第748話 嫌な裏世界の情報……

 30分程で、新しく3つの魔導火炎放射器を作った。この魔導火炎放射器は、妻たちに使わせたくなかったので、疲れ知らずのスケルトンにお願いしている。


 本当は人造ゴーレムにやらせようかと思ったのだが、魔核に情報を書き込むのも、覚えさせるのも面倒だったのでスケルトンにお願いしたのだ。


 妻たちも使ってみたいと言っていたが、さすがにあの兵器は今回だけの使いきりにする予定なので、みんなには変な快感を覚えてほしくない! 俺の中二心がくすぐられて、若干快感を覚えてしまった自分がいるのだ。みんなには絶対に覚えてほしくない。


 よし、これで魔導火炎放射器役と補給役は問題なくなったな。


 1回の補充でだいたい3時間ほどは、放ちっぱなしにできるようだ。4台も魔導火炎放射器があるので問題ないだろう。それにしても3台の火炎放射器が、いろんな角度から1つの目標を焼き尽くすさまは圧巻だな。


 でも、これだけ攻撃されているのに、全然動こうとしないのはなんでなんだろう? 変にゲームっぽいところがあるこの世界では、珍しい事ではないのかもしれないが、条件を満たせているから攻撃をすることができるって事か?


 それにしてもシュリの投槍やべえな……槍が立てるような音じゃねえぞ。何本の槍が投げられたのだろうか、ベルゼブブの周辺には数えきれない槍が散乱している。


 戦闘が始まってすでに半日12時間ほどが経過している。戦闘が開始されてから6時間程経過した時に、長期戦になるのは明白だったので、3チームにバランスよく分けている。


 1チーム目は、今まで通り攻撃を継続するチーム。


 2チーム目は、警戒をしながら休憩するチーム。


 3チーム目は、睡眠をとるチーム。


 の3つに分けている。


 睡眠をとる場所に関しては入口に設置した、アダマンタイト製の板で作った強固な空間の中に、家でも使っているエアーマットレスを召喚して敷き詰めている。


 後は、入口が150階みたいに鉄格子でふさがれていなかったため、通路にシルキーたちも呼んで、食事の準備など野営コンテナも一部取り出している。お風呂も入れるようにしているし、休憩は大切である!


 俺たちだからできた休憩方法だが、普通のパーティーだったら長期戦になった時、どうやって休憩をとるのだろうか? 気になったので休憩の時に、ミリーやカエデリンドに聞いてみた。


 この3人が妻たちの中で、普通の生活を送ってきたからな。他の妻たちは、一時でも奴隷になっていたから、冒険者の情報に詳しくないのだ。レイリーだったら、軍人の経験があるし知っている可能性も高かったが、ここにいないから仕方がない。


 それで3人から聞いた話をまとめると……


 シングルの冒険者の情報は無いが、Aランクの冒険者チームとなれば、ダンジョンでAランク上位の魔物と不意に連戦する事もあるため、大体チームが半分に分かれて、戦闘班と荷物運搬と交代をしながら進んでいくそうだ。


 Aランク冒険者は、私的ギルドに入っていたり、持っていたりするためそこに所属している冒険者を、選別して連れていく事が基本なので、荷物運搬の役割に関しては下位の冒険者に任せて、移動しながら休憩をするそうだ。


 長期戦に入ると、近くの部屋や通路、野外ならある程度ひらけてはいるが攻めにくい場所や、逃げ道を確保できる周りが囲まれている空間などを作って、交代しながら戦うそうだ。


 Aランク上位の魔物って事は、一部Sランクに匹敵する能力を持っている魔物ってことか……単にそれだけなら俺たちは、鎧袖一触してしまうので気にしたことが無かったが、Aランクの冒険者となればそれが普通なんだよな。


 それに普通、Aランクの冒険者がAランクの魔物に、一対一で勝てる事は多くないので、お互いの長所を生かしたチームプレイで、魔物を屠っていくとの事だ。


 にしても、ベルゼブブってタフだな。攻撃面では、明らかにAランクの魔物より劣っているのに、タフネスさが半端ない。この12時間で上の階にいた大きい方の堕天使でも、10回は死んでもおかしくない程度の攻撃は与えているはずなのに、ピンピンとしている。


 こいつの攻略法は、遠距離からの持続的な攻撃だと思ってたけど、もしかしたら違うのでは? と思うようになってきていた。


 そんな事を姉御組の3人に話したら全員が、まだ戦闘が始まってから1日も経過していないのに、判断が早すぎるとの事だ。3人からすれば、本来Sランクの魔物、ダンジョンでボスと呼ばれる魔物たちは、100人単位の私的ギルドが、1週間以上をかけて倒すのが普通なのだそうだ。


 数の暴力による持久戦で回復する時間を与えず、じわじわ体力を削り取っていくそうだ。


 それにしても、100人単位で1週間以上かけて倒すって……割に合わなくないか? と思っていたが、経験値の面でも素材の面でもリターンは大きいようで、そこまで深くないダンジョンでは、部屋一つを小さな町みたいにして、複数の私的ギルドが一緒に管理して、順番で倒しているダンジョンもあるとの事だ。


 それなりに美味いダンジョンじゃないと、そこまでしないとの事だ。補給の面もあるし色々大変なんだな。


 Sランクの魔物は、基本的にシングル以上の冒険者にしか、討伐出来ないと思っていたのだが、どうやら違うようだ。俺が不思議そうな顔をしていたので、ミリーが察して教えてくれた。


 Sランクの魔物の討伐依頼が入るのは、ダンジョンの外にいる魔物に対してで、ダンジョンの中のSランクの魔物に関しては、自己責任で挑んでくれというのが、冒険者ギルドとしての意見だそうだ。


 確かに言われて気付いたが、Sランクの魔物を逃げ道のある地上で戦うとなると、Aランクの冒険者や高レベルの騎士たちを集めて、囲んだところで逃げられてしまうのだから、シングルという規格外の冒険者を中心に討伐隊組まれるとの事だ。


 シングルは、この手の緊急依頼を断る事は基本的に出来ないらしく、断った際には最悪奴隷落ちにして強制的に働かせ続けるらしい。それだけの見返りを、シングル以上の冒険者は受けているので……とはミリーの話だ。


 規格外のシングル冒険者に、誰が奴隷の首輪なんて着けれるんだろうな? と思ったが、相性のいいシングルの冒険者を向かわせて、強制的に奴隷にするとの事だ。


 冒険者ギルドとしても本当はしたくないが、義務を果たさない者には容赦はしないらしい。冒険者ギルドの奴隷として、各地に派遣できるようになるので、メリットはデカいそうだが、嫌な情報を知ってしまった。


 ちなみに、俺たちは例外に指定されている。条件付きトリプルという訳ではないが、俺たちは冒険者ギルドから何の見返りも受けていないので、強制依頼に従う必要すらないのだ。

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