第747話 改造成功!

「汚物は消毒じゃぁぁぁぁぁ!!!」


 1時間半越しで2度目の、一度は言ってみたかったセリフを叫んだ。改良した魔導火炎放射器とも呼べる、悪魔の兵器がここに完成してしまったのだ。火魔法とは違い、燃える燃料を使っているため、使用された後も燃え続ける、という特性が悪魔の兵器と呼べるほどの物に押し上げてしまった。


「おぉ! 予想以上に遠くまで届くようになったな!」


 俺の言葉通り、想定していた100メートルを大きく超えて、200メートルに届こうとする距離をたたき出していた。


 俺はこの結果に大喜びしていたが、妻たちは若干引いている。隣で若干ひきつった顔をしていたピーチが答えてくれた。ちなみに、戦闘から1時間ほどで戦闘班と交代しており、今隣にいるのがピーチなのだ。


「ご主人様、この魔導具がどれほどの非常識か、理解されてませんね。一流の魔法使いであってもこの距離を狙い撃つのは難しいです。それが広範囲を焼き尽くすとなると、さらに困難な物だと思います」


 そういわれても、非常識の塊な俺たちが何をいまさら……と思わなくも無いが、普通に考えてかなり危険な兵器であることは間違いない。


 地球でも火炎放射器は世論の問題もあり、非道な兵器として廃止されている国がある程だ。それでも一般的な火炎放射器の射程は、15~20メートル程なのだ、200メートルも炎が噴き出す兵器など、認められないだろう。


 そういえば隣にピーチがいるのは、キリエの代わりに結界を張ってくれていたのだ。


 燃料切れの心配もない、この悪魔の兵器がもし地球で使われたら、真っ先に殺されて奪われるだろう。特に森や市街地などで使われた日には、死に物狂いで敵兵が襲ってくる可能性だってあり得る。


 ピーチの言った通り一流の魔法使いでも、これほどの射程で的を狙い撃ったり、広範囲に攻撃をし続けることなど不可能に近いのだ。それが魔力も無しに使用できてしまう。


 一応、自分の魔力を使って発動する魔導具も、ダンジョンからいくつか発見されているが、それでもここまでの効果のある魔道具は無い。それを魔力無しで使えてしまうのだ。もしこれが10セットもあれば、一般人でも街が滅ぼせてしまう可能性が高い。恐ろしい兵器だ。


 自分の魔力を使わないでこれだけの事が出来てしまう、そんな魔導兵器を、戦闘中に作ってしまう非常識に、妻たちも若干引いていたのだ。


「といわれてもな、そこまでしないといけないベルゼブブがいるんだから、しょうがないだろ?」


 自分の非常識さは棚に上げて、ベルゼブブの所為だと責任転換した。


「そんな事はどうでもいいか、これが完成したのなら戦況が変えられるかもしれないから、さっそく試してみよう! みんな休憩は大丈夫かな? 実験するからみんなも観察しておいてくれ。その前に、限界までタンクに燃料を入れるから、みんなちょっと待っててくれ!」


 燃料を満タンにするのにかかった時間はなんと! 20分。何リットルの燃料が入ったのか、俺にもよくわからん。燃料を入れるために俺が道具を動かし、ダマがその隣で燃料を召喚し続けて20分、長かった!


「みんなお待たせ、準備ができたよ! とりあえず、ファイアー!!!!」


 あたり一面を焼き尽くす勢いで魔導火炎放射器が火を噴く。


「汚物じゃないものまで燃えてるな」


 洞窟タイプのダンジョンなので、地面がむき出しになっている。その地面に燃料が付着しているため、燃えないはずの地面が燃えているように見えてしまっている。そんな事より、ベルゼブブの様子は……


「おぉ~、小バエがベルゼブブを守ってるな。これなら何とかなりそうか? メアリー、マリア、この状態でもベルゼブブを狙えそうか?」


「正確な射撃は難しいですね。大体の位置は分かりますが、小バエに隠れてるので正確に射貫けるとは、言えませんね」


「そりゃそうか、ターゲットが見えないのに正確に狙えるわけないよな。さすがにそんなとんでも能力があるわけないよな。どうしたらベルゼブブにも継続して攻撃できるんだろうな」


「ご主人様! 後2~3個は、火炎放射器を作ったほうがいいと思うの! 補給している最中にも攻撃できるようにした方が絶対に良いの!」


 シェリルに強く主張された。確かに一理あるな……でも20分もあの作業をするのは嫌なんだが、あっ! そっか、召喚じゃないから補給する道具は、ゴーレムでもイケるな。別に体は必要ない、というか道具自体をゴーレム化して、魔核をつけてやればいいか。


 後は、燃料の召喚をどうするか、こんなところで精霊を増やすわけにもいかないし、ある程度知能のある魔物じゃないと、ダンマスの能力を貸し出しても使いこなせないよな。


 スケルトンたちに貸し出しができればよかったんだけど、召喚してないからか貸し出せないんだよな。死んでも心の痛まない魔物を召喚して、スケルトンに監督してもらうか?


「それがいいな!」


 近くにいた妻たちがビクッとしていた。急に大きな声を出したのに、びっくりしてしまったようだ……すまぬ。


「スケルトン! ちょっとこっちに来てくれ。今から同族を召喚しようと思うんだけど、お前たちの監督下に入って、DP操作をさせようと思うんだけど、可能だと思うか?」


 骨が腕を組んで首、頭蓋骨? をひねっている姿は、結構シュールだと思う。結論は、試してみないと分からないとの事だった。召喚してみるか。


「アンデッドの骨系って、バザールと戦ったおかげか、いろんな種類が召喚できるんだよな。どれにしよっかなっと……よし! 君に決めた! いでよ! エルダーリッチ!」


 綺麗なローブをまとった骨がそこにはいた。これって、ノーライフキングの一歩手前とかかな? もしかしたら話せたりするのか?


 はい、駄目でした。正確に言えば、話そうと努力してくれて入るのだが、カタカタとしか言わないのだ。


 アンデット作成で作ったスケルトンたちだって、話せないんだからしょうがないよな。でも俺の言ったことは理解しているようで、肉のついていない親指を立てて任せろ! と言わんばかりのリアクションをしてくれた。


 これで補給の問題は解決したので、心おきなく魔導火炎放射器の量産を始めた。

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