第846話 戦争はすでに始まっている!

「「「「「「ん……ん?」」」」」」


 そう言って、男5人女6人が目を覚ます。全員が人造ゴーレムに立たされて、押さえつけられている状態で、猿轡をされているので声を出せないでいる。


 ん~ん~言っているがとりあえず一言。


「王国で犯罪者の皆さん、捕まった気分はどうですか?」


 とりあえず、煽ってみた。そうすると、男5人は俺を殺すと言わんばかりに睨んでくるが、その状態じゃな。


「まぁ一応弁解を聞いてみるか。ツィード君、そのリーダーっぽい奴の猿轡を外してくれ」


「りょーかいであります!」


 ツィード君が猿轡を外して第一声、


「てめぇ! こんな事していいと思ってんのか! 俺たちはトリプルの冒険者パーティーだぞ!」


「もちろん知ってるよ。王国で犯罪を犯して、帝国に逃げたんだろ?」


「逃げたんじゃねえ! 帝国に行くために土産が必要だったんだよ! それに今は、王国の貴族の願いでここに来てるんだ、帝国も王国も黙っちゃいねえぞ!」


「へ~、1つ言っておくぞ。王国はお前たちを犯罪者と認定していて、王国内の冒険者ギルドでは、お前たちは単なる犯罪者だって事をしらんのか?」


「それがどうした! ゼクセンの貴族が俺らの事を保証してるんだ、王国の木端共が付けた犯罪者のレッテルなんてないに等しいわ!」


「ちなみに、お前らを捕まえてほしいって依頼してきたのは、この国の王様だからな。王国の貴族の威光は効かないぞ。さてどうする?」


「なっ! だからって、帝国で認定されているトリプルの冒険者を、勝手に拘束していいと思ってんのか!」


「思ってるよ。お前さ、トリプルの冒険者ってどんな冒険者がなれるか知ってるか?」


「シングル以上の冒険者は、実績も実力も無ければなれないんだよ! そんな事も知らないのか! 今までの貢献を考えれば、お前なんかより俺らの方が優先される。だからこのまま冒険者ギルドに連れていけば、お前らが犯罪者として捕まるんだよ! 今解放するなら許してやるから、な?」


「清々しいまでの屑っぷりだ」


「てめぇ! クソが!」


「知ってるか? トリプルの冒険者の本当の意味をな……このランクの冒険者は、戦闘能力をもった犯罪者予備軍みたいな奴らを指すんだよ。冒険者ギルドとして、管理しにくい奴らを総称してトリプルって言うんだぜ。だから冒険者ギルドからすれば、ダブルの冒険者の方が優秀って事なんだよ。


 ランクが高いからって、何してもいいって思っているような、お前らに相応しいランクって事だ。だから、冒険者ギルドに連れて行っても俺らが捕まる事はない。それに初めに言ったろ。国王から依頼されて、冒険者である俺は、お前らを捕まえに来てるんだってな」


「王国と帝国が戦争を始めるきっかけをお前が作ったんだ。2つの国の人間に恨まれて死にやがれ! 帝国の人間が俺たちの事をきっと助けてくれるさ! その時にお前は後悔するだろうな!」


「本当にそう思ってるの? たかがお前ら如きのために、戦争が始まるって……寝言は寝てから言えよ。たかがレベル400に満たない冒険者5人のために、帝国が動くって?お前ギャグのセンスあるな。


 帝国のインペリアルガードは、全員レベル300超えてるんだぜ? そんな奴らがいるのに、問題行動を起こすお前らなんか助けるわけないって」


 汚い言葉を何度も吐いていたが、繰り返しになってきたので再度猿轡をはめて、違う男の奴を外す。


 結果は、リーダーと思われる奴と同じ事を言っていた。聞くに堪えなかったのですぐにハメなおす事になったけどな。続いて女性陣の話を聞いてみると、騙された!とか俺に乗り換えようと、誘惑してきたりしてきたのだ。


 すぐに俺の妻、カエデとミリーとリンドが来て『うちの旦那に色目使うと殺すぞ!』みたいな事を言っていて、ちょっとタマがヒュンッてしました。


 騙されたとか言ってるけど、この女たちも見捨てられた2人の女から、色々と内情が聞けてるからな。いい男がいれば喰って、トリプルの男たちにひどい事をされたと泣き付いて金を毟り取ってたり、自分よりチヤホヤされている女がいれば、男共に壊させたりしてたって言ってたからな。


 見た目は……そこそこ? 奴隷になったら、ゴーストタウンのオークの檻にでも入れておくか?


「まぁ君たち、何を言ってもその首輪をつけられている以上、どうにもならないんだけどね。あっ! 無理に外そうとすると……って、お前もしかして正規の外し方以外に、外す方法知ってるのか……」


 手で触ってもいないのに、奴隷の首輪の罰則が発動したのを見て、そう理解した。全身に電気がはしっているようで痙攣している。


 この奴隷の首輪には、世間に出回っている首輪の外すコードを流すか外そうとすると、首輪が装着者の魔力を使って放電をするように作られているのだ。ツィード君が改良した奴隷の首輪改は、防犯面でかなり優秀になっている。


「まさかあれに気付いている奴がいるとはな……結構頭がいいのか?  それとも何かの資料を読んだのか? どっちでもいいか。どうせ死ぬまで外す事の出来ない首輪がついてるんだからな」


 首輪がついている事に気付いたリーダー以外の10人は、絶望した表情になっていた。


「お前らさ、自分たちが今までやってきた事を考えれば、奴隷に落ちるだけなら温いもんだろ? 今まで殺してきた人や凌辱された挙句に、奴隷にされた人たちに比べれば、まだまだ優しい処置だろ?


 お前らはどのみち戦争が終わったら俺の奴隷になって、ゴーストタウンの見世物になってもらうからな。精々、精神が壊れないように頑張れよ」


 現状どうにもできない事が分かり、抵抗しようにも人造ゴーレムが押さえつけているのでどうにもならないと、理解せざるを得なかったのだろう。それが、あの絶望した表情という事だな。


「うっし、胸糞悪かったけどスッキリした! あっちの子たちはどうだ?」


「みんな、カレリアの治療院に行くって。それにシュウ君のあいつらを言い負かしている姿を見れて、少しは気が晴れたみたい。説得も楽だったわ」


「そりゃよかった。嫌がらなければ、是非ゴーストタウンでの見世物に招待しないとな。オークの方も気が晴れるかもしれないけど、ホモークの方はそういう目にあった女性たちからは、スッキリするっていう話だからな。馬車を離して連れていこうか」


「犯罪者の方は、明日の朝でいいんじゃない? 人がいる時間帯に堂々と連れ帰ればさ」


 おっと、ミリーが黒いこと言ってるぞ! 大丈夫か! そして、ミリーの言っている事に妻たちの半数以上が同意してる! 同意してないのは、状況を理解できていない年少組と土木組だけだった。そのまま素直に育ってくれ!


「あいつらはあのままでいっか。乾かないように適度に水をかけてやってくれ。明日になったら、そのまま人造ゴーレムを走らせて連れていこう。カエデ、そっちは任せていいか?」


「了解よ。カレリアに彼女を連れて行くわ。遅くなるから私たちは向こうで寝るわね」


 最大の問題は排除できたと思う。トリプルの冒険者たちがいなくなったと知った時の、ゼクセンの領主の顔が見て見たいもんだ。

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