に目の前からいなくなったんだよ! 俺には探す方法がないから、お前に探してもらいたくて連絡したんだ! 探せ!


『何でそんな事私がしなきゃいけないのさ? 基本的に干渉しないって言ったでしょ?』


 こんな時ばっか干渉しないって持ち出しても説得力ないわ! 新作が出てももうお前に送らないからな!


『ちょっと! それは卑怯でしょ! それなら四六時中発狂している声を強制的に送り付けるわよ!』


 そんなことする前に手伝えばいいだろうが!


『それは出来ないのよ。ルールに抵触するから、基本的に教えられない事になっているの』


 そんなもん知るか! お前を助けるためにBL本だって送っただろうが! その借りを返しやがれ!


『…………』


 黙るな!!!


『これこれ、シュウ君や。そんな怒気を神界に送る物じゃないよ』


 何か聞き覚えのある声だな……創造神のじっちゃんか?


『ほっほっほ、覚えてくれていたようじゃな。ゆっくりとお酒を飲んでいたら、神界を侵食するような怒気がしてみたから来てみれば、君だったのかとな。どういう状況かは理解しておる。このチビが話せないのは、ルールというよりは縛りじゃな。言いたくても言えないのじゃ。理由は教えられぬが、強制力が働いているというのが正しいのじゃよ』


 だから何だってんだよ。俺の妻たちが娘たたが目の前からいなくなったんだよ! それを探すのに神の力を借りたって問題ないだろ? 今までどれだけ貢いできたと思ってるんだ? 神って言うのは、受けた恩を返さないのか?


『耳が痛いのう。こやつが喋れないのにはそれ相応の理由があるのじゃ、理解してほしい』


 そんなもん知らん。恩を返せ! 拒否権も無しにここに連れてこられ、神共のおもちゃの駒として娯楽を提供してるだろ。ルール違反をした女神たたの召喚相手をさせられたり、面倒事しかねえんだよ! たまには役に立てよ糞神共が!


『黙れよ小僧。神全体を侮辱する発言はさすがに看過できぬぞ。何もされないからと言って、これからもそれが続くとは限らんのだぞ? その事を理解して発言しなさい』


 クソが! 俺の妻たちが! 娘たたがいなくなったんだよ! どこにいるか位探してくれたっていいだろ! そもそも他の世界に召喚できないはずなのに、何でいなくなったんだよ! この大陸のどこを探しても見つからねえんだよ!


『気持ちは分かるが、今回の件で居場所を教える事は出来ないのだよ』


 神に頼ったのが間違いだったか。


『じゃが、さすがに今回は間違った使われ方をされたから、少しだけアドバイスをしてやろう。ワシの力をもってすれば世界を移動させられるが、今回は関与しておらん。という事は、必ずその世界のどこかにいるという事じゃ。地球だって大陸は1つじゃなかったじゃろ? そう言う事じゃ。これ以上のアドバイスは出来ぬ。己の才覚で何とかして見せよ!』


 そう言って、神界に繋がっていたと思われる回線が切られた。再度繋げようとしても反応がない。



 沈黙していた俺の様子が気になったのか、妻たちが様子をうかがっている。


「すまん、ちょっと情報をまとめたいから時間をくれ」


 そう言って、30分程思考の渦に沈んでいく。



「ふぅ、みんなに説明する」


 創造神から聞いた話をみんなに理解しやすいように頑張って説明した。


・召喚されたのは間違いないと思う事。


・消えたみんなは、この世界……この星の何処かにいる。


・この大陸だけがすべてではない。


・何か理由があって神でもこれ以上話す事ができないらしい。


 簡潔にまとめるとこんな感じだ。


「とにかく、この大陸ではないどこかに召喚されたらしい」


「ご主人様、召喚されたって言う事は、勇者召喚が行われたって事?」


 ん? 知らないワードがソフィーからもたらされた。勇者召喚ってなんぞ?


「ダンジョンマスターの事はよく分からないけど、勇者の場合は召喚されてこの世界に来るの。神から神託があって、勇者召喚の儀式を行って召喚するって聞いた事がある」


 何かがひっかかる、神が関与しないと世界をまたぐ召喚は出来ない。神託があり勇者召喚の儀式を行うって事は、神の神託無しに勇者召喚の儀式をして、同じ世界の人間を召喚した?


「ちょっとグリエルに連絡をとる! みんなはいつでも動けるように休んでいてくれ。何かあったらすぐに起こすからな!」


 そう言って、俺はグリエルに連絡をとるために魔導無線の下に走った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る