第1261話 オークレディの特技

 税金の公布から1週間。


 この世界の人頭税は、1年に1度決められた時期に払うのが一般的なのだが、この街では月1で払ってもらう事にしている。


 この形は、払う人も処理も本当であれば大変なのだが、ディストピアでは大した手間では無かった。それは、ディストピアの給料支払いは、現金を手渡しをしているので、その際に回収すれば問題ないのだ。


 これは、この街のほとんどの事業がディストピア公営で、ほとんどの住人が公営の施設で働いているか冒険者であるため、お金の受け渡し時についでに払ってもらえるので楽なのである。


 一部の自営業者は、庁舎まで来て払わなくてはいけないので面倒なのだが、その人にしても寄付に来ていた事を考えれば大した手間ではないと本人が言っていた。


 ディストピアに関しては、出入りできる人間が決まっているため検問等の手間が無いのだ。その分通行税が取れていないが、お金に困っていないので特に問題になっていない。



 経過報告したいとの事で、1週間ぶりに執務室を訪れている。


 グリエルは、相変わらず慣れた手つきで俺の部屋にある最先端技術を操作してている。俺が居ない時にかなりの頻度で使用している様子がうかがえるな。


 初めの報告は、


「戦争の報酬ですが、シュウ様の案が上手く行っているようで、食べ物と抱き合わせで渡す事によって受け取ってもらえています。特に渋っていたのは兵士でしたが、めったに食べる事の出来ないシルキー特製の料理が功を奏して、受け取る兵士が増えましたね」


 お~効果あるのかと思っていたシルキーの特製料理も、めったに食べる事の出来ない美味い料理となれば、兵士が食いつくのも無理はないか。しかもただの料理ではなくかなりの量があるため、兵士に人気なのだとか。


 兵士たちはとにかくよく食べるので、兵舎にある食堂でも質より量に重きが置かれているので、今回シルキーが作るような質も量も最高な物はめったに食べられる物では無いので、希望する兵士が多かったようだ。


「次に、聖国から送られて来た罪人ですが、ホモークの所へ行った罪人は、調教が進んでいるようでいつものように新しい道を開き始めているそうです」


 新しい道、ホモークと同じ道という事か。近寄りたくないな。何でか知らないが、あのエリアに入ると8割以上の罪人がガチムチ系に進化するんだよね。おそろしや。


「ホモゴブリンの所に入った罪人は、まだ2週間なので本当の懺悔には程遠いようですね。1日3時間は炎に焼かれているらしいですが、それで死んでいない事で神に守られている私は間違っていない! とか言っているそうです」


 死なないように調整されて治療までされている事で生きているのに、それを神に守られていると勘違いしているのか? どうしようもないな。


 これに関しては、心が折れるまでホモゴブリンに頑張ってもらうしかないか。それに、ホモゴブリンは罪人にはまだ手を付けていないらしい。何か思う事があるようで、今までの罪人を使って解消しているのだとか。


 頑張ってくれ! としか言いようがないな。


「最後にオークレディの所へ送られた罪人ですが、1週間経つ頃には、全員がゲッソリしていましたね。肥えた罪人も鍛えられた罪人も揃ってやせ細っていて、反対にオークレディは元気いっぱいとの事です」


 自分で見に行く事は出来ないので、報告を受けそれをまとめてから俺へ報告してくれたようだ。


「未確認といいますか、未検証なのですがオークレディのスキルである催淫パルファムなのですが、男性のアレを臨戦態勢にするだけでなく、子種を強制的に作り出させる可能性があるようです。その栄養を体の脂肪や筋肉を使って生み出させているかもしれないという事です」


 精液の成分はよく知らないが、精子自体は確かタンパク質が中心でできているんだったっけ? 筋肉以外にも体を構成する内の水分を除いた8割位がタンパク質でできている、と聞いた覚えがあるのでそれを分解して精子にでもしているのだろうか?


 でもそれだと、脂肪が減る理由が分からんな。筋肉が極端に減ってしまったら動くのが大変になるのだが、そこら辺は大丈夫なのだろうか?


 どうやら食事はオークレディが食べさせているので問題ないと思うとの話だ。


 そしてビックリする事に、このオークレディは料理がかなり上手いのだとか。自分の家に連れ込んだ罪人に毎日手作り料理を食べさせているようだ。


 見た目だけ除けば、家事万能の良妻な気がするな。ちょっと性交の面に関しては、度が過ぎる程積極的だが。


 その後も細々とした報告を聞いてから、余裕ができたグリエル達と雑談をする事になった。


 その中で俺は、ふと疑問に思った事を口にしてみた。


「でさ、今回の罰についてなんだけど、ホモークとオークレディってどっちが罰として辛いのかな?」


 それを聞いたグリエルとガリアがピシリと音を立てたように固まってしまった。どうやら2人も気にはなっていたが、想像をしたくなくて遠ざけていたのだが、俺が言葉にしてしまった事で想像してしまい固まってしまったようだ。


「嫌な想像をさせないでくださいよ。ホモークに掘られるのも、オークレディに搾り取られるのも大差ないです。どっちにしろ私たちにとっては地獄です」


 げんなりした様子でグリエルが答える。確かにどっちも地獄だよな。妻に搾り取られているのであれば、俺の意思でそうなっているので疲れるけど嬉しい状況ではある。だけどオークレディの場合は、強制的に搾り取られるからな、同じ搾り取られるでも大きく意味が違う。


「変なこと聞いてすまん。でもさ、オークレディの催淫パルファムが魔法薬で作れるなら、子どもが欲しい人たちに売れるんじゃないか?」


「確かに魔法薬で再現できるのであれば、バカ売れ間違いないと思いますが、スキルを魔法薬で再現するのは難しくないですか?」


 そもそも思いついたはいいけど、再現する方法なんて思いつかないんだが、オークレディの身体検査でもするのか?


 無理無理無理無理!!!


 そんな事出来るわけないじゃん! バザールにでも検査してもらうか? あいつ骨だから問題ないだろ? でも臭いが分からんから、綾乃にいってもらうか? オークレディはあいつが好きそうなネタだしな。後で話を振ってみるか?


 変な空気が執務室に流れてしまったので、この雑談は終了となった。

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