第883話 変な島
海に出てから3日目。
現在昼前。昨日とは違う島に上陸している。
「スプリガンは、何でこんな島を作ったんだ?」
島の直径は大きいところで、およそ5キロメートル、島の外周は入り組んでいるので22キロメートル程だ。いびつな形をしてはいるが、島ということを考えると、円と言っていいと思う。
それだけなら、湖に浮かぶ離島ということになるのだが、生態系が滅茶苦茶と言ってもおかしくない状況なのだ。
強い魔物が頂点にたっているのではなく、魔物が産まれやすい魔力溜まりがあるのか、魔物がどんどん新たに生まれては殺し合うサバイバルな島なのだ。
ダマが本来の姿に戻れば樹海では襲ってくる魔物はいないのだが、この島は相手が圧倒的に強くても挑んで来るのでかなりうざい。
倒しても倒しても、次々に魔物がわいてくるのだ。俺のダンジョンでも、魔物が産まれるサイクルはこんなに早くないのに何でだろうな?
「自然発生したフィールド型のダンジョンだったりするのかな? ここだけエリア掌握出来てないし、そう考えるのが妥当かな?」
「シュウ君の言う通りかもね。ここまで極端な例は聞かないけど、魔物の領域の中には、フィールド型のダンジョンが存在する場所もあるって聞いたことがあるわ。又聞きになるから、本当かどうか分からないけど、状況的にあってもおかしくないと判断されるだけの事はあったみたいだしね」
樹海の中というだけのことはあって、出てくる魔物はかなりの強さだ。ディストピアでも、中級程度のパーティーではきついと思われる。それだけの密度があるのだ。1体ずつ来てくれるのであれば別だろうけどね。
ここで狩りを成立させるためには、パーティーでまとめて3~4匹を相手にできるだけの実力が必要だろう。最低限それくらいは必要だ。
でも、フィールド型のダンジョンなら、レベル上げには持って来いの場所ではあるな。
「なぁ、ミリー。ここってレベル上げに向いている狩り場だとは思わないか?」
「確かに、魔物の強さを除けば、これだけ魔物が湧き出るし、本当にダンジョンなのであればレベル上げに向いていると思います」
「シュウよ、向いているかもしれないけど、さすがに拠点もなく狩り続けるのは厳しいと思うぞ」
リンド言う通り拠点がなければ厳しい環境だよな。と言っても、島の上に拠点は作れない。作ったところで拠点の中に魔物が湧く可能性があるのだから、安全な拠点とは言えないだろう。
「拠点だけの問題なら、解決方法はあるけど、そこまでして狩り場にする意味はあると思うか? どうなんだろうな」
「シュウには、解決方法があるの? エリア掌握もできないみたいだけどさ」
「島の上に拠点を造らなければいいだけの話だよ」
興味津々で会話に入ってきたカエデが驚いた口調で拠点のことを聞いてくる。
「クリエイトゴーレムがあるんだ、湖の上に拠点を造るのだって難しいことじゃないさ」
俺の答えを聞いて、3人が納得する。
「ただ湖の上に造るだけじゃ危ないけどね。例えば、島から50メートル程離れた位置に拠点を造って、間には深い溝を掘って、魔導具の橋や船とかで島との行き来が出来れば問題ないと思うよ」
姉御組の3人は、俺を置き去りにして話し合いを始めた。
こうなると、俺の声なんか聞こえないので、周りを警戒しながら前で戦っているみんなの様子を眺める。
1人でも問題なく倒せる魔物が相手なので、何の問題もなかった。油断せずに、最低でも2人以上で連携をとって魔物を倒している。安心できる安定感だ。
ドロップ品の方はどうだろうか?
「ピーチ、ドロップ品はどんな感じだ?」
「そうですね。魔物同士の競り合いでLvが上がっている魔物からのドロップ品は、普通に比べて品質はいいと思います。ただ、手に入るのは樹海の魔物と変わりはありませんね」
ここも樹海の一部ということか、出てくる魔物が同じなんだから当たり前か。
さて、どうしたものか?
もしここに拠点を造るとしたら、どの位の規模にするべきかな? 小さいよりは多少大きい方がいいだろうから、村位の規模か? 300人位収容できれば十分だろうか?
と言っても、ここに住む人はいないから、全部が宿みたいな形になるのがベターかな? 1つの部屋に二段ベッドが2つで4人で、75部屋で300人か?
4階建ての屋上付き、1階はキッチン、食堂、倉庫、洗濯室、お風呂でちょっと長方形かな?
2~4階は、コの字形にして、上下の線の部分が8部屋ずつ、縦の線の部分が9部屋の合計25部屋の3階分で75部屋かな? 四隅が階段で部屋は内側? 何かあったときのために外周は廊下にすべきだろう。
どうせ、寝るときにしか使わないのだから、日照権は無視だ!
1階の上は人工芝生でバーベキューも可! 夜番は屋上にて待機と言うところか?
どうなるかも分からないのに、宿舎の構想をしてしまったな。まぁ作る作らないは関係なしに、秘密基地みたいなのを想像するのって楽しいよね!
あっ! 夜番が遠距離攻撃がない人が担当になった場合の、攻撃方法もあった方がいいか? 小型化したバリスタを置いておけば大丈夫だろう。
「……ん様! ご主人様! やっと気付かれましたね。ミリーさんが呼んでますよ」
ピーチに声をかけられているのに気付き、意識が現実に復帰した。言われた方向を見ると姉御組の3人が手をふっていた。
慌てて近寄り、話し合いの結果を聞いた。
「シュウが簡単に拠点を造れるみたいなことを前提条件とするね」
そういって、リンドが話し始めた。
簡単に拠点が造れるなら、造ってから運用して決めればいいのでは? という結論だった。
別にレベル上げは、冒険者だけでなくディストピアの兵士もするのだから、まずはディストピアの施設として造って、安全に配慮しながら兵士に狩りをさせてみればいいんじゃないか? という事らしい。
一種の訓練所みたいな立ち位置でやっていこう。今さっき妄想で造った宿舎の話を伝える。
一つひとつの部屋は、廊下に面している部分が約5メートル、奥行きが4メートル。入口は部屋の真ん中。入って両サイドに2個ずつ荷物置き場。ロッカーが並べて置く。
入口から両奥に二段ベッドを置く。サイズは、縦2.5メートル、横1.5メートルの大きめのベッドだ。中にはかなり大きな体の人もいるので、大は小を兼ねるではないが大きく作る予定だ。で、ベッドとロッカーの間、寝るときの足元にパーテーションというか、壁をベッドのサイズに合わせてつけて、1部屋完成。
トイレは各階の、コの字の線がくっついている角2つに設置している。その部分だけ、通路以外に部屋の奥行き分の4×4メートルのスペースがあるので、その部分に作っている。もちろん1階にもトイレを準備しないとな。
コの字に造った宿舎の内側が40メートル、45メートル、40メートルで、廊下が大体幅3メートルで、外側が47メートル、52メートル、47メートル程になる予定だ。天井は大体3.5メートルを考えているので床の屋上の高さは、15メートル程になる予定だ。
クリエイトゴーレムで作るため、かなり無茶な設計が可能だからこそできる建物だな。建物の下には街で採用している地下下水のようにスライムを入れておくスペースを作る予定だ。そこで浄化した水を海に流すのだ。
水はもちろん完全に魔導具頼りになる。一応2種類の魔導具を準備する予定だ。水を生み出す魔導具と、海水から濾過して真水を取り出す魔導具の2種類だ。基本は濾過する魔導具を使用して、緊急時のみ水を生み出す魔導具を使用する事になるだろう。
いや~建築学が分からなくても、クリエイトゴーレムで強引に作れるから妄想がはかどって楽しい! あっ、実際に造るから妄想じゃなくなるか?
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