第884話 誤算

 湖に出て3日目は、変な島の調査を簡単にして1日が終わった。


「シュウ、明日から拠点造りをするでいいの?」


 甲板で3日連続で行ったバーベキューが終わった後に、カエデから質問をされた。


「そうだな。拠点を造る予定で考えてるよ。結構行き当たりばったりな感じだけどな。面白そうだから造ってみたいんだよ!」


「それは構わないけど、材料はどうするの?」


「骨組みや床に使うのは、召喚したそのままのアダマンタイトを使う予定。建物の内装も召喚した板をクリエイトゴーレムで、修復機能や除湿加湿機能なんかをつけて造ろうと思ってる」


「なるほどね。今回は、全部DPで賄う予定って事ね。それなら納得だわ。加工に関しては気にする必要がないって事だものね」


「島の上じゃないからDPで建物を建てられるけど、それだと面白くないから、今回は召喚した建材を使ってみんなで造るよ! 規模の大きい工作って所だな!」


 どう考えても工作で済むレベルを遥かに凌駕しているが、突っ込む人間はここにはいない。


 明日の打ち合わせをしてから、お風呂へ入り、みんなで映画を見てから寝た。


 次の日起きた時には、お昼前だった。昨日はシルキーも一緒に映画を、日をまたいでからも見ていたので、夜食を軽く食べて寝ている。朝食は食べない前提で話が進んでいたのだ!


 昼食を食べて、本日の行動を開始した。


「では皆さん! 秘密基地を作りますので、各人に役割を割り振ります。まず、シュリと姉御組以外は、拠点を造る最寄りの海岸を制圧してください」


 シュリが何でそこに入らないのか質問があったが、素直に力仕事があると言ったらみんなが納得してくれた。


「次に、土木組は姉御組の3人の指示に従って、拠点と島の間に深い溝を掘ってもらいます。なので、水中で作業できる格好で潜るように! 水の中の周辺警戒はシエルに任せる。責任重大だぞ!」


 土木組は、俺の指示にやる気をみなぎらせている。空回りしないといいけどな。


「俺は、拠点の土台になる部分を作成して、シュリに手伝ってもらいながら、最低でも今日中に床までは造る予定だ。特に上陸組は危険だと思ったらすぐに撤退をしてくれ。作業の途中で、バッハとリバイアサンが来るから、撤退も容易に出来るはずだ」


 細かい打ち合わせをしてから、作業を開始する。


 俺はまず海に潜るために着替えをした。シュノーケルにフィンを着けて潜りやすい格好になる。念のため水中で使えるボウガンのようなものを作って背負っている。


「シュリは、ちょっと船で待っててくれ。先に海の中で土台を整えて来るから! 危なそうな魔物がきたら、槍でも投げて倒してくれ」


 シュリにとんでもない事を言っているが、シュリの力を持ってすれば水深10メートル位の位置であれば、槍が貫通をするからな。何の問題もない!


 海岸からおよそ70メートル。水深は、15メートル近くあった。


「思ったより深いじゃん! 素潜りじゃ厳しいな。それなら、酸素ボンベを召喚して少しだけ潜ろう!」


 潜る準備をしていると、小さいままのシエルが泳いでいる……というより浮かびながら近付いてきた。


 シエルの話では、急激な水圧の変化は身体に良くないとのことで、水を司る霊獣らしく、水圧変化に対する守りの魔法を使ってくれた。水中呼吸が出来ないかきいたら、物理的に無理だから出来ないと言われた。


 15メートル下にある底に向かって泳いでいる。


 本当ならエリア掌握してるのだから、地形だって自由に出来るのだ。でもそれをしないのは、魔法に頼ったり、DPで素材を出したりしても、自分の手で造ってみたいからだ!


 底について、魔法を使うためにイメージする。


 範囲は建物より広め。大体60メートル四方。高さはだいたい14メートル。水深1メートル程になるようにロックウォールを使用する。


 普段と違い水中で魔法を使い、視界が悪い中強引にロックウォールを使用したため、ごっそりと魔力を使ってしまった。ちょっと気持ち悪い。でも水面に向かわないと。


「うっぷ、潜って魔法を使っただけなのに、船酔いみたいになるなんてな。ぎぼぢわどぅい」


 俺の様子が変だと気付いたシュリが、飛び込んで俺を船に引き上げてくれた。


 スカーレットの出してくれた、柑橘系の冷たいジュースが美味い!


 しばらく休憩してから作業を開始する。


「まず始めに、基礎となる部分だよな。60メートル四方の四隅にアダマンタイトの柱を立てて、水面から5メートル位上に床を作ればいいかな?」


 直径50センチメートルのアダマンタイトの円柱を10メートルの長さで召喚する。2本目を召喚してから気付いたが、そのままでは地盤が緩すぎてアダマンタイトの円柱を支えきれないと……魔法で作った土台に更に強引にクリエイトゴーレムで干渉し、魔核を複数埋め込み構造強化と修復機能をつけた。


 召喚して気付いたが、アダマンタイトの円柱は24トンを超す化け物だった。ここまで大きなサイズを召喚した事が無かったので重さを失念していた。


「さすがにこれは使い道が無いな。DP的には誤差の範囲だし破棄しよう」


 素材としては勿体無く感じるが、これを再利用するより新しく召喚した方が、安く上がるので気にするのをやめた。てこの原理も使って何とか海底にそのまま放棄する。


「きちんと重さを計算してから召喚しないと大変な事になるな。どんな厚さでも変形しにくいって言うのが、アダマンタイトの特質なんだから、中身が全部詰まっている必要はないよな? 板か棒状の物しか召喚できないから……それを考えると、4枚の板をくっ付けて四角のパイプを作れば重さを減らせるか?」


 声に出して考えをまとめていく。こうしていると、俺の身内は考えに没頭している証拠だと判断して、邪魔をしてこないので助かる。


「アダマンタイトの比重は確か、金の2倍くらいだったから水の38倍か? 50センチメートル角の四角パイプを作るとしたら、縦49センチメートル、横1センチメートル、長さ10メートルで……」


 電卓をたたいて計算をすると、


「約1.86トン。さすがに金属もここまでのサイズならこれだけ重くなるか。パイプにしたら7.4トンだもんな。重すぎるな。長さを半分にして継ぎ合わせても3.7トンずつになるだけだもんな。いきなり困った問題になってしまった。さてどうしよう?」


「ご主人様、横から失礼します」


 普段、考えに没頭している時は声をかけてこないのだが、今日のシュリは声をかけてきた。


「コストを気にしないのであれば、ミスリル合金を使ってアダマンコーティングした物にしてはいけないのですか?」


「ミスリル合金なら鉄の半分くらいしか重さがないから、重さ的には問題ないけど、アダマンコーティングは、さすがに薄すぎて変質を完璧に防げるものではないからな~」


「クリエイトゴーレムで作って、魔核を埋め込むのであれば問題ないのでは? 武器として使うわけでは無く、土台の一部なんですよね?」


「確かに! 魔核で強化して修復機能をつけておけば問題ないな。それで計算してみよう。10メートルで1.5トンくらいか? 滑車を上手く使えば更に半分……シュリ、1トンくらいまでならいけるか?」


「持ち上げるのであれば、持ち上げられますが、さすがに長い時間1人では厳しいですね」


 みんなに手伝ってもらうべきか?

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