第1269話 混乱中
目が痛くなるほどの光が収まった時、そこには誰もいなかった。
母親……カエデ・ミリー・リンド
娘……スミレ・ミーシャ・ブルム
年長組……ピーチ・ライム・シュリ・アリス・マリー・ライラ・メアリー・ケイティ
精霊……スカーレット・シルクちゃん・ツィード君
従魔……ニコ・色付きスライム多数・ケットシー3匹
そこにいたはずの皆がいなくなっていたのだ。
どういう状況なのか理解できないが、いなくなったという事だけは分かった。痛む腕を必死に動かしマップ先生で検索してみるが、やはり該当者なし……
叫んで暴れ出した。
しばらくすると、家にいたみんなが集まってくるが、俺はどうしていいか分からない怒りを周りにぶつけている。
気付いたら目の前に本来の姿に戻っていた、ダマ・シエル・グレンがいた。
俺の邪魔をするのか? そこを退けよ! 自分でも正しい判断ができていないことが分かるが、それでも心がブレーキを外し止まれなくなっていた。
退かせるために3匹の聖獣に突っ込んでいくが、シエルの壁に阻まれた。全身に走った痛みで一瞬体が硬直してしまった。
次の瞬間後ろから押し倒され、床にキスをしている状態になった。
『主殿、落ち着いてください!』
ダマの下で暴れている俺に、何度もダマがそう呼びかけてくれた。
それでも動く事を止められなかった俺に、1匹のスライムが近付いてきて顔に取り付く、俺は息ができなくなり気絶した。
目が覚めたが、体が全く動かせなくなっている。どういう状況なのか全く理解できていない。
俺が動いている事に気付いたのか近くにいたキリエが声をかけてきた。
「ご主人様、少しは落ち着かれましたか?」
そういわれて、眠る前の事を思い出した。
「あぁ! みんなが! みんなが! 俺の前からいなくなったんだよ!」
俺は叫んでいた。
落ち着かせるためだろうか、寝ている俺をキリエが優しく抱きしめてくれた。
「ダマから話は聞きました。みんなどういう状況だったのか理解しています。でもご主人様の体は危険な状態だったんですよ!」
抱き着いていたキリエが離れて、俺の頬を叩いた。キリエが泣いている。首を動かして良く見ると他の妻たちも同じように泣いていた。
どういう状況だったのか聞いた所、良く動けていたなと言うのが正直な感想だった。神に改造してもらった体が、どれだけ規格外だったのか。
全身の骨という骨にヒビが入っており、無事な骨を見つける方が難しい状況だったらしい。特に壁を殴りつけた右腕はヤバかった。手は解放骨折をしており、手の原型を成していなかったそうだ。上腕も解放骨折しており漫画のようになっていたのだとか。
それを見た年少組のメンバーは、その場で意識を失ってしまったらしい。俺より先に目を覚まして状況を聞いていたようだが、顔色が優れなかったから先に休ませているのだとか。
「とりあえず、状況説明はこれ位にして、ご主人様には食事を食べていただきたいのですが、もう暴れないですよね?」
「暴れないけど、娘たちが! ミリーたちが! みんながいなくなったんだぞ! 悠長に飯を食べている場合じゃないだろ!」
バシンッ
また頬を叩かれた。
「ご主人様、体の話をしましたよね? 魔法では治せなかったので、最上級のエリクサーを出してもらい使っています。ご主人様の体の中には、ほとんど栄養が残っていないのです。そんな状況で何ができるというのですか? みんなが戻ってきた時にご主人様が倒れていたらどう思うか考えて下さい!」
キリエの手には血がにじんでいる。俺を叩いたからできた傷ではない。握りしめている拳から血が流れているのだ。どうしていいのか分からないのは俺だけじゃない。キリエたちだってどうしていいか分からないのだ。
でもその中で確実にしなければいけない事は、俺の食事か……エリクサーで体を治したって言ってたな。部位欠損では無いが、相応の栄養やエネルギーが必要だったはず。
そう考えた瞬間に俺のお腹が空腹をうったえ鳴った。
俺が動けなかったのは拘束されていたからのようだ。起きてすぐ暴れないようにするために、綾乃とバザールが作った特製の拘束具でベッドに縛り付けられていたのだ。
解放してもらい食堂へ歩いていこうとするが、まともに歩けなかった。気持ち体が細くなっている気がする。
リリーとシャルロットにささえられ、食堂へ行くと準備が整っていた。
俺は腹を満たすために出される物を端から完食していく。普段の5倍は食べただろうか? それでも満腹を感じていない、おなかが膨れた感じはするけど、お腹を見てもポッコリとも膨らんでいない。
心なしか、入りにくかった力がしっかりと入るようになってきた気がする。
最終的に20人前くらい食べたのではないだろうか? 10キログラム以上を食べたと思う。だけど体型には変化が見られなかった。
食事を終え軽くストレッチを行う。
「まだ違和感があるけど、問題なく動かせそうだな」
起きて来た年少組のメンバーもほっとして安心している様子だ。
食堂でそのまま何が起きたのかを確認する。ダマと俺が状況を話し、間違っていない事を確認した。
「みんなは、何処に行ったんだ?」
一緒に考えている妻たちも、ダマも何故いなくなったか分からない。
「主殿、目が覚めたようですな」
そう言ってやってきたのは、ノーマンだ。他の四大精霊も一緒だった。
四大精霊もダマから話を聞き状況は理解しているようだ。
「我々で考えた結果、1つの可能性にたどり着きました。この世界には瞬間移動のような物はありません。ですが、目の前からいなくなったという状況を考えると、召喚された可能性が高いのではないでしょうか?」
「……?」
言われた事を飲み込めなかった。
「我々は、元々精霊界に住んでいて、この世界と行き来しています。主に呼ばれた際に、ダマさんの説明にあったような現象を体験しているのです」
そういえば、アクアもシルクちゃんやツィード君と知り合いだったよな? 元々住んでいた場所からここに呼び出したって事か? じゃぁ従魔も?
「魔獣は違うと思います」
ノーマンが俺の考えている事を否定した。
「従魔は、ダマを通じて話を聞いた所、召喚ではなくその時に産まれたと分かっています。元から知能が高いのは、生み出した人の知識を引き継ぐからだと思われます。それに対して精霊は、召喚される際に主殿の知識の一部が流れ込んできた感じです」
そういわれて、初めて魔獣と精霊の違いを認識した。今まで気にも留めていなかったが、精霊に関しては、精霊界から呼び出しているらしい。精霊の召喚する時のDPが少なかったのはそのためか?
「召喚されたと仮定して、主殿は探せる相手を知っているはずです」
そう言われてピンときた。
「チビ神! 返事をしろぉぉぉぉ!!」
自分でもびっくりするほどの大きな声を出していた。
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