第851話 日本を少し思い出した
俺たちは今、ゼクセンの領主邸に来て戦後処理を進めている。もちろん、俺じゃなくて真紅の騎士団や騎士団の連れてきた文官たちによって、戦後処理が行われている。
そして本当の領主の一族は、予想外と言っていいのだろうか? 両親は他界しており、兄弟もいなかった。そして妻や妾、その子どもたちをあわせても30人くらいだった。
日本の感覚で言えばかなり多いのだが、この世界ではかなり少ない方だろう。縁戚の人間を養子として迎え入れ、街の仕事を回していたようだ。
だからと言って、今回の戦争の対象範囲外になる事はない。俺はそれらの人間に対しても戦争を起こすために、正当な支度金を準備していたのだ。
真紅の騎士団から説明を受けた後「自分は関係ない」「無理やりに働かされていた」等と言って、奴隷になるのを拒否していた。「戦争が始まる前に縁を切っておかなかったお前らが悪い」と騎士団の面々は切って捨てていた。
そんなやり取りを見てうんざりした俺は、気分転換に領主邸の庭でくつろいでいた。
「あ、シュウ様。こんなとこにいらしたのですね」
後ろから声をかけてきたのは、スカルズのメンバーになったケモミミ3人娘の1人だった。
「あ! そういえば、スカルズのメンバーがあんなに張り切ってたのに、ほとんど俺たちでやってしまったな。危険があったとはいえ、悪い事をしたな」
「いえ、気になさらないでください。危険があったのは理解しています。それに今さっきまで、スカルズのみんなに手伝ってもらって、あいつらをボコボコにしてましたから。回復魔法も使って、死んだ方が辛いと思えるくらいには、復讐してきました」
おっと、大分過激な事をしていたようだ。元の世界でも、そこまでの事をしている国なんてほとんどないだろうけど、この世界ではそれが普通なんだよな。それに回復魔法があるおかげで、死なないように拷問するのではなく、殺すつもりで拷問して回復するのだから、やられている方は地獄だろうな。
「ピーチさんが報告があるとか言って、シュウ様の事を探していましたよ」
「そうなの? どこら辺にいた? 執務室の方ね、教えてくれてありがとさん。ダマ、行くぞ!」
ここでのお供はダマだ。クロたちオオカミは、大きいので護衛にむかず庭先でくつろいでいる。ソウたち狐は、気まぐれ過ぎて普段の護衛もあまりしていない。ニコたちスライムは、よくわからんがスライム団子になって日向ぼっこをしている。いつもみたいに先輩従魔たちに任された感じだ。
呼ばれたダマは、仕方がないな。といった仕草を器用にして、俺について来てくれた。
領主邸だけあってかなりの広さがあり、移動がかなり面倒だ。目的地に到着する前にピーチを発見した。
ピーチからされた報告は、領主の一族(養子なども含む)は、予想以上に犯罪の称号を持っている人が少なかったそうだ。汚れ仕事を担っていた面々がいて、陰で動いているので知っている人も少なかったらしい。
あの領主の子どもは、父親がいろんな悪事に手を染めていた事を知らずにいたのだ。トリプルの冒険者たちが、領主邸の一画であんな事をしていたのにも、気付いていなかったらしい。まぁ、だからなんだ? という話なんだがな。
ケモミミ3人娘たちみたいに、騙されて奴隷に落とされた人間は少なくないだろう。当主の罪はみんなで償ってもらおう。知らなかったでは済まされない内容なのだから。結構いい暮らしをしていたみたいだから奴隷生活は辛いだろうけど、教養は身につけていたから鉱山でキツイ労働はないだろう。
それでも、ケモミミ3人娘が鉱山送りを望むのなら強制的に回してもらうけど、先ほどの様子を見る限りそれはないかな?
「ピーチ、報告ありがとな。聞いた感じだと、一部の人間以外は犯罪を犯していなかったみたいだから、王国が回収して何かに利用するって形でいいのかな?」
「そうですね。文官として役に立つレベルで教養や知識はあるので、機密情報を扱う奴隷で構成された部署に、連れて行こうと考えているようでした」
「あの3人は、それでもいいって感じだったか?」
「そうですね。恨んでいるのは罠にハメた人だけでしたので、先程まで念入りに心を折っていましたね。彼女たちの境遇を考えればあれでも甘いと思いますが、残りは例の檻の中で自分がやられる立場になった所を見て楽しむそうです」
あれをみて楽しめるのか? 男と女の違いか? 世界の違いか? 腐んな感じだったけど、家に遊びに行ったり来たりしたな。あいつは俺の多くない友達の1人だったけど、元気にしてっかな? 今の俺を見たら、血の涙を流して無言で殴られそうだけどな。
これ以上は報告もなく、問題ないそうなので再び暇になった。する事もないから、また庭に戻ってのんびりするか。
庭は、相変わらず従魔たちでごった返しているな。スライム団子を見ていたら、急に横になりたくなったので声をかけてから、ひなたぼっこをしているスライムと一緒に横になった。いつもはひんやりしているのだが、お風呂に入った後みたいな感じでポカポカしている。
俺を気遣ってなのか、スライムたちが木陰に移動してくれた。気持ちよくなり、俺はすぐに眠りへついてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます