第882話 湖が……
海鮮バーベキューを楽しんだ翌日の午後、俺たちはまだ湖の上にいた。
昨日バーベキューをした後に寝たときは、近くにディストピアが近くに見えていたのだが、今は見えなくなっている。
「ん~、この湖ってこんなに大きかったっけ?」
素直に思った事を口にしてみた。そうすると、近くでお茶の準備をしていたミドリが俺の呟きに応えてくれた。
「あれ? それはだいぶ前に報告書があがっているはずですが、お読みになられてませんか?」
覚えがなく、読んでないことを素直に伝える。
「そうですか。なら、ここでもう一度報告をしておきますね。湖を大きくしたのは、スプリガンの皆さんから私が相談を受けたのが始まりでした」
ミドリがそう言って話し出した。
ことの始まりは、湖を管理しているスプリガンからミドリに相談があったのだ。
内容としては、湖もかなりの広さがあったが、それでも限られた空間でしかなかったのだ。
その限られた空間の中で俺のいったような海を再現するには無理があったため、ミドリに相談があったとのことだ。ミドリだったのは、たまたま近くにいたかららしい。
相談して、大きくすることが決まったのは良かったのだが、いざ大きくしようとしたときに問題があったのだ。
湖を広範囲に広げようと思うと、管理の面で手が届かなくなる場所が出てくることがわかったのだ。
DPで召喚した魔物たちは、ある程度こちらの制御が効くが完璧では無かったのだ。
湖を大きくすれば、管理に使う魔物が増え、生態系を壊すくらいに大量に海の生物を補食し始めてしまったのだ。
湖を大きくした割合に合わせて増やした魔物が、予想以上に繁殖してしまったのだ。なので、魔物を間引きすると、今度は外海からダンジョンを通ってやってきた魔物が繁殖してしまったのだ。
悩んだスプリガンとミドリは、一旦前の大きさに合わせて壁を作り、大きくする前の状態に戻したそうだ。
しばらくして、ミドリが思いついた方法を取り入れると、予想以上に効果があり湖を大きくしても問題がなくなり、湖の大きさは昔の数倍はある。樹海の中心にある山の外周の4分の1に達している。
確かにそれだけ大きくなってれば、ディストピアが見えなくなっていても不思議じゃないな。別に山の周りが全部湖になっても問題はないのだが、大きくなっても気付かないものなんだと思ってしまった。
ただ、ミドリの思いついた方法が分からなかったので、悩んでいるとすぐにミドリから答えが返ってきた。管理下に無い所で繁殖する事が問題なのだから、繁殖しない魔物を使えばいいという簡単なものだ。
でも、繁殖しない魔物って? と考えているとミドリが、骨ゲーターを使って湖の管理を手伝ってもらっているとの事だ。
骨ゲーターは、繁殖もしないが食事もしないのだ。管理するためには、魔物はドロップ品になるのでまだいいが、海の生物はそういうわけにはいかない。成長の早い樹海の中の湖だ。それなりの数を間引きしないといけないのだ。
そこでワイバーンに協力を求めたそうだ。骨ゲーターが回収した物を、ワイバーンたちに食べてもらう事で解決を図ったそうだ。ワイバーンたちは、海の幸が食べれると喜んで協力してくれているようだ。あいつらが最近体重を気にして運動しているのは……食べすぎか?
だけど、ダンジョンの中にいないと、骨ゲーターだって完全に制御できないのにどうやってるんだろうな?
「その答えは、バザールさんです。ノーライフキングのバザールさんであれば、ダンジョンの外にいてもアンデッド系であれば命令を出す事が可能なのです。それでも自分の支配下にあるか、上位のシュウ様の支配下にあるか、という条件がありますが」
なるほど! アンデッドの頂点、ノーライフキングのバザールであれば、それも可能なのか……? 予想以上にすごい能力だな。最近のあいつは、単なる農業マスターと化してるからな。あまりイメージがわかないが、アンデッドの中ではヒエラルキーが高いんだった。
「まぁ、それは良いとして、なんでここにいるんだ?」
「それは奥様方が昨日、海に潜ったりバーベキューをしてはしゃいでいるご主人様をみて、しばらくここで楽しんでもらった方がいいと思ったようで、お願いされたのです。
このクルーザーなら、寝室もキッチンも娯楽室もあって問題はないので、楽しんでいってください。グリエルさんたちにはすでに伝えてあります。何かあれば、連絡が入りますので問題はありません」
そう言って、アイスミルクティーを出してくれた。
年少組と土木組は、シエルを引き連れて近くの島に上陸して、そこのビーチで海の幸をとっている。
年長組は、俺が教えた娯楽と言っていいのだろうか? 釣りをしている。結構大きな魚もいるため、釣り上げるのに多少苦労している。いくら力があると言っても、使っている道具に限界があるから、フルパワーで釣り上げるわけにはいかず苦労している感じだな。
年中組は、シルキーたちと一緒に年長組の釣った魚を一緒に捌いている。
中には別行動をとって、本を呼んでたり昼寝をしたりしている妻もいるが、そういったメンバー以外は大体年齢毎に固まって動く事が多いよな。何でだろうな?
「理由はよくわからないけど、みんなが俺のためにって事でクルーザーの旅を楽しんでほしいって事か。じゃぁ、全力で楽しむかな!」
アイスミルクティーを飲み干してから、船を運転しているブラウニーにもう少し、年少組の皆がいる島に近付くようにお願いする。
近付く間に俺は、柄にゴムの付いた銛を召喚してウェットスーツに着替える。一応、クリエイトゴーレムでゴーレム化して魔核で耐久力と自動修復機能をつけている。フィンも足に着けシュノーケルも着け昨日より本格的な素潜りスタイルになる。
テレビで見覚えのある、芸能人が素潜りで魚を突くシーンを真似てみたいと思ってやってみたが、回遊魚が多かったため、近付く事も出来なかった。なので魚は諦めて、島の近くの岩場などにいるタコやエビをターゲットにした。
ただ、タコが入り込んだところを追いかけたら、ウツボみたいなのがいてマジで焦った。身体能力を考えれば、ウツボなんて大した事はないのだが、日本での知識があるせいでとっさの判断をする時は、どうしても昔の常識が表に出てしまいビビってしまうのだ。
そういえば、生きたタコを見た事なかった妻たちは、俺がとってきたタコを見て若干引き気味になっていた。よく刺身とかでタコ食べてるのに、実物を見ると気持ち悪いってか? あまりに大きければ気持ち悪いかもしれないけど、1kg位しかないタコなんざ怖くないべ? 黒い悪魔が平気なのにおかしい……
ただ、塩もみしてしっかりとゆすいだ後に茹でると、知っているフォルムになったようで、気持ち悪さはなくなったらしい。まぁ人生いろいろだよね!
せっかくタコが取れたので、夜はタコ焼きパーティーを行った。たくさん焼ける業務用の鉄板を使いみんなで慌ただしく焼きながら楽しんだ。もちろん火の弱い所も準備しているので、焼いたのを移動させた後は油を流しいれて、アヒージョみたいにしていろんな物を油煮して楽しんだりもした。
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