第845話 どうしたもんか?

 一緒に来ていた妻たちが、怪我をしていた女性の体をきれいにしてから、すぐに移動を開始した。馬車は3台連結しての移動である。行きは1台、帰りは3台……普通の馬なら動かすのに苦労する重量でも、さすがウォーホースというべきだろう、これだけ連結しても問題なく引いてしまう力があるのだ。


 馬車の順番は前から、俺たち、怪我をしていた女性たち、屑共の順につなげている。


 妻たちに屑共の監視をさせるつもりはなかったので、俺が監視している。怪我をしていた女性たちの乗っている馬車の上から、中を覗ける位置に座っている。お供としてニコが俺の頭の上に鎮座している。動きがあったら教えるようにお願いしておいたので、のんびりとブッ君で読書をしている。


 ウォーホースが引いているので15分もかからずに到着した。その間に誰も起きる事はなかった。まぁ、個人差はあるにせよ、薬の効果が出てから最低でも4時間は昏睡状態になるので、問題は起きなかった。


「ただいま~、ツィード君いるのは分かっている! すぐに出てきなさい! すぐに出てきたら、アクアに俺からもできるだけ怒らないように言っておくからさ」


「ほんと!? 本当にアクアの姉御に怒らないように言ってくれるの!?」


「今回、ツィード君が何をやらかしたか知らないけど、口添えはしてやるよ。でも、しでかしてしまった事が余りにも酷かった場合は、俺じゃあ庇いきれない事は分かってるよね?」


「それでもいい! だからお願い! 口添えして!」


「じゃぁ、連れてきたこっちの馬車の中の人たちを起こして、尋問できるようにコントロールしてくれ」


「そんなの朝飯前だぜ! おいらに任しときな!」


 そう言って、昏睡状態にある10人を起こして、闇魔法を使い洗脳に近い状態にしてくれた。催眠でもいいんじゃないかな? って思ったが、個人差があるしこっちの方が簡単で、魔法を解けば影響がほぼないからという事でこの方式になった。


 それにしても、魔法薬の効果を打ち消すことはできないのに、睡眠・昏睡状態にある人間は、起こせるって言うんだから不思議だよな。睡眠っていう1つの状態だから、起こす事ができるんかな? 何かのゲームにもこういった感じの話し有ったもんな。


 10人を起こして聞いてみた所、2人がケガをしていない4人の仲間だという事が判明した。ひどい事をされていたが、まだ誰も死んでいないとの事だった。


 不幸中の幸いとでも言うべきだろうか、あいつらが来て3日目だったのだ。後1日遅ければこの中から死人が出ていたかもしれない。心のケアをしてあげないとな。スライムやモフモフたちに頑張ってもらおうか?


「元仲間の2人以外は問題なさそうだから、いったん……ジャルジャンかゴーストタウンに連れていこうか?」


「ご主人様、この人たちの話を聞かずにつれていくのは問題があると思うので、いったんカレリアの治療院に預けてみてはどうですか? もしそれで、信用できないと言って治療院を飛び出すのであれば、縁が無かったという事でしょう」


 なるほど、この人たちの意見を聞かずに連れていけば拉致したような物か……尋問の際に、望んであそこにいたわけじゃない事は分かっているが、心の中までは分からんもんな。


「よし、そうしよう。ツィード君、俺がいない所で魔法を解除してくれ。そしたら、妻たちに後は任せる。そだ、シルキーには体に優しい物を準備するように言ってくれ。俺は……この屑共の対処かな」


 俺の指示に従ってみんなが行動を開始する。怪我をしていた女性達に話をするメンバー、シルキーに伝言に行くメンバー、夜番のために早めに就寝するメンバー、カレリアに連絡を取るメンバーと、みんなが分かれて行動を開始する。


 俺は、残った汚い屑共を見て、


「どうするのがベターかな? 起こしてから連れてく? 連れてってから起こす? と言っても、カレリアに高ランク犯罪者の拘留できる場所が無かった気がするな。預ければいいかって適当に考えてたけど、あんまりよくないよな……どうしたものか?」


「兄貴! 解除してきました! あいたっ!!」


 俺の事を兄貴と呼んできたので、頭に拳骨を落とした。ツィード君はすぐに調子に乗るから、ちょこちょこシメておかないとな。


「俺を兄貴と呼ぶな! 何度言えばわかるんだ。だからアクアにも怒られるんだよ。学習しろよ」


 涙目になって俺の事を見てくるが、無視だ。問題はこいつらをどうするかだな、装備は全部取ったからな。指輪やイヤリング等は全部外したし、耐性なんかを上げられる物は何もないんだけど……


 ツィード君と比べて、トリプルの冒険者パーティーの人間は、レベルが高いんだよな。これだとレジストされる可能性がな。


「とりあえず、この首輪つけたらどうっすか?」


「そうだな、ツィード君謹製の奴隷の首輪をつけるか。ツィード君は女の方につけてくれ、俺は男の方につけるから、よろしく」


 手分けをしてトリプル冒険者5人、怪我をしていなかった女4人、もともと仲間だったが怪我をしていた2人に奴隷の首輪をつけていく。


「さて、起こすべきか起こさぬべきか……」


「あ、どっちにしても、こっちの2人魔法の効果が切れたら起きちゃいますよ?」


「そっか、起きちまうか。どうせならまとめて起こすか。でもその前に、綾乃の新作、人造ゴーレム重戦士バージョンを使うか」


 綾乃が暇な時間を使って、人造ゴーレムを改造していたのは知っていたので、新作を出してもらったら、戦隊モノの重戦士が出てきてビビったわ。しかも機能違いかと思ったら、単なる色違いで5体作ってみたとか言われてズッコケたな。


 トリプルの冒険者パティーはちょうど5人だからいいだろう。女の方は、普通の人造ゴーレムでいっか、微妙にレベルは高いけど強いわけじゃないしな。


「ツィード君起こしてくれ」


 そういうと、隣でムンムン言い始めて、ピカッと光ったと思ったら11人が目を覚ました。昏睡状態と洗脳状態を同時に解いたのか。さすが闇精霊というべきだろうか?


「「「「「「ん……ん?」」」」」」

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