第323話 人造ゴーレムの現状

 人造ゴーレム達がいる一角に近付くと、ガキンッ! とか、カーンッ! とか、キーンッ! という金属同士のぶつかり合う高い音や、ドゴッ! とか、ゴツッ! というった鈍い音の打撃音らしきものが聞こえてきた。


 すこしビビりながら部屋に入っていくと、一番最初に目に入ったのは、満足げに頷いているガルドとノーマンの姿だった。今マンガやアニメ的に言えば、俺のあたまの上にはクエスチョンマークが沢山浮かんでいるだろう。


 頷く二匹の精霊の視線の先に会いに来た目的の人造ゴーレムが、武器を使って攻めと守りを交互に切り替えて打ち合っている姿が見えた。五体いるうちの人造ゴーレムが一対一を二組、それを見学している人造ゴーレムが一体。実践させているのと見取り稽古をしている感じだろうか?


 しばらく見ていると、ガルドが指示を出して二対二の戦闘をさせ始めた。前衛と中衛? 剣と盾が一体と槍が一体の編成で戦うようだ。


 同じゴーレムなのに微妙に個性が出ている気がする。片方の前衛をしている方は、力をうまく逸らすように盾を使っているのに対して、もう片方は極力避けているのだ。


 それと中衛をやっている方も動きが違う。片方が前衛を狙うのに対して、もう片方は前衛のフォローをするように攻撃をはじいたり、けん制をしたり回り込もうとして対応しづらくしている感じだ。思っていた以上に動くようになっているな。


 次は一対四で戦いだした。盾持ち対他4だと、しっかりはじいてかわしながら、距離を詰めて的確に反撃する形だ。だけど相手が四体なので被弾は多くなるが、致命傷は避けているような感じだ。人造ゴーレムなのに致命傷? と思うかもしれないが、ゴーレムには残念ながら弱点があるのだ。


 骨格や筋肉、皮膚がいくら頑丈だとしても、人間と一緒の身体構造をしているのだ。関節を壊されれば動けなくなり、それが致命傷となるのだ。


 それに対して槍使いの場合は、常に動き続け囲まれないようにけん制して、近寄らせないようにしている。こっちの戦法だと相手に盾が二以上いると距離を、すぐに詰められてしまうため試合にならない感じだった。一人で立ち回るなら盾の方が有利なのかな?


「おーい、ガルドとノーマン。これはどういうことだ? いつの間にお前らは人造ゴーレムの担当してたんだ?」


「おぉ、主殿、ご無沙汰でしたな。最近はいない事の方が多くて話す機会はありませんでしたが、自分たちが暇になったので、できない事はないかと探していた時に、ちょうど面白そうな実験してたので参加させてもらってました。


 ちなみに対魔物戦も経験させてますぞ。始めはダンジョンINダンジョンに連れて行ったのですが、防御力が高すぎて訓練にならなかったので、ここで非殺傷武器と制限をかけて、Aランクの魔物を中心に戦わせてます」


 ほほー非殺傷武器に防御と力だけでAランクを倒すのか、間違いなくSランク以上の強さがあるってことだな。Aランクの召喚DPの10倍はかかってるので、そのくらいになってもらわないと割に合わないんだけどね。


「かなりいい感じに仕上がってるみたいだな。運用としてはどうなんだ?」


「そうですね、ダンジョンのボスとして使うのが一番いいのではないでしょうか?」


「そうなのか? でもさ、これだけ強いんだから外の敵にも負ける事ないし、森の散策とかそれこそ森の北の謎を打破するのに使えないか?」


「それがですね。身体機能や体の動かす技術は文句なしなんですが、欠点がありまして……索敵能力が全くのゼロなんです。視認さえできてしまえば大丈夫なんですが、ハイド能力の高い魔物や擬態する魔物には、攻撃されるまで気づけないんですよね。


 なのでダンジョンのボス、誰かが入ってくる場所での待ち伏せであれば負ける事はないと思います。例えばですが、ご主人様が話していたフェンリルのような魔物であれば、不意打ちで壊されない限りは負けはないと思います」


「ん? 負けないってことは勝てるってことじゃない……よな。人造ゴーレムは疲れ知らずで、フェンリルは魔物とは言え、生きているからな限界はある。でもフェンリルの場合は逃げるという手段もとれるというわけか」


「そういう事です。負けないけど勝てない。人造ゴーレムはSランクとして見ると欠陥品ですね。ですが、ダンジョンの中で相手が攻めてくるという場面であれば、負ける事は少ないと思います。それに数の利がありますからね」


「ん~、索敵能力等を犠牲にして防御や力を手に入れたSランクみたいな感じかな? まぁ、ダンジョンの外だったら兵隊として以外は、今のとこ思いつかんな。ダンジョンで使うために作った気がするから、それで十分だよな。そういえばスライム型ゴーレムはどうなってるかしってるか?」


「あ奴らは……ニコの悪いところが似たせいか、いたずら好きになってしまい、今はもっぱらディストピアのダンジョンのどこかに行っては冒険者たちを驚かせているそうです。ディストピアの行政府からダンジョンにいるスライムは、無害なので攻撃しないように通達を出しています。


 まぁ主殿のペットだと言ったらすぐに事態が鎮静化しましたね。むしろダンジョン内で出会えたら幸運だという者たちが出てきまして、出会うと拝んだりなでたりする者もいるそうです」


 よくわからない事をノーマンが言い出したので後半はスルーすることに決めた。そういえばニコたちスライムに教育を一時期任せたのが間違いだったのだろうか? かといっても他に教育を任せられる人材がいなかったからな。


 まぁいいや、ニコたちの教育を受けたなら、いざって時に役立ってくれると思うから、誰にもけがをさせたりしていないようなのでいたずら位は大目に見よう。


「幸運のスライムってことならあいつ等に何か持たせて、出会った冒険者にあげるのも面白いか? 収納の腕輪でも装備……できるのか? 腕ないけど」


「それなのですが、魔物としてDPで生み出したゴーレムたちは使えたのですが、魔法やスキルで作ったゴーレムには魔道具が使えなかったので、スライム型ゴーレムも使えないはずです」


「ん~何で魔道具が使えないんだろうな? 知性の問題ではなさそうだから、魔石の問題か? ってそれだと人間は使えなくなるから、魔力の問題か? 魔核は魔力を生み出し続けてるけど、放出する術がない? ん! 今答えに近付いた気がする!


 収納の腕輪の収納プロセスは、対象を認識する⇒触れる⇒入れと念じる⇒使用者の魔力で魔道具を共鳴させると入るわけだ。だから、念じると魔力を放出する魔核でも装備させておけば、収納の腕輪も使えるんじゃねえか?」


 ディストピアであまり使われていない魔石Cランクを取り出して、魔核にして情報を書き込んでいく。


 容量の大半が余るので同じ原理で魔法を使えないかと思い、俺が愛用しているスタンガンの魔法を書き込んでみる。うへぇ、魔核の要領ギリギリだな。Cランクの魔石でスタンガン一つしか書き込めないってことか。まぁ使えるかどうかは分からないけど、面白い情報がとれたな。


 人造ゴーレムに魔核を装着して収納の腕輪を起動させてみると、しっかりと起動した。俺の作る人造ゴーレムって魔力を外に放出できないポンコツだったんだな。


 続いてのスタンガンの魔法だが、一発使うと一時間くらいはスタンガンが使えなかった。魔核の魔法生成量が釣り合っていないって事だろう。体をめぐっている魔力で発動できるような流れを組んでみても発動に失敗してしまっていた。何が原因だろうか?

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