第1262話 安心出来るけど出来ない!

 そういえば、気になる報告が上がってきてたな。


 ゴーストタウンの治安は以前より良くなっているのだが、マッチョ系の人が増えていて怖いとかなんとか、それが女性からの訴えであれば早急に色々確認する必要があるのだが、その訴えが男性のしかも冒険者から上がっているのだとか?


 それなりに鍛えている冒険者であれば、多少筋肉が付いたくらいの筋肉だるまなら問題ないはずなのだ。


 この世界にはステータスという物があり、見た目だけでいうならうちのちびっ子は、モデルというほど細くは無いけど、普通位の体系だろう。だけど、打たれ強さも力も大の大人が束になった所でどうにもならない位差が存在している。


 だから、冒険者しかも男性から、マッチョ系の人が増えて怖いと言われても、重要視されずに放置される案件だよな……でもさ、


「マッチョ系か、それを聞くとホモークの所にいる罪人を思い浮かべるのはおかしい事かな?」


 なんてつい独り言を言ってしまった。


 ちょっと確認しておかないと、もし俺が想像している通りで、ガチムチ系に変身してしまった罪人であれば、今度は男性冒険者のお尻が危ない事になるぞ。


 想像したくないが訴えの中に『視線を感じて振り向くといた』とか『背筋が寒くなって、お尻がキュッとなった』とか言う訴えがあるからな。


 十中八九、ガチムチ系の人がそういう事を考えて見ているとしか思えないんだよな。


 これとは別にお金のない冒険者が、女性を襲うとホモーク部屋行きだからと言って、そこそこ美形の男で性欲を解消している……とか言う話も上がっているんだよね。


 もちろん、それだって性犯罪なのでホモーク部屋行きなのだが、金が無くて花街にいけないなら、大人しく自家発電するか稼げるように鍛えろ! と思うのは俺だけか?


 変装用ドッペルに憑依してゴーストタウンを歩いてみる事にした。


 しばらく歩いてみて感じた印象は、全体的にガラの悪い連中が減っている気がする。見た目だけで真面目な奴も多いのだが、そういう奴らではなく、実際に迷惑をかけている奴らが減っているような気がするのだ。


 治安が良くなるというのは、街にとっては大切な事だよな。


 後、全体的に道がキレイになっているな。報告に、法律で決めていても他所から来た人間がそこら辺にゴミを当たり前に捨てるので、かなり重い罰になるように法律を変えたとかあったな。


 ゴーストタウンはダンジョンなので、勝手にキレイにする事もできるのだが、ゴミは指定の場所へ! を合言葉にしてクリーンキャンペーンを行った所捨てる人が減ったようなのだ。


 指定の場所に捨てれば捕まる事も無いので、ほとんどの人が捨てに行くのだとか。それでもバカはいるので完全にはキレイにできないのが現状らしい。


 その中でも一番面倒なのが、位の高い貴族の子弟関係の奴らだな。こいつらの対応で何度か呼び出されて面倒だったのを覚えている。


 位の高い貴族の子弟は、自分の街にいるのと変わらない行動で道にごみを捨てていくのだ。このゴミは近くの住人が掃除をするか、奴隷を使って掃除をするのが普通らしくポイ捨てを簡単にするのだ。


 それを注意した衛兵に、無礼だ! とか言ってお付きの人間が切り捨てようとする事が多々あったのだ。衛兵なので、鍛えているから簡単に取り押さえるのだが、何件か子供がゴミを捨てた貴族に子供らしく『ゴミ捨てちゃいけないんだ』とか言った時にも切り捨てようとして、子どもが大怪我して大変だった事もあったのだ。


 もちろん、その貴族は裁判も無しに首を切り落としたけどな。


 子どもに注意されて逆ギレして切り殺そうとした、とかマジで頭おかしいだろ。どれだけ自分が特別だと思っているか知らんが、俺が現場に着いた時には衛兵の詰め所に常備しているポーションで子供は助かっていたが、すごく脅えている様子だったのだ。


 その時、護衛について来ていたのがソフィーとメルフィで、脅えていた子どもが女の子という事もあり、俺がキレる前に2人がキレてしまい武器を抜いて突っ込んでいってしまったのだ。


 殺そうとする判断は間違っているとは思わないが、脅えている子の前で殺そうとするのは良くない。苦肉の策で思いついたのが、ブラインドを作る事だった。慌てて魔法を行使して土壁を女の子の前に作った、と言う事があったな。


 そんな事を考えながら歩いていたら、不意に視線を感じたのであたりを見回してみた。


 通りには、急に止まってどうしたんだ? とか思いながら俺の事を見ている人はいたが、俺が感じた視線ではない。それにまだ視線を感じている。


 しばらくあたりを見回していると、路地の所にこちらへ熱い視線を送ってきている人がいたのだ。もちろんガチムチ系のお兄さんでした。


 お尻や股間のあたりがキュッとなり、身の危険を感じた。


 俺が気付いたと分かると、手を振ってから路地へと消えていった。


 おそらく、男性冒険者が怖いと言っていたあれだろう。ただ、身の危険を感じたのだが、それと同時に襲われる事は無いとも感じた、この矛盾はどういうことなのだろう?


 考えても分からないのだが、あの様子を見ると今の人は見ているだけなので、何の罪にもならない。感覚的に言えば、道を歩いていて男が美人さんや好みの女の子がいると、ついつい見てしまう感じだろう。


 正直これはどうしようも無い、実際に被害が無いので対処のしようがないのだ。


 ただ、マップ先生の情報で俺の事を見ていた奴の詳細が分かった。


 1度ホモーク部屋に送られ、完璧に更生したとホモークからも被害女性からも出所許可のでた元犯罪者だったのだ。


 ホモークから許可が出ているという事は、問題が無いと判断されたと思うのだが、あの視線は本当に大丈夫なのだろうか? いつか爆発したりしないよね?


 さすがに気になったので、ホモークに確認を取りに行く。


 対応してくれたのはホモークエンペラーのオリバーだ。


 詳細を聞いて正直に感じた事を言おう。十中八九、ここで更生した強姦野郎は、相手の同意無しに襲う事は無いだろう。何故そう思うかと言えば、その欲求が爆発する前に自らここに来て解消するのだとか。


 想像して俺は吐き気を感じた。まぁ、大丈夫ならいいか? だけど、再犯した場合は命が無くなるので、キツク言い含めているそうだ。


 それにホモークが更生していると判断しても被害女性が許可をしない限りは、出所できないようになっている。相手が死んでしまっている場合は、出所は一生無い。

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