第886話 完成

 拠点の床が完成した翌日。拠点造り4日目……今日は建物を建てていく事になった。


 普通は平面の木の板の上に建物を建てるようなことはしないのだが、クリエイトゴーレムを使っているため、無茶な建築ができるのだ。床の作り方以外は、普通の建て方をすると言っていたが……普通とは何ぞや?


 4日目からは全員で建物を建てる事になった。


 島の魔物は、この3日間沸く数が変わらなかったので、俺たちの殲滅速度で3日狩っても変化が無いという事で、普通の冒険者や兵士たちがある程度数を出して狩りしても、しばらくは問題ないと俺が判断した。とりあえず、レベル上げを行うのに問題ないと判断している。


「さて、4日目の作業はみんなで開始するぞ~」


 俺が掛け声を出すと、みんなノリがよく「お~」と言ってくれた、嬉しい。


「といっても、今日の作業は、カエデとリンドが中心になって指示を出していくので、俺たちはそれに従って作業を進めていくぞ!」


 カエデとリンドが指示を出し始めた。まずは、墨打ちから開始した。昨日の夜、建物のサイズを聞いてきたので、大体の大きさを把握しているので、迷いなく寸法を墨打ちしていた。


 昔テレビで見たことあるような、大工さん達の仕事みたいな事をしている。ただ建物の大きさが、普通のサイズではないので、規模がおかしく感じる。


 墨打ちだけで2時間以上かかっていた。お昼を食べて次は柱を建てて骨組みを作っていくようだ。


 俺は大きい建物は、1階ずつ作っていくものだと思っていたが、木造建築で造るからという事で、骨組みだけで4階分の建物を一気に造るようだ。


「ここまで大きい木造建築を造っている所なんて見た事ないから……こんな光景を見るのは初めてだな」


 俺は一日中、クリエイトゴーレムを使って、木材の加工と魔核を作り続けていたので、ずっと骨組みが組まれていく様子を見ていたが、改めて離れて船の上から見ると……


「凄いな。足場も作ってないのに、あんな高い位置まで木材を持ち上げて組む事出来たな」


「あれ? シュウはこっちに来てから、建築現場見るのって初めて?」


「いや、何度か見た事はあるけど、ここまで大きいのは初めてだからな。テレビでも木造でこのサイズは見た事ないな。鉄骨とかで造っているのは、見たことある気がするけどね。クリエイトゴーレムで強化してるけど、高く組んだら歪んだりしないのか?」


「強化してなかったら、さすがにゆがみがでるよ。かなり簡単なつくりになってるからね。でも、明日は少し補強してから3階から上も骨組みをしていくよ。多分明日の終わりころには、壁に取り掛かれると思うよ」


「早すぎね?」


「作業する人数も人数だし、木材の加工が完璧だからかなり時間を短縮できてるよ。一番は、修復機能ね。あれは本当に助かります。しっかりと組んでおけば、戻ろうとする力で更に強化されますから。この2つの要素が無ければ、10倍くらい時間がかかってもおかしくないんだよ」


 どうやら、クリエイトゴーレムで加工する方法は、かなり役に立っているようだ。それ以上に魔核による強化や修復機能もかなり役に立ってるようだ。


 しばらくは加工と魔核の作成をする事になるだろうな。壁や床も全部木材で作るわけだしな。


「私たちは先に行くね。一応壁や床の木材のサイズとかを決めておきたいからね、ちょっと話を詰めようと思ってね。できるだけ同じサイズの方が加工が楽でしょ? 他にも自動修復以外にも、つけてほしい機能も考えているからね。内容が決まったらよろしくね!」


 リンドとカエデが、どうしようかと話しながら自分たちの部屋に戻っていく。あの様子だと、パソコンを使って作業するんだろうな。いつの間にか俺より使えるようになってるんだから、学習能力が高すぎだろ。


 そこから1週間は、壁や床、天井などをどんどん創っていった。


「う~む、10日でこのサイズの建物ができてしまうのか」


 俺の目の前には完成した拠点がすでに完成している。


「じゃぁ水魔法の使えるみんな、ちょっと強い雨が降るように魔法を使ってみて~」


 カエデから水魔法で雨を降らせるように指示していた。


 何故そんな事をするかというと、いつもと造りが違うから水漏れなどがないか、チェックのために行う作業のようだ。屋上や壁には防水加工をしてあるが、思わぬところから水漏れがするかもしれないから確認するということだ。


 1時間程交代しながら魔法を使い、他のメンバーは建物の中に入って水漏れがないか確認していた。


 特に水漏れによる問題はなかったが、保温機能が高いためか少し暑く感じたとのことだ。理由はわからなかったが、エアコンのような冷暖房機能のある魔道具が必要かな? そんな事をつぶやきながら悩んでいると、ミリーから、


「あまり便利にし過ぎない方がいいと思うよ。お風呂と食事がしっかりできるのだから、それ以上は不要かと。もし兵士がくるのなら、あまりいい影響を与えないと思うわ。これだけの設備があるのだから、十分です」


 あんまり便利にするのは良くないらしい。確かに便利になりすぎるとダメだよな。俺、今地球に戻れって言われたら全力で拒否するもんな。だって地球の好きな物を召喚できるし、地球より便利だし、この世界の生活レベルは低いけど、俺の生活空間は地球以上だからな。


 お金を気にしなくていい生活なんて、地球じゃできないもんな。もうね、可愛い妻もたくさんできたから、絶対に帰りたくない!


 っと、話がそれたな。完成した建物を見て、感慨にふける。


「建物造ったのは良いけど、どうやって島まで移動するようにしようか? つり橋はさすがに長すぎてむりだな。せり上がり式の橋とかにするべきか?」


「つり橋ってディストピアの門の外にあるあれ?」


「そうだな。って、この世界につり橋ってないのか?」


「ないわね。砦の場合は堀に石橋を作って入ってこれる場所を限定するってことはあるけどね。人同士の戦争は場所を決めて戦うから、つり橋みたいなのは必要なかったのよね。そういういみでは、地球って所はこっちの世界に比べて血なまぐさかったんだろうね」


 確かに何万人って死んだ戦争がいっぱいあるけど、そのせいで色々進化してきた歴史があるからな。戦争は、人も死ぬけど技術が進化する側面もあるから、戦争を推奨する人間がいたって聞いた事もあるしな。


「とりあえず、レイリーに話をして軍事訓練、特訓? をしてもらって最終判断をするか」


 面倒な事は丸投げする事に決めた。

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