第972話 やっと召喚した
「これだけ建物があると、もう街っぽく見えてくるな」
ダンマスのスキルで作った街を眺めて一言。
建物の数は40程しかないのだが、1つ1つが大きめの建物という事もあり、結構街っぽくなっているのだ。小さな村(街に住まず数十人から百数十人規模)より、圧倒的に整備も整っており住みやすい事は確かだ。
でも、食料調達に難があるので、3つの入口のあるダンジョンの一部を作り変えて、食材を調達できる畑エリアの様な場所を作った。
あくまで畑エリアの様な場所なのは、実際に野菜などを植えられる場所があるわけでは無く、最近召喚できるようになった、野菜のような物をドロップする魔物が召喚できるようになったので、それを召喚して配置したのだ。
どんな魔物がいるかと言えば、
ジャガイモのような物を落とす、ウォーキングポテト。ジャガイモをいくつも重ねて人型のゴーレムのような見た目をした魔物で、倒すと人の顔位のジャガイモのような物を落とすのだ。味はまんまジャガイモ。でも、大きすぎてジャガイモと言っていいのか分からないドロップ品だ。
キノコ類を落とす、ボムマッシュルーム。この魔物は動く事はしないのだが、近くを通ると爆発して菌糸をまき散らす。少量なら人間に害は無いが、大量に爆発すると呼吸困難を起こして窒息死してしまう。離れた位置から倒す事によって、様々なキノコをドロップしてくれる。
豆類を落とす、ビーンズシューター。この魔物も動く。歩く事はしないのだが、自分の身を削って豆を撃ち出してくるのだ。ただ、この飛ばしている豆が、ビーンズシューターが体力を消費して生み出しており、魔物なのである。
これを壊さずに受け止めると様々な豆がドロップされる。ちなみに本体は倒しても何も落とさない。
他にも、小麦やお米、キャベツやレタス、ニンジン、ねぎに玉ねぎ、トマト、ナス、ピーマン、ブロッコリー、かぼちゃ、ダイコン等々、日本でおなじみの野菜のような物をドロップする魔物を配置している。
ここの野菜の魔物達は、強くは無いが癖のある奴らが多い。倒し方を間違えなければドロップするので、住人が食料を取りに来ることができるだろう。まぁ、農家が戦う農家になる感じだろうか?
この野菜の魔物はLvが1で、経験値も最小らしく人のレベルアップには、時間がかかるそうだ。ダンジョンの中なのにこれって事は、かなり経験値が少ないってことだな。
肉類に関しては、ダンジョンでも多少とれる。それに、3つの入口の方のダンジョンは、比較的食材になる肉を落とす、獣系の魔物が多かったのである程度の人数が集まれば、この島だけで問題なく生活ができるようになるな。
というか、俺の管理してる街って基本的に単独で生活可能だけど、他の街って単独で生活が難しいところが大半だって聞いてるんだよな。基本は交易とかして食糧が余っている街から買うそうだ。
俺は知らなかったのだが、フレデリクやリーファスのように街の外側に広大な農地を持っている街もあるようで、そういう街は基本的に近くに魔物の領域がないそうだ。そう考えると、フレデリクとリーファスはかなり特殊場所と認識されているようだ。
「ご主人様~これからどうするの?」
「ん~必要最低限の物は作ったしな。でもすぐ帰ると何か言われるかもしれないから、2~3日はここにいようかと思ってるよ」
「で、何するの?」
シェリルとイリアの質問攻めに合い、タジタジしてしまった。
「何もしないでゆっくりするっていうのはどうかな?」
何しててもいいんだ~何しよっか? と言って、俺の側から離れてネルのいる方へ走っていった。まさか、あんな風に質問されるとは思ってなかったから内心ドキドキしていた。
さて、何か忘れている気がするのだが……何だったっけな? 悩んでいると、俺の膝の上にダマが乗ってきた。何かと思ったら、クロやギンたちに玩具にされていたみたいで逃げてきたようだ。
あっ! そういえば、フェンリルの事忘れてた! すっかり忘れてたぜ。みんなには後で紹介すればいいか? という事で、俺はダンマスのスキルをいじってフェンリルを召喚してみた。
「ん~まさかこんな感じで召喚されるとは」
この世界に来て2度目の命の危機を感じた魔物だったので身構えていたのだが、現れたのはダマの小さいフォルムと大して変わらないサイズで、ダマよりシュッとした顔をしている白いモフモフが召喚されたのだ。
モフモフで可愛いのだが、何て名前をつけよう?
ダマは召喚されたフェンリルに近付いて、フンフンとにおいを嗅いでいる。昔家で飼ってた猫も何かあったら、フンフンとにおい嗅いでる姿よく見たな。
においを嗅がれているフェンリルは、少しビクビクしているように見える。魔物の格としては……白虎もフェンリルも同じ位な気がするけど、Lvの所為かな? それともフェンリルが子供だからか?
「ダマ、おびえてるからちょっと止めろよ。まだ子供なんだから、トラウマになったらどうすんだ?」
『珍しかったもので……初めてフェンリルにあったのですにゃ。しかも子供といえば、母親から離れず、子育ての時期の母親は、鬼神の如き強さだって聞きますにゃ。なので……』
「分かったから、離れてやれって。お~ごめんな」
プルプルしていたフェンリルを膝の上に乗せてやる。そうすると従魔たちが集まりだして、フェンリルがまたおびえだしたので、追っ払った。
スライムのニコだけは大丈夫なようで、近付いてきたニコに跳び付いて戯れている。ボールで遊んでるワンコみたいだな。
遊び疲れたようで、ダマの上に伸びるような形で寝てしまった。あれ? ダマがいつもより大きいな、フェンリルのために体をデカくしたのかな?
さて、名前を何にするかな~
白いモフモフって言うとハクとかぶるんだよな。他の特徴って言うと、オオカミ? そうなると、クロとギンにかぶるんだよな。それに、俺って名前のセンス無かったの忘れてたぜ。
でも、召喚した者の努めだから名付けてやらないとな。
神話から引っ張ってくるとなると、フェンリルも確か神話の中の生物だったから違和感があるだろうし。
白い・モフモフ・オオカミ・神獣?
連想から考えるのは良くないな。そう思いニコの上に寝そべっているフェンリルを見ながら、何となく思い浮かんだ名前をつぶやく。
「ガロウ……」
安易かもしれないが、俺がそう言うとフェンリルが目を覚まして、キャンキャンと鳴いた。
「ん? ガロウでいいのか?」
めっちゃ喜んで俺に跳び付いてきたので、気に入ってくれたのだろう。
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