第973話 帰還した

「という事で、忘れてたフェンリルの召喚をして、名前はガロウってなづけたから可愛がってあげてね」


 可愛い小さなモフモフだったので、妻たちには大人気だった。特に年少組は、跳び付かんばかりに目を輝かせていた。でも、その視線を感じてガロウが、俺の陰に隠れてしまったのは仕方がない事だろう。


「みんな、まだ赤ちゃんみたいだから、驚くような事はしないでね」


 ビクビクしているガロウを俺の膝に乗せて、みんなに顔が見えるように脇に手を入れて前を向かせる。少しジタバタする様子が見られるが、この娘たちがお前の家族になるんだぞ! っと言い聞かせてしっかりと見るように促した。


 少し時間が経つと俺の言った事が理解できたのか、おびえる様子がなくなり、俺の膝を降りて妻たちのにおいを順々に嗅いでいった。最後にシルキーのにおいを嗅ぐと、その場に座ってめっちゃ尻尾を振り始めた。


 まさか! 美味しいご飯をくれる相手だと理解してるのか? 口からよだれが垂れているように見えるのだが……気にしたら負けか、従魔全員シルキーには逆らわないからな。


 そして、シルキーが従魔用に作っていた干し肉を取り出すと、ガロウの尻尾の速度がさらに上がった。許可を出すと勢いよく噛り付いた。ハグハグと赤ちゃんらしからぬ音を立てて食べ始める。うん、美味そうに食うな。


 お腹いっぱいになったのか、俺の膝に戻ってきて丸まって寝始めた。ハクがしょんぼりした顔をして、俺の隣に来て丸くなっている。さすがに赤ちゃんのフェンリルであるガロウを押しのけてまで、俺の膝を奪おうとはしないようだ。


 でもな、その顔は止めてやれ。恨みがましいような視線をするな! 今はガロウが寝てるからいいけど、起きてたらトラウマもんだぞ!


 俺が召喚したためか、ガロウの懐きがいい気がするのは気のせいだろうか? 俺が動物に好かれているだけだと信じたい!


 ガロウを召喚してから3日、フェンリルの生態が少しだけ分かった気がする。おそらくだけど、インプリンティングのような物で、初めて見た俺を親だと思っている可能性があるとの事だ。


 まぁ、ダンマスのスキルで召喚する場合は、基本的にインプリンティング……俺の記憶を少し引き継いでいる事もあり、刷り込みが強いのは否めない。


 それ以外にも、ハクやニコ、その他の従魔には見られなかった特徴があった。俺から四六時中離れようとしなかったのだ。離れたとしても食事の時だけで、しかも俺が視界内に入ってないと駄目なようだ。


 食事は、特に食べれない物は無く、何でもバクバクと食べている。まぁ赤ちゃんという事もあり、食事の回数が多いのはしょうがない事だろう。今は1日6食~7食くらいだ。


 寝ている時間も長いので、Lvあげはもうしばらく後になりそうだ。元々強い魔物なので、Lvが低くても俺らもいるし何とかなるだろう。


 3日間は街の中を歩き回り、思い付きで建物を建てるといった事をしていた。俺がグリエルたちに怒られ……ゲフンゲフン……ここの住人になる人たちのために、残って作業をしたことによって、更に街っぽくなっていた。


 住人用の建物もいくつか建てている。これは、俺の魔法の実験とみんなの魔法イメージの向上を図って、行われた特訓で建てられたものだった。この話から分かるように、特訓で作られたという事もあって、普通の住宅が50軒以上建っている。


 1人2軒は建ててるからな。なので、既に300人は住める規模の建物が準備されたことになる。宿も合わせればかなりの数が住めることになる。この後の事は基本丸投げだから気にしたら負けかな。


 3日間のんびりしてから、俺達はディストピアへ帰る事にした。その道中、新しく海岸に造った街の様子がすでに街になっていたのにはびっくりした。もう2000人以上が移住してきており、生産活動も行われているとの事だ。


 漁業に力を入れているようで、海に強い魚人の冒険者もディストピアから出てきているようだ。話を聞くと冒険者というよりは、海の魔物を退治する兵士のような感じだった。でも、報酬がきちんと用意されているので、兵士というよりは傭兵かな?


 ここで獲られた海産物の大半は、ディストピアを通して周辺の中立都市に売りに出されているようだ。


 ディストピアでも海産物はとれていたが、輸出の枠が小さかったためお金持ちの食べ物だったのだが、この街ができた事によって、一般市民にも食べられる値段で流通し始めた。かといって、ディストピアの海産物の価値が下がる事はなかった。


 そんな感じで発展している街を眺めて、モーリスとテオが領主館にいたので少し話をしてからディストピアへ出発した。


 領主館に入る前に、俺の事を知らない門番と一悶着あったが、職務に忠実だったという事で不問にしているが、モーリスとテオは青い顔をしていた。横暴な態度を取ったわけでも、袖の下を要求したわけでもないので、別にそれくらいで怒らないけどな。


 ディストピアに着いた時には、もう夜になっていたのでグリエルたちへの報告は、明日にしようという事になり、ダンジョン農園直通の線路を通り家にもどってきた。


 久々の家は落ち着くな。シルキーから1時間後に食事にするので、少しくつろいでいてくださいと言われたので、俺は自分の部屋に戻って少し横になる事にした。


 それを察知した、ニコとハクが定位置について、ガロウは足元をトコトコと付いてきた。そういえばガロウは、移動する時は自分で歩きたいようだ。


 部屋に着くと我先にとベットの上に移動したニコとハクを見て、ガロウも俺のベットの上に上がって、においを嗅ぎまわってから、しっくりくる所に落ち着いていた。場所は、俺の枕元だった。なんか理由でもあるのかな?


 撫でているうちに俺も寝てしまい、いつものように起こされて夕食を食べて風呂に入った。


 ガロウも他の従魔と同じでお風呂が好きだった。毎日洗って大丈夫かな? って思ったけど、魔獣だし問題ないだろうという事で、一緒にお風呂に入る時は毎回洗う事にしている。


 綺麗に乾かしてやると、眠気の限界なのかウトウトしだしたので、ベットの上に連れて行ってやった。趣味部屋に行くわけにもいかないので、寝室にあるテレビを使って久しぶりにゲームをする事にした。


 懐かしいゲームがやりたくて、ロマン〇ング・サ・ガ2を起動してしばらく遊んでから寝た。

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