第1267話 問題は多い
誰かに体を叩かれる感覚で目が覚める。
「……さま、シュウ様。起きて下さい」
グリエルの声だな。そういえば、執務室に併設している仮眠室で寝てたんだっけ? 何かあったら呼ぶように言ってたから、何か決まったのかな?
「ん~~あぁ~~っ!!」
伸びをするとおっさん臭い声が出てしまった。ダマも猫のように体を伸ばしているけど、見た目がぬいぐるみの2~3等身の短足の虎なので何か違う。
「グリエル、もう決まったのか?」
「流れは決まりましたが、現場の意見も聞いてみないと分からないので、昼食を食べたらゴーストタウンへ行こうかと思います」
「あ~もう、昼飯の時間か? 家に連絡しなきゃ!」
今日は外で食べるとか連絡してないのに昼食開始の時間を少し過ぎているので、怒られる可能性があるのだ。ブラウニーが準備してくれているはずなので、今から帰って問題ないか連絡をとってみると、少し時間がズレるけど問題ないとの事だった。
グリエルたちも一緒にいる事を話したら、一緒に食べても問題ないとの事で3人に伝えると、是非ご一緒させてください! と食い気味に言われた。
ゴーストタウンでも、ブラウニーの調理技術が広まっているが、俺の家で食べれる料理は次元が違うらしい。
ディストピア自体、他の街に比べると食材の質が高い。が、俺の家で食べられる物は、さらに質が高いため食べられる人は幸運なのだとか、いつの間にそんな話になっていたのだか。
よし、とりあえず飯だ!
俺の馬車に乗り込んでみんなで移動する。ウォーホースの頭がいいので、御者が居なくても安全運転で家まで戻ってくれる便利な奴なのだ。
いつも通りブラウニーの作ってくれた食事はいつも通り美味かった。
俺たちが最後だったようで、周りに人がいなかったので映像について色々聞いてみた。
基本は、検問所で話している内容をそのままに、内容に沿った映像を流す事にするようだ。だけど、細かい内容はグリエルたちも知らないので、まずその確認のためにゴーストタウンに行くようだ。
ただ俺は一抹の不安を感じている。言葉と絵で説明して理解しようとしない奴らに、映像を見せたからといって理解してもらえるのだろうか?
ゴーストタウンに入れる場所は、一応2ヵ所存在している。
1つ目は、中立都市とゴーストタウンを繋いでいる地下通路の出口が集結している場所。
2つ目は、樹海に出る出入り口だ。
2つ目はあれだな、俺がこの街に入ってきた時に使った道だ。横道はダンマスのスキルでふさいだけど、出入り口自体は塞いでいない。地下通路を通らなくてもゴーストタウンに来れるのだが、樹海を抜ける位なら通行料を払ってしまった方が得だろう。
今までにこの出入り口から入って来た人はいないけどな。
そういえば、地下通路と繋がっている出入り口は、何度か拡張工事という名のDP改装を行っている。
それなりに人が行き来すると考えており、結構な広さを確保していたのだが、予想を超えて人が行き来するために何度か拡張したのだ。
拡張した一番大きな理由は、ゴーストタウンで問題を起こす人間が多かったため、特別な許可を得ている人以外は全員街に入るために、必ず講習を受けてもらう事になっている。これは、何度来ていても絶対なのである。
もちろん文句は出るが、特別な許可を取ればいいだけなので講習に関するクレームは全て突っぱねているらしい。
特別な許可と言っても大した事では無い。簡単に言えば、免許を取る時の学科試験のような物だ。ゴーストタウンの行政府で行われている教習を受け、試験に合格すればいいだけなのだ。
ただこの許可は1年に1回更新しなければならないので、利用回数が少ない人は許可を取らずに毎回聞いているのだとか。
そんな事もあってこの出入り口は、講習所を増やさなければならなくなり何度も拡張している。
講習所のスペースもそうだが、馬車の駐車スペースに馬を世話するスペース等も広くしているため、かなりの規模になっている。
もちろん防犯対策のために、ガレージ車庫のようになっており、1台1台を分けて停められるようになっており、一度閉めると閉めたカギでしか開けられなくなる。魔導具のカギであり、閉めた人の魔力をカギが認識して、その人以外が使っても開かなくなっている。
何処から来た技術かと思ったら、使用者固定のエンチャントを解析した老ドワーフが、カギとして利用できるように改良したのだとか。
さて講習なのだが、正直眠くなってくる内容だ。文字を読む事の出来ない人間はかなりきついのではないだろうか? と思う感じの講習だった。
管理責任者を呼んで話を聞いてみた。
文字を読めない人もいるので、絵等を見せながら説明しているのだが、他の街と違いすぎてピンと来ていない人が多すぎるのだとか。
特に、トイレやゴミに関しては何度説明しても理解してもらえない事が多いのだとか。
ゴーストタウンでトイレと言えば、公衆トイレか家や店のトイレ以外ではしてはいけない事になっているのだが、いちいちトイレまで行ってする理由が分からないとか、面倒とか、理由は様々だが、他の街ではトイレという概念はほとんどなく、そこらへんで済ませる事が普通なのだとか。
そりゃ街が糞尿臭くなるわな。
後、ゴミに関しても、大通りの近くに捨てておけば領主の奴隷が回収してくれるのが一般的らしく、普通にポイ捨てをするのだ。
スライムがいる下水に直通のゴミ捨て場があるのに、そこらへんにポコポコ捨てていくのだ。
トイレやゴミ捨てで、罰金を払っている人間が多くいるのが現状なのだとか。知らないとか言ってごまかそうとする奴らも多いが、講習で説明しているので聞いてないお前らが悪いという形だ。それでも数が多いので警備部から苦情が入るのだとか。
説明の方法が悪い部分もあるが、理解しようとしない訪問者達が大半は悪いんだけどね。そんな事で苦情を言われたら、嫌になってくるよな、何とかしなければ!
トイレやゴミ捨て場は見て分かるように、デザインが統一されている上、何処にあるか分かるようにポールが立てられている。周りの家の倍くらいの高さがあるので、少し歩けば見つけられないという事は無いはずだ。
そう言う事も映像にして、説明できるようなビデオを作らないとな。後は、街の人達にも話を聞いてみて、多く発生する問題を特にピックアップしてみるか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます