第749話 性格が悪い!
知りたくない事実を知ってから、12時間。戦闘開始からおよそ1日が経過した。戦闘は膠着状態と言っていいのだろうか? 俺たちからの一方的な攻撃ではあるが、昨日とほとんど変わっていないと思われる。
俺はベルゼブブではないので、正確な事は分からないが、とにかく、一方的に俺たちが攻撃して、散発的にベルゼブブが高速移動をして体当たりしてくる……という流れだ。
正直、見た目が最大の敵! と思わなくもないんだが、どうだろうか?
「状況は、まったく変わってないように見えるけど、どうなんだ?」
一応、戦闘担当班から、戦っている人間からの目線で変化がないか確認をする。代表して話してくれたのは、アリスだった。
「そうですね、あえて変化があった部分と言えば、多少小バエの数が減ってきているような気がしますね。後、ベルゼブブが戦い始めた当初に比べて、よく動いているような気がします。
攻撃というよりは、動いて何かを探っている感じですかね? どれだけしっかり監視した所で、あの見た目なのでゴーレム以上に分かりにくいです」
「小バエが減っている気がするか、今の量を見ると誤差の範囲な気がするな……」
ベルゼブブの周りには辟易する程、鬱陶しいくらいに小バエが飛んでいる。あれで減っているとは思えないが、戦闘していたアリスが言うのだから、何かしらの理由があって減っているんだとは思うが、その理由を探るにもあの見た目じゃな。
それにしても、本当にあれがこのダンジョンのボスでいいのか? 倒せもしないけど、やられもしない……あっ! そういう事か、ここが神のダンジョンだという事を考えると、1つの可能性が出てきた。
推測でしかないが、他の神たちはこのダンジョンの中を見る事はできないが、創造神は見る事ができるのだろう、自分だけで楽しめる娯楽として……
王国のダンジョンより難しいとは言っていたが、強い魔物がいるというわけでは無く、可能性の1つだが、限りなく倒しにくい魔物を最後に配置して、来た人間たちを絶望に追い込むためのボス、かもしれないという事だ。
遠距離攻撃なら当たるのに、倒せない。希望があるようで、ここはダンジョンの底、食料が無ければ餓死してしまう。そんな状況での戦闘……
創造神はそれを見て悦にひたる? 他の神と同じで、性格がひねくれてやがる! だけど残念だったな!俺はダンジョンマスターで、DPは使いきれないほどあり今も増え続けている。
そのDPで食料が出せるんだから俺には、お前を楽しませてやることはできない! 時間をかけてもいいなら、俺たちはここにアダマンタイト製の家だって、建てる事が出来るんだからな! お前の思い通りになってたまるか!
『ほっほっほ。気付いてしまったか。攻略してもらいたいけど、全力でそれを阻止するために、あれこれ考え抜いて作ったダンジョンじゃからな。それにしても、お主はおもしろいのう。ワシの考えの一部とはいえ見抜くとはな』
やっぱり見てやがったか、クソ爺! 本当に性格の悪いダンジョンだよ!
『ほっほっほ。そんなこと言っていいのかえ? ワシは創造神じゃぞ? 少しは口のきき方をわきまえないと……どうなるかわからんぞえ』
ふんっ。お前はそんな奴じゃないだろ。どんだけ性格がひねくれていようと、絶対に攻略できないダンジョンを作らないんだからな。
不公平に見えても、しっかりと事前準備ができていれば、この階は攻略ができないにしても帰る事ができるんだからな。
倒せない事が前提になってるこの階層の作りから考えれば、俺がどんな口のきき方をしても不利益を被ることはしないだろ?
それに倒せない事が前提になっているとはいっても、倒せない魔物を配置する程あんたはいかれてはいないだろ?
『よくわかっておるのう。ワシは、ダンジョンを作る能力を最大限に利用したが、そのシステムを犯すようなことはしていない。しっかりとした準備ができて入れば、攻略ができる。
システムを逸脱した場合は、作成ができないのはお主もよくわかっているだろ? お主の持っている本当のダンジョンコアの場所を考えればな』
俺はかつて、絶対にダンジョンコアをとられたくないからと言って、アダマンタイトの箱に入れて、絶対に開けられないように、クリエイトゴーレムで溶接したことがあるが、作成する事が出来なかったのだ。
今の話を聞いてやっと確信が持てた。確か、チビ神の作ってくれた本にも似たようなことが書かれてたが、あのチビ神の事は信用していなかったからな。嘘を教えられている可能性も考えていたのだ。
絶対に取られたくないからといっても、システムに反している事はできず。なので、開ける事が可能な金庫を召喚して安置してみた所、何らかの方法によって開く事ができる金庫は、問題なく使用できたのだ。
大きい金庫を召喚して、クリエイトゴーレムを使ってアダマンタイト製に作り変えたのだ。開ける方法が分からなくても、開ける事が可能という事で安置する事が出来たのだ。
『ワシもお主と一緒で、卑怯ではあるが絶対にルールを犯してはいない。クリアが可能という条件だけ満たしているダンジョンを作って、本当に攻略できるのか? という事を数万年も見てきたんじゃよ。
このダンジョンがクリアできるとしたら強さも必要だが、それ以上に物資を大量に持ち込めるか、生み出すことができる者だけだと考えていたんじゃよ。
そういう意味では、ダンジョンマスターのためのダンジョンといっても、過言ではないのだ。今回は十分楽しませてもらった、助言を1つだけ。お前たちの行動は間違っていない、頑張るのじゃ。それではまたクリア後に」
間違ってはいない……間違ってないけど、正解じゃないってことか?
何か他に突破方法があるってことだな。ダンジョンマスターのためのダンジョン……ダンジョンマスターの特性がヒントってことか。ダンジョンマスターと言えばダンジョンを作る……ここではダンジョンを新しく作る事ができないから、物や魔物を召喚できる……召喚か。
ベルゼブブを見て考える。攻撃力は無いが次元を超えたタフネス。高速移動をするため、近付いても逃げられる……逃げる? 逃げる……逃げれないようにできるのか? 人手が足りないから追いつけないし先回りできない……
「そういう事か! みんないったん攻撃中止! 距離をとってくれ」
俺は戻ってきたメンバーを範囲に入れて結界を発動する。
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