第971話 街をつくろう!

 島の中心に来た俺は改めて思った。


「さて、ここどうするか」


 グリエルたちには自由にしていいと言われたのだが、本当に自由にするわけにはいかないので、まずは街の中心となる領主館を作ることにした。


 イメージは、ディストピアの俺の家みたいな感じだ。


 あっ! 俺の家って言っても、形とかじゃなくて街の立地条件みたいなものだ。ディストピアの一番高い建物は、他の街で領主館にあたる街の中心にある庁舎だ。だけど、水を流すために俺の家が一番高い位置に造られているのだ。


 それをマネして、街の中心になる所に領主館兼水源を作ろうと考えている。ただ何となく、元々そこに水源があった風に作る事だけが決まった。


 なので、ごまかすためにDPで新しく水が湧き出るダンジョンを本当に街の中心に作り、その水源を守るように領主館を作るのだ。


 領主館は結構広めに作るように、グリエルたちにお願いされていたのでちょうどよかった。水源を囲むようにロの字で領主館を建て、湧き出た水は領主館の下を通って街全体にいきわたる様になっている。


 今回は、色々と面倒だったので全部ダンジョンマスターのスキルで街全体を作った。なのでかなりいい具合に出来ている。微調整が必要ない位に完璧だった。


 ダンジョンマスターのスキルで作ると、きちんと設定しない限り、スキルのシステムが勝手に判断して最適な物を作り出すようなのだ。


 俺も今回の事があるまで知らなかった。これならもっと色々簡単にできたのにな。まぁ、知らなかったから、俺たちや土木組の技能が上達したと思えば、悪い事では無いか? あの子たちの1人でも街にいれば、半年経たずに街の拡張工事ができる位には上達したもんな。


 問題なかったのだが、一応は自分たちの目で確認する必要があったので、水路に水を流して手分けをして街中を見て回った。


 水源から街に流れでた水は、上水であるため街の上を通している。所謂上水路だな。この街には井戸を作らないので、水はその上水からしか水を得る事ができない。魔法や魔導具を使わないという前提だけどね。


 で、その水が汚されると困るので、街の上に水路を通している。どんなに注意したって必ず問題を起こす人間はいるので、それなら初めから上を通して、汚される心配をなくすことにしたのだ。


 飲み水に使う水路で洗濯とかされたらたまったもんじゃないからな。


 で、その水路を流れた水は、街の壁の内側に造った溝にたまるようになっている。許容範囲を超えた水は、壁の隙間から外へ流れるように作っており、あふれる事はない。


 後、その水は、階段を登ってきた魔物に対する備えでもある。階段に水を流し込めるように水門も作ってあるので、魔物を倒す事はできなくても押し返す事は出来るように作っているのだ。


「ご主人様~今の所問題ありそうな場所はないです! でも、水路が広い範囲に張り巡らされてるので、建物造る時が大変かなって思います!」


「あ~確かに。まぁ大丈夫だろう。そこら辺はゼニスに任せよう!」


 これをゼニスが聞いていたら、こめかみを押さえてしまっただろう。だが彼は、今ここにはいない。そして俺たちに任せてしまった以上、文句も言えないのだ。


 この世界の人間には重機みたいに、力持ちな奴もいるから建物を建てること自体は問題ないだろう。問題があるとすれば、水路を壊してしまわないかだな。


「さて、街の土台は作ったから、今度は領主館を建てよっか? 確か担当は年中組のみんなだったよね?」


「お帰りなさいませ、ご主人様。領主館については、指定された範囲で作りました。一応確認してください」


 そう言って、領主館の完成予想図を見せてくれた。ダンマスのスキルを使えるタブレットで作成したものだ。


 水源を中心にロの字に造っているが、俺の予想していた物とはちょっと違った。


 水源の周りは木を生やしており、ミドリが凝っているテラリウムみたいになっている。領主館の内側は窓がガラス張りになっていて、廊下からならどこからでも見れるようになっていた。まぁ悪くないかな?


 建物は、この世界の領主館としては一般的な物らしいけど、よくわからない。知ってるのってジャルジャンとかグレッグ、ミューズの中立都市の物や、フレデリクとリーファス、他には何かあったかな?


 この世界にある領主館の数に比べれば、一握り位しか知らないけど、ダンマスのシステムに登録されたものを基本に使ったとの事なので、これが一般的なのだろう。


 領主館の周りには水がたくさんある事をアピールするために、池のようになっていた。


 まぁ分かりやすく言えば、広い池の上に領主館が建っているような形なのだ。何となく神秘的だ……でもな、何で通路がない? 船で移動でもさせるつもりか? そう指摘すると、みんなが『あっ!』という表情をしていた。


 建物に集中するあまり、他の事を考えるの忘れていたみたいだ。通路の造り忘れがその最たるものだったようだ。後、池だけで柵も塀も何もなかった。


 ここは比較的安全な街になると思われるけど、さすがに塀も柵も無いのは不用心すぎる。なので入りやすいが池を見せるという意味では柵がいいので、柵を設置する事になった。これだと簡単に侵入できてしまうので、ここに亀の魔物を放つことに決まった。


 初めは、この池は飲み水に使われる予定だったが、生き物を住まわせることになったので、池の水は下水に使われることになり、上水用の水は領主館で高い位置まで汲み上げてから、先に造った水路へ流すように配置する事で問題はなくなった。


「うん。大体は完成したかな? って言っても、土台と領主館だけなんだけどね。後、グリエルに頼まれてたのは、兵士用の建物もほしいって言ってたな。領主館の近くの段でいいよな?」


 そう言いながら頼まれていた建物をサクサクと建てていく。ゼニスには、中央に近い所に商会の建物がほしいと言われており、可能なら宿になるような所も作っておいてほしいと言われていた。


 宿は、中段から下段の間に10棟建てて、1つの宿で最大で50人まで泊まれるように造られた。普段は2~3棟だけの稼働で、冒険者が多くなったら住人にも手伝ってもらう、といった形をとるようだ。


 それにしても、ここに移住する人の仕事ってそんなにたくさんあるのだろうか?


 そんな事を思いながら、依頼されたものを建てていく。

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