第322話 正体不明の雲
「さて、召喚されたばかりの皆様には悪いですが、今の所分かってる森の北の報告を聞いてもいいですか?」
俺が報告をしてほしいというと、スプリガンの皆さんがモニターを準備し始める。準備が終わると二人を残して他のスプリガンは、先ほど召喚されてきた仲間を連れて仕事を教えに行くようだ。新しい娘も頑張ってくれ!
ふと、違う事を考えていると報告が開始された。
「簡単に説明しますと、何も分かりませんでした。調べれば調べる程、不可解な状況としか言えないんです」
映し出された映像を色々見せられて、唸るしかなかった。
映し出された映像は、俺らが現地に行ってみた物と一緒だったのだ。街全体どこでも同じ状況だったという事が分かっただけなのだ。
どこの街も街のどこもでも上から何かに押しつぶされていて、予想される瓦礫の量より明らかに少ない。本当に分からない事が増えたとしか言えない。
「ん~調べれば調べる程分からない事が増えてくか。それにしてもどこの街でも同じ状態ってことは、原因となったもの? この災害を起こした奴? は同一って思っていいんだろうな。
もしこれを起こしたのが人間だったらダブル以上で特殊なスキルの持ち主の可能性が高いな。魔物だったら。こっちもSSランク以上の魔物の可能性があるか、ファンタジーの世界なら第三の何かがあってもおかしくないけどな。なにせ暇つぶしで神が管理してる世界なんだからな」
俺は考え事をしながらスプリガンの報告を受けている。初めにDPで掌握したエリア内の街は全部同じだったため、次の街へ走らせている最中だったようだ。早ければもうそろそろ次の街に着くのではとの事だった。
と話している間にナイスタイミングで鬼人から連絡が入ったようだ。
「ご主人様、異常事態が発生しているようで今それをカメラに収めているとの事です。今その映像をモニターに出します」
映し出された映像は、俺達が森の中で見たデカい積乱雲が渦を巻いているものと同じだった。
「これって俺達が森の中で遠くにあったのを見たやつだよな、周りはどういう状況なんだ?」
「鬼人族の通信をそのままつなぎます」
スプリガンの説明補佐をしていた娘が音声を繋げてくれたようだ。
「報告します。現在渦を巻いている雲のちょうど一番端あたりにいると思われます。
ご主人様の知識にあった台風みたいなものかと思っていたのですが、そこまで風は強くなく雨もほとんど降っていません。おそらくですが、渦の中心まで二十メートルとかそのくらいではないかと思います。私たちが視認してから渦巻いているだけで、多分ですが全く動いていないと思われます」
「台風だったら直径四十キロメートルじゃ小さすぎるよな、かといって積乱雲となると直径四十キロメートルは大きすぎないか? それに、風も強くなければ雨もほとんど降っていないか。この世界で現代知識を当てにするのも間違ってるけど、あてはめれないとなんかこう。モヤッとするんだよな!
それより普通の雲だったら渦巻いているだけってのもおかしいよな。分かっている異変がこいつだけだから、近くにいる鬼人族を後二から三組程向かわせてくれ。違う角度からの情報も欲しい」
俺の指示に従って鬼人族に命令が飛んでいく。
「ご主人様、少しよろしいですか?」
「どうしたエレノア?」
「今回の鬼人族は使い捨てを含めての人選なので、一組は中心に向かわせてはどうですか?」
「ん~その予定で召喚しているんだけど、いざとなるとな……」
「ご主人様が、魔物であれ配下の者が無意味に死ぬのは好まれない事は理解しています。でも今この状況で行かせないと、覚悟を決めて調査に行ってくれた配下の魔物に失礼ですよ!」
エレノアのセリフを聞いてカメラに写っている鬼人が頷いている。召喚されるときに俺の知識を引き継ぐ際に召喚された理由を埋め込まれているためその命令に否はないのだ。
もし自分たちに何かあっても仲間たちに便宜を図ってくれとの事だった。自分の身を切って仲間たちにってことなのだろうか? 魔物に仲間意識とかあるのか? 俺の知識が引き継がれたからか?
「じゃぁ頼む、一・二チームを雲の中心に送ってくれ」
俺の指示に従って鬼人族の二チームを派遣することに決めたようだ。命令は出したが無事に帰ってきて来ることを祈った。
さて布陣は雲の渦の端に三チーム、中心部に二チームの派遣が決まった。
「広範囲に散って街を探していたため集結までには時間がかかりそうです。高位の魔物達は休憩しなくてもいいとはいえ、すでに丸二日間は寝ていないので、今日は休ませて明日から突入という事でどうでしょうか?」
「そうだな、危険な場所に行くんだ万全の状態で行く方がいいな。ゆっくり休んで明日に備えてもらおう」
スプリガンは、今日はこれ以上進展することはないと判断したようで、もし何かあれば連絡を入れると言われたので監視室を追い出された。
まぁ追い出す前に香ばしいにおいがしたから焼き菓子か何かをブラウニーが作ったのだろう。俺たちがいては食べる量が減ってしまうので追い出された感じだ。もし話が進展するようなら追い出すことはなかっただろうけどな。本当に甘いものが好きな種族なんだな。
「さてすることがなくなってしまったな。家に戻って猫でもかまおうかな?」
「ご主人様、時間があるのでしたら森にいた時に言っていた人造ゴーレムを見に行きませんか? どうなってるかすごく気になります。うちの猫ちゃんたちはお風呂が好きですから、夜にでもかまえますよ」
「あー人造ゴーレムか、また忘れてたわ。そろそろ見に行かないといけないよな、見に行くのも若干怖いけど。にしてもうちの猫って風呂好きだったのか、日本で猫飼ってた時はお風呂に入れようとしたら、殺されるから助けて! と言わんばかりの声で鳴かれてたからな。今日一緒に入れるか試してみよ!」
妻たちを連れて人造ゴーレムが訓練しているダンジョンの一角へ向かう事にした。
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