第969話 やっとクリアした……

「「「「ご主人様!」」」」


 みんなが俺の方へ駆け寄ってくる。何でこんな方法を知っていたのか、聞きたそうな顔をしているのが分かる。予想通り俺は間違っておらず、次々に同じ質問をされた。


 何というか、何度か間違った指示をしてしまって、変な考えが頭によぎり、出来るのではないかと思いやってみたら成功した。と話したら『また?』みたいな顔をされて、ちょっと泣きそうです。一応俺が、倒すのを簡単にしたのに……


 でも、それで簡単に倒せたのだからと言って、ミリーやリンドが皆にそんな顔をしないと注意をして、俺への冷たい視線は何とか治まった。


「ほら皆、言いたい事はあるかもしれないけど、ここはまだ戦闘エリアよ。ピーチ、戦闘指揮とらなくていいの? みんなもそんな事している場合じゃないわよ!」


 リンドの叱責がとび、弛緩していた雰囲気が一気に引き締まる。ピーチもハッとした表情を浮かべ、隊列を組みなおす指示を出した。


 この50階のボス部屋は、ボス以外にも雑魚が湧いているため、まだまだ油断はできないのだ。ただ40階と違う所は、階段まで一直線でいけるという所だ。


 理由は簡単。50階から49階への階段と、50階から51階への階段が直線で行き来できるからだ。氷山と火山の中間である草原を進めば、階段にたどり着くので40階あたりに比べれば、戦闘回数も少なくて済むはずだ。


「ここに長居する必要もありません。斥候班先に進んで敵の有無を確認してください。みなさん、一気に駆け抜けますよ!」


 ピーチの指示が出て、行動が開始される。51階までに敵に遭遇した回数は、4回と予想していたより回数は多かったが、火山エリアの魔物は氷山エリアに、氷山エリアの魔物は火山エリアに入ろうとしなかったため、戦闘が回避できている。


「到着したな。今回は疲れた気がする。時間的にはそんなにかかってないと思うんだけどな」


 51階のコアルームだと思われる場所に向かって階段を降りながら、そんな事を口にした。


「私たちはそれほど感じていませんが、ご主人様は、ダンジョンに強引に穴をあけるために、大量に魔力を何度も消費して、倒れる寸前まで頑張ったから疲れているのではないでしょうか?」


 そう言われて、俺がここのダンジョンに入ってやらかしてしまった事を思い出して、そりゃ疲れるなって思ってしまった。


 今までいくつかのダンジョンに潜ってきたけど、ここまで無理をしたことは無かったと思う。何というか肉体的な無茶ではなく、精神的な無茶を何回もしてしまったんだな。でも、みんなが安全に休むためにやった事だから後悔はない!


 そうこう話しているうちに、51階へ到着した。


「ん~確かにキラキラした宝石みたいなのがあるな。これってダンジョンコアなのか? 俺にはただの宝石に見えるんだが、無茶苦茶大きいダイアモンドみたいな感じかな?」


 俺達の視線の先には、俺の知っているダンジョンコアではなく、綺麗にカットされた球体に近いダイアモンドみたいな、透明でキラキラした物体がそこにあった。


 掌握できるかやってみるか。宝石みたいな物に触れて掌握をしてみる。


「あっ! 出来た。これがダンジョンコアなのか? ダンジョンコアの形なんてどうでもいいか。それよりこのままここに放置するわけにはいかないよな。このダンジョンを解放するとなると、いずれ到着できる冒険者がいるかもしれないもんな」


 このままダンジョンコアを置いておくわけにはいかないのだが……このダンジョンを出てもすぐにフィールドダンジョンがあるんだよな。困った。


「まぁ、この先の事はシルキーたちと合流してからにしようか。ここからシルキーたちのいる部屋までの経路を……えっ?」


 マップ先生を開くと、マッピングした覚えのない部分が表示されていた。確認してみると、他の3ヵ所の入口から入る方のダンジョンの構造まで表示されていた。どういう事? 訳が分からず、色々いじっていたら、地上のダンジョンフィールドまで俺の領域になっていたのだ。


「って事は、向こうの陸地の俺の領域とつなげれば、よっし! これで、ここにダンジョンコアは必要なくなったな! じゃぁ、ここまで到達できたパーティーには、Sランクの魔石が手に入るようにセットしておこうか」


 ダンジョンの最下層に置いてあれば多分持ってくだろう。それにダンジョンコアがダンジョンを維持するのに必要不可欠なんて知ってる人はまずいないからな。金目のものがあれば持ってくだろう。せっかく最下層に着いたのに何もなしじゃかわいそうだからな!


 ダンジョンコアのあった所にSランクの魔石を置いて、シルキーたちの待つ野営地コンテナに向かう。


 無駄なDP消費だが、俺には問題ないのでゴリゴリっとDPで通路を作って、49階から50階へ行く階段まで一気に移動した。


「ただいま~問題なくダンジョンを掌握できだぞ~」


「「「「お帰りなさいませ」」」」


 シルキーが出迎えてくれた。


「やっぱりこの感じは、ご主人様がダンジョンを掌握されたのですね」


 ん? シルキーは謎のシックスセンスによって、俺がダンジョンを掌握したのに勘づいていたようだ。よくわからないけど、把握できる何かがあるのかな?


「お腹空いた~、でもシャワー先に浴びるから、食べる物を何か準備しておいてほしい」


「はいはい、分かりました。ガッツリ系がいいですか? さっぱり系がいいですか?」


「ん~、この後は何もないから、ガッツリ系でお願い!」


 わかりました~と返事をして、俺たちがシャワーに入っている間に何か準備してくれるようだ。何を出してくれるのか楽しみだ!


 熱いシャワーを浴びて体を洗った後に、冷たいシャワーに切り替えてキュッと身を引き締める。


 着替えてから食堂へ向かうと良いにおいが漂っていた。これは醤油のにおいが強いから、和食だとは思うけど、お肉のにおいもするから、丼系?


 席に着くと、シルキーがみんなに希望を聞いていた。丼のメニュー表を持ち出していたので、俺が想像した通りだ。だけど、予想外のメニューもあった。


 丼は丼なのだが、海鮮丼も準備されていたのだ! 見つけてしまったら食うしかないよな!


「えっと、この海鮮てんこ盛り丼をよろしく!」


 ウニ・イクラ・ネギトロの三色丼の上に、ホタテ・車エビ・甘エビ・サーモン・大トロ・中とろ・赤身・ヅケ・タコ・イカ……と、とにかく大量に色々乗せられている一品だった。


 あまりにのせられている物が多すぎて、別の皿に取り分けてからじゃないと、お米が食べれなかったけどね! こんな贅沢なんてなかなかないよね!


 でも、かなりお腹が空いていたのか、ぺろりと平らげてしまい、まだ食べたい気がする。という事で、天丼を注文した。個人的に一番好きなかき揚げオンリーの巨大かき揚げ丼!


 出された時は、食べれるかなって思ったけど、何の問題もなく食べれました!

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