第970話 クリア後の問題

「さて、お腹もいっぱいになったし、これからの事を話し会おうか?」


「これからの事って何?」


 シェリルが俺の膝の上に乗って聞いてきた。それを追いかけるようにイリアとネルも俺に飛びついてきて膝に乗ってくる。3人を順に撫でながら、


「あれ? まだ言ってなかったっけ? あのダンジョンコアを掌握したら、このダンジョンと他の入口のダンジョンとついでに、地上のフィールドダンジョンも一緒に掌握できたんだよ。理由は不明だけどね。


 それで、俺の掌握しているエリアとつなげて、ダンジョンコアを回収したんだよ。一応、このダンジョンを踏破できる冒険者がいたら、報酬になるようにSランクの魔石を置いてきたんだ」


「あっ! ご主人様が一人でブツブツ言ってた時の!」


 おっと、周りからは危ない人に見えてたのか、注意しないとな。


「で、このダンジョンを解放しようと思うんだけど、みんなの意見を聞こうかなって」


 みんなが納得してくれたようで、話し合いを始める。


 まぁ、話し合いらしい話し合いはせずに終わった。よく考えたら、俺たちでそんな話し合いをしても、結局こういう結論に至るのだ。


 解放すればいいんじゃない? 冒険者にはちょうどいいと思うよ? 私たちも訓練にはいいかもね? みたいな意見が出て、じゃぁ解放すればいいんじゃない? って意見に戻り、どうするの? という所で俺たち自身には、解放した後の事を大雑把にしか考える事しかしたことが無いのだ。


 今までは全部、グリエルたちやゼニスなんかに相談して、ちょこちょこ言った意見をまとめてもらって、それに従って色々してきただけだからな。また丸投げでいいのでは? という感じになってしまった。


 適材適所という事だな。


 何となく方針だけ決めて、またグリエルたちに丸投げに決定した。


 冒険者の視点から色々意見を出してはいるが、俺たちが普通の冒険者とは言い難いから、他の冒険者が見れば的外れな事言ってると思うだろうな。


 俺たちは全員が魔法を使えるうえに魔導具をいくらでも作れるので、水確保には苦労しない。だけど、普通の冒険者は、水確保も冒険するための必須スキルとなっているくらいなのだ。


 なので、休憩所に水場はあった方が楽だよね。魔法を使ったり魔導具準備する必要がないからね! みたいな話を普通にするレベルなのだ。


 まぁ、ズレている事は知っているのだが、指摘する事ができる人がいないので、適当に話し合って終わってしまう。


 まぁこの後、温泉に入りたい! と年少組の娘たちが騒いだので、次の日に温泉へ寄って1泊してダンジョンを後にした。


 ディストピアに帰ってからグリエルとガリア、ゼニスを呼んで島の話をしたのだが、ゼニスは喜んだが、残りの2人は苦い顔をしていた。


 そりゃそうか、どこか行くたびに街の建設や色々面倒な案件を持ち込んでくるからな! 嫌々いいながらも、それらを管理できる人間を準備するんだからさすがだな。街の開発は基本ゼニスが中心になっているので、グリエルとガリアの仕事量は大分少なくなっているのも、話が進むのが早い理由だろう。


 その陰で、俺たちや土木組が頑張ってるんだけどな。


 俺たちが基礎工事をする事によって、現代日本より早く工事が済んでしまう。そして、俺に至っては、レンガ造りであれば、魔法で家を作る事も出来てしまう。


 やろうと思えば、一夜城ならぬ、一夜街を作る事だって可能だ。作った所で、意味がないんだけどな。作れるという事実だけで、脅威になる時もあるけどね。


 ただ、今回は丸投げしようと思ったら、さすがに却下されてしまった。大陸側の整備に関しては特に問題は無いのだが、島側の整備に関してはダンジョンなので、俺たちがやらないと整備だけに数年かかると言われてしまった。


 俺たちがまかされたのは、まず島までの橋と中心地に造った空間までの地下道を作る事だ。


 地下通路に関しては、有料とするようだ。ただ、商人や住人等は割引して移動しやすいようにするそうだ。冒険者は自力で来てくださいという事で、もし通路を利用とすればかなりの金額を払う事になる予定だ。


「ご主人様~、ここから向こうまで橋を作ればいいの?」


 年少組が橋を作る権利をじゃんけんでゲットしたようで、どんな橋を造るかみんなで話会っている時に、ネルが作る場所の確認をしにきたのだ。


「そうだよ。グリエルに言われてるんだけど、橋は片道馬車2台分くらいの広さにしてくれってさ」


「片側馬車2台分?」


 ネルが可愛く首をかしげる。


「そうだよ。馬車が1台と人が歩ける場所を作ってほしいんだって。すれ違う時とかに危ないから、初めから行きと帰りの橋を作ってほしいんだって」


 なんとなく分かったような顔をして、みんなに伝えに行ってくれた。あれ? この話ってみんなにしてなかったっけ?


 しばらく話し合うみたいだったので、俺はビーチっぽい所にビーチパラソルを刺して、椅子を置いてブッ君で小説を読み始めた。数分もすると、暑かったのかダマとシエルが日陰に入ってきた。こいつらは小さいから気にならないけど、クロとギン……お前らは、あっちに行け!


 熱いからのんびりしてるのに、お前らが首を俺の上にのせるから暑いんだよ!


 どかそうとしても、梃子でも動かんと言わんばかりに頑ななので、仕方がなく涼しくする魔導具を取り出して起動させる。そうすると、今度はコウやソウも俺の椅子に登ってきて、ニコとハクまで俺の上に……


 なんで俺はこんな風に従魔まみれになってるんだか。しばらくすると、グレンが飛んできて何をしてるんだ? という顔をしていた。うん、助けてくれ。お前までくるな! お前の羽、地味に熱いんだよ!


 従魔たちに集られてグデーッとしていると、橋の構想が終わったようで年少組が確認のために俺の所へ来た。


 どんな橋を作るのかと思ったが、普通の橋だった。普通と言っても、この世界の基準からすれば凄い物なんだけどな。


 レンガ造りのアーチがいくつあるか分からない程沢山ある橋だ。ただ、アーチ1つ1つがかなり大きく作られていた。魔物が通る事を前提としたサイズだという事だ。それにしても、水深10メートル以上ある所にこんな橋を作れる物だのだろうか?


 橋を作り終わってから地下道も作り、島の中心地へ到着する。

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